公共の福祉で私有地が消えた話①
日本には公共の福祉という法律があります。
大勢の自由のために、個人の権利を侵害する法律です。
私が6歳の時、初めて私たちの人権が侵害されたのを感じました。
私の本家は、山を持っていました
その山には一族の墓があり、それとともに同族だと信じられている桓武平家の祠もありました。お彼岸やお盆の時は、必ずその山に登り、お参りをするのが、私の家の伝統でした。山に登るまでにも、沢山のどんぐりや、木の実があるのでとても楽しみな行事のひとつでした。
山頂付近の御墓までは、石段がありました。石段は緑ばんでいて、苔がついていました。
たまに滑るので、登るときは長くて硬い木を探して来ました。おじいちゃんに、貸してあげることもありました。良い木を持ってきて、褒められると私は少し得意げになりました。
いつからか、家にスーツの人が来るようになりました。私はちゃんと挨拶していました。スーツの人も、笑顔で挨拶してくれました。
お墓は本家のお屋敷の鬼門にあり、その山は本家の屋敷から見えました。
いつからか、私の好きな山に重機が来るようになりました。フェンスが建てられ、クヌギの木は切り倒され、開拓されて家が建ちました。何が起きているのかわかりませんでした。
笑顔で挨拶してくれたスーツの人は来なくなりました。
お盆や御彼岸に、山を登る行事はなくなりました。平家のは国の管轄になり、私たち一族のお墓は別の場所に移動しました。
おじいちゃんに聞くと、公共の福祉だよ。これはノブレスオブリージュでもある。と言われました。6歳の私は理解できませんでした。
800年間、ずっと守ってきた御墓なのに、なぜ今日、これが違法になるのかわかりませんでした。