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「校正ゲンバ回顧録①」【ひもとく意味の誤解、使い分け】

(2016年5月25日記録)

「ひもとく」について

専門教員が「健康・スポーツと地域の活性化がどのように結びつくのか」をひも解きます。

以上の文で「ひも解く」→「ひもとく」で疑問だしをしましたが、再度読んでみたところ「私が文意を読み間違えていた」ようです。以下、おわびとともに訂正いたします。

「ひも解きます」→「解説します」と鉛筆書きすべきでした。

『広辞苑』
【紐解く】①下紐を解く②つぼみが開く
【繙く】書物の帙の紐を解く。(五行注:転じて、)書物をひらいて読む

『広辞苑』に載っている意味では、〈専門教員が「健康・スポーツと地域の活性化がどのように結びつくのか」をひも解きます。〉は要するに誤用ということになります。
では「解く」を『広辞苑』で引きます。

『広辞苑』
【解く】(3)不明のものを明らかにする①解答を出す②説明する

おそらく〈専門教員が「健康・スポーツと地域の活性化がどのように結びつくのか」をひも解きます。〉の「ひも解き」は【解く】(3)②の「説明する」の意味で使っているように解釈できます。

以上のことから、

『広辞苑』
【紐解く】①下紐を解く②つぼみが開く
【繙く】書物の帙の紐を解く。(五行注:転じて、)書物をひらいて読む

の用字用語の使い分けの問題というより、「ひもとく」の意味の取り違いによる誤用ではないかと考えます。【2023年8月15日五行注:共同通信社記者ハンドブック14版468ページーーひもとく=「書物を開く、本を読む」が本来の意。主に過去の事象に対して「振り返る、調べる」の意味でつかわれる。「歴史をひもとく」などは許容される。「富士山をひもとく」「魅力をひもとく」などは意味が不明確になるため「解き明かす、調べる」などに言い換える――とあります。】

今回は特に急を要する件ではないと思いますので、今後の参考にしていただければ幸いです。


【2023年8月10日現在 雑感】
校正のゲンバでは「紐解く(下紐を解く)」「繙く(書物をひらいて読む。または過去の事象に対して〈振り返る、調べる〉の意味)」の使い分けの違いを説明することが多いと思います。このケースでは「文字変換のリストに〈ひも解く〉と出てくることにより、それまでとは違う新しい日本語が発生した」ということなのかもしれません。

「解く」の意味で「ひも解く」という表記で書かれているものが、いまでは通用してしまうのかと思うとやりきれない気がするのですが……。先輩の校正者に機会があれば質問したいと思います。

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