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11. 初恋は


賑わい 人影を あの沖より
もっと先へ
十二月の波がさらった海

厚手のコート
冷たい空気
袖膨らませ はためく
一面の
青を横切る白線
幾重も忍び寄る
地の鳴る音と
波が打ち寄せ
つま先ぬらし
泡と砕ける
砂浜に踏み入れたばかりの
二人

潮の変わり目 ひとときの凪ぎ
手を焼く太陽 音のない突堤

貝殻を集めて 見せあって 言葉にならなくて
細かな砂 跳ねる

舞い上がる ほのかな春のかぜ
はしゃいだ数だけ 足跡真新しく
返す波にきえても 性懲りもなく
何度だって 絶えず

しゃがみこんだ目線の先
青さ映す鏡

すくいあげるそば 指をすり抜け逃げていく
かがやき散らし あますことなく

たしかな静寂
背中にまわした小さな手
ふたつ

その輪郭をつばさに
僕は

どこへも どこまでも
雨も雲もないところ 目指して
どれだけだって 羽ばたけた

どこへも どこまでも

ひとりでする恋、ふたりでする恋
恋はひとつじゃない、そんな気がした

ひとりでする恋を、『恋に恋すること』だとすると
ふたりでする恋ってなんだろ

なんだろ

手をにぎったり、だきしめたり、それからそれから。
それを恋とよぶの?

ふれられる恋、なのかな

‥そっか

自分の理想を目の前の相手にかさねて
夢をみること想うこと、それがふたりでする恋

ふれられることはその表現のひとつにすぎない

ふたりの恋もまだ
一方通行のまま恋に恋したまま、それは変わらないんだ

『一方通行のままの想い』、それをきっと恋っていうんだ

ひとりでもふたりでも恋。

それがかさなったらそこで、
それがついにかさならなかったらそれで
恋はおわる

いつまでも たちどまったままじゃいられない
いつかなくす恋をつたえたいよ

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