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福祉職は性的消費される対象ではない
いわゆる福祉という業界に接して、20年は経つ。その間、生活を主体に展開してきたので、福祉でも様々なカテゴリを見させてもらった。唯一、現場に入っていないのは高齢者介護。
福祉職へのハラスメントと女性蔑視
さて、そうした中でもう一つの属性である私自身が障害者(表記は法律に従う)であるということ。支援者と障害者という両方を間にいて、このところ気になっているのが医療、福祉従事者へのハラスメントや女性蔑視だ。特に若年女性の専門職を「~子」「若い子はいいね」「女の子は大切にしないと」と呼んだり訪問介護を「おばちゃん」と呼んだり、気になることが多い。
契約であるということ
福祉サービスも医療も、2000年以降の措置から契約への流れから「契約」となった。専門職は「やさしさ」や「おもいやり」で接しているのではなく、「契約」に基づきサービス提供をしているのだ。そのために、計画相談や個別支援計画も立てる。
そうした契約に基づく専門職に対して「~子」「おばちゃん」「若い子はいいね」「女の子は大切にしないと」と声掛けをされるのは端的に不愉快であるし、専門性への蔑視。そして女性を下に見ていると取られてもおかしくないと思う。これは、従来から介護現場で問題となっている利用者からの直接触られる、言葉でのセクシャルハラスメントや、暴言が問題となっており、先行研究がなされている部分でもある。
専門職の問題
もちろん、専門職側も資格を取っただけでは仕事はできない。作業レベルから仕事レベルへと昇華させるには、どの仕事でも一緒であるが、それなりに努力と研鑽が必要であるので、初学者が従事する場合にその点は否定しない。
だからこそ、スーパービジョンや職域に応じた研修や、専門職大学院が存在しているのだし。ただし、性別に基づく蔑視は障害者であろうが、健常者であろうが等しく糾弾されることであると考えている。
利用者側の問題
障害者であると、様々な社会的障壁や健常者にできても、障害者にはできないことがあるのは事実だ。ただし、それをもって専門職を性別で分けて蔑視したり、ハラスメントをしてよい理由には全くならない。
今までできていたことができなくなったことの憤りや、羨望、絶望やもどかしさ、そして「わかってほしい」という思いがあるのは、私も障害当事者としてある程度は理解できる。孤独感が強いのも事実だ。ただし、それとハラスメントをしたり、暴言を吐いていいかというのは別の話。
訪問系サービスを展開していると、そうした性別に関することや年齢に関することでバウンダリー(境界線)を超えてくる利用者さん(契約に基づくサービス受給者であるので「利用者」と表記する)はよく出会う。
すべて仕事です
もちろん、私たち専門職も利用者さんと安心、安全な関係性を築いていたほうがサービス提供しやすいので、良好な関係をつくるために手技として雑談をすることはある。ただし、その雑談の中で不穏状態に陥っていないか、ADLやQOLは低下していないかなど生活のアセスメントをしている。つまり雑談といいつつ分析のための仕事である。
養成課程でも再三言われる「雑談力をつけましょう」は、このためにある。そして、共依存関係に陥ったり、過度な依存をされ自立を妨げるために専門職は存在するのではないという点も含めて。
利用者宅は断じて「ワーカーの憩いの場」にはなりません。
理想化しすぎるのも、ハラスメントを生む一因だ。医療従事者や福祉従事者には、個人情報保護はもちろんのこと、相談者・利用者の尊厳を貶めない、侵襲をしないなどの高い倫理観が求められるが、それは「仕事上のこと」であり、全人格ではないことを今一度、理解する必要がある。そうでないと、いつでもどこでも聖人君子を求められる「幻想」から誰も抜け出せない。
あくまで、仕事なのだ。
医療福祉職は女性だけの職種でもないし、ましてや「~子」「おばちゃん」といわれる立場でもない。そして、利用者宅は憩い場ではなく、仕事上の訪問先です。そのことを、専門職だけでなく「契約」をしてサービス利用している側も強く理解する必要があると思う。
もう一度いう。あくまで専門職として仕事をしているのだ。仕事以上のサービスを求められても困るし、ましてや私たちは性別で分けられたり、性的消費をされる存在ではないのだ。第一に、利用されている方は専門職のプライベート知らないよね。そういうことなんですよ。
このあたりの「誤解」は解いていかなければならない部分だと思う。
感情労働から技術労働へ
そのためには、感情労働といわれてしまう状態から、スキル提供をしている専門職であると啓蒙活動も必要であるし、契約時にはっきりと合意形成をしていくこと、専門職側も人材育成の段階で教育が必要であろうと思う。
ちょっと、このところの医療・福祉従事者へのハラスメントが周囲でひどいので書いてみた。
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