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15. たまねぎ

何か
ことば 聞くたび
傷つけられていった近い過去
一人だけの時間がふえた今

勘違い

してたと思う

だけど
それは
僕の望んだ未練
なんかじゃなくって

じたばた
してるあいだにゆっくり
収束へ向け
気持ち
整理してたんだ

そうやって
一枚、もう一枚、
『二人』と名のついた
時間、思い、記憶を
剥がしていってたんだ

って

体をなくす さいごのひとひら
眉をハの字にして指のばし
すがすがしくそよぐ笑みに
ようやく
気づいた

それでも
ぬるま湯につかったまま
さめていくぬくもりに
しがみついてるしか
僕にはなくって

君は
すこしずつ 着実に
目の前から
小さくなっていたんだね

くすぶるものを
笑顔を
甘えた素振りを

別の何かにまぶし
無垢な思い出になすりつけ
その辺に無造作に脱ぎ捨て
そして君は きれいになっていく
ひとひら、ふたひら
その
鱗片葉のうら 一枚一枚に
返しのついた針 しのばせ
ぬくたび走る 身をよじるほどの
いたみ
だけど
そのいたみだけがまだ
つながっている実感を与えるから
君の希望は そのまま僕への害意でしかない
のだけれど
のぞむ
意識が飛びそうなそのいたみが
途切れないこと

けれど

そしておとずれる
いたみのなくなる瞬間

そのとき

僕には無だけしか
感じられなくなる

そんな

復讐にひとしい甘さのこして

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