懐かしい人の夢を見た 懐かしい顔、 懐かしい声で、 あの頃と変わらず薄情に 私を蔑んで 優しい笑顔で私を見ていた 私は はじめから裏切り者だった 寂しくて寄り添った 不純な理由を あの人は知っていた 裏切り者の私を嘲笑って 同じくらい裏切って 優しく微笑んでキスをした人 やがて 夢から目覚めた朝、 待っていたのは 息も疎かに 震えながら生きた、 あの頃の痛み
未だに、 あの人の夢を見る 言いたかったことを言って 食べたいだけ食べて 大声で笑う ほしいものをもらって 夜へ落ちて行く 私が、 あの人が、 笑ってた 未だに、 あの人の夢を見る 会いたいわけじゃない 後悔や未練なんてどこにもない あるのは記憶。 2人で過ごした記憶、それだけ。 未だに、 あの人の夢を見る 目覚めた朝に残る 心臓をえぐるような痛覚 もう、何年も経っているのに まだ、これほどまでに、赦せてない もう、愛なんてどこにもないのに あの人の夢を見る き
強くなりたかった 新しい服を買って 少し高いヒールを選んだ 雪になりそうな 凍てつく空は、凛と澄んで 恋人達が賑わう街に セリーヌディオンが歌ってた あの夜は あの街は あの人は もうどこにもない 桜が踊り散るように 澱む海などないように 夢見る時はとっくに過ぎた それでも時々、あの場所で 振り返っては探したりして 負けそうな自分が未だにいるけど 立ち向かった、あの夜の 2人歩いた、あの街の 大きな手だった、あの人の 全てが確かな真実で あの歌が、 あの声が あの
くだらない言い訳を考えて 本当のことはずっと隠してる 正しいことや、 真実だけが 正義ではなく きっと この世界の殆どが 嘘と曖昧さで出来ている たとえば 「愛してる」 それは、まるで挨拶のように そして時々、呪文のように 誰にでも、 誰か以外にさらりと、呟く 簡単なこと だけど 真実と弱さは闇の中 「寂しい」だなんて 言える勇気のない言葉 墓場の奥で、呟く言葉
神様も仏様も幽霊も そんなもの、 救いを求める人達の弱さで 存在なんてしないんだわ だって私 何度も何度も祈ったんだもの 何度も其処へ行って 何度も探したけれど 夢にさえ 出てきては、くれないもの あいたくて、あいたくて 夢でもいいから おばけでも、 姿が見えなくても 声を聞かせてほしくて 願って、祈って、探して だけど 何処にも あの人はいなくて みんな嘘つきだわ 何一つ、叶わないんだもの 赦せない
触れられるもの 目に見えるものだけが 確かなんだと思ってきたけど 空が青に見えるように 真実は、もっと奥深いところにあって 手を伸ばせば 言葉にすれば 違う世界があったのかも知れない 巻き戻せない時間に 揺ぎ無い心に 認める強さを探していたけど 海が青く見えるように 変化は意外と近くにあって 歩き出せば 泣いてしまえば 違う世界があったのかも知れない 私はずっと 愛だけが あの人だけが 人生のすべてだったけれど 違う世界があったのかも知れない 大人になって 空の色を
明日の私が あの時、 どうすればよかったんだろうって 後ろ足を引きずっている 昨日の私もそうだった 許すこと、 認めることの難しさを 今日の私が立ち往生して 行き止まりの先に続く道 ずっと一生、繰り返す 逢いたい人がいる もう二度と、逢えない人に 聞きたいことがあるの もう二度と教えてもらえないのに 行きたい場所がある もう、そこには何もないのに 忘れ物があるの もう二度と届かないもの 昨日の私、 今日の私、 明日の私、 舞い踊る後悔と未練の砂埃 ただ、ただ泣きたい
私があの人を愛したように 誰かが、私のことを 愛してくれるのなら それは、あの人でなくても構わない 私があの人を愛したように 誰かが私のことを 愛してくれるのなら それは、とてつもなく 深く、重く、 まとわり続ける不快感 それは、きっと、圧し掛かる幸せ 清く、潔く、 深く、尊く、揺ぎ無く 誰でもいいから私を愛して あの人が壊れてしまったように 私を壊して、共に落ちて
あの場所へ行けば あの人が、少し驚いた顔をして だけど笑顔で 「突然、どうした?」と迎えてくれる あの人はそこにいる いつも必ず、そこにいる もう二度と逢えないなんて 私は認めない あの人は、強くて凛々しくて とても優しい人だった 気難しさも、人見知りも 弱さと優しさの裏返しだった 認めない 乗り越えられない 話したくない 聞きたくない あの人は、そこにいる 止まらない涙の理由なんて何もない 晴れた日と雨の日と どちらも必要であるように
戻ってきてほしくて許した 怒りと悲しみに押しつぶされて 失う怖さに耐えきれず許した 愛されなくても 寄り添いたかった 雨が上がるように 月が昇るように 一日が始まるように 当たり前に 流されるように 暮らして行けると信じ 祈るように許した 許されることの方が ずっとずっと辛いんだと 知ってた 貴方の「良心の呵責」を祈った だけどダメだった 何をどうあがいても 私じゃダメだった そもそも簡単なこと あの人は 許されることなんて 望んでいなかった
大人げもなく、 咽ぶように泣いた このまま息絶えるのかと 空を見上げた あれが 孤独、という言葉の 本当の意味を知った瞬間 止まらない涙に震える手 握り返す温もりと 抱きしめる腕はどこにもない そばにいるよと言ったのに 私が先だと約束したのに ゆらりゆらり立ち昇る白い雲 あれが貴方の最後の姿
夏音は雨、響く雷雨 夏色は青、空と紫陽花 甘いキス、香る汗 とまらない涙 青白く明ける夜 終わりに揺れた 青いカーテン そして、また雨音 記憶の夏はいつも青く冷たい
遥か遠く、いつかの世 私が貴方を見つけます 貴方が 私を見つけてくれた、この今生 呪縛を放つ術もなく 離ればなれになりました 古の都で果てた想い この世で再び果て行く輪廻 遥か遠く、異国の何処か 巡り巡る、時の彼方、記憶の行方 貴方が 見つけてくれた今生 来世は私が見つけます 探さないで、どうか待ってて 2011.07
夏夜に響く蛙の声は子守歌 懐かしき記憶と温もりを 心に灯す 逢いたくて かえりたくて 押し寄せる寂しさは あの夏、見た海 言われた言葉より 言えなかった後悔が チクチク痛む 緩やかに明け往く空 落ちた雨粒 愛しい夏 狂しい夏 夏を待ち、夏を持て余し 夏に暮れる
貴方に逢いたくて歩いた あの街も今は 開発と時代の狭間で面影もなく 遠くなった あの夏に似て 事実かどうかも曖昧な 記憶になった 時間が残酷なのは 忘れられることじゃなく、 忘れてしまうことなんだと 大人になって随分と経った今、 理解できる、 それはとても許しがたいこと できたこと、 失ったもの 逢えない人、 言った言葉 消えた想い 戻れない時 今はただ あの頃の、愛しき日々を 息の止まる、その時まで 忘れずに、生きて行きたい
決して見ることなど出来ない 形にならない「 」を 目に見えるもの、として欲しがった 言葉は、いつもアヤフヤで 移り変わる空は遠くて ああ どうにかして どうにでもして 私だけのものに 愛されたくて 愛されたくて ただ、愛しくて いつも、狂気の沙汰だった 2011.09