見出し画像

ビジネス(起業家)セミナーの闇と沼


実はセミナーが本業ですよね

この1年間、さまざまなビジネスセミナーに顔を出したり、被害を受けた人会ってきた。いや、明確な被害といえるものがないから、よけいにたちが悪いかもしれない。その人たちも、自分がついて行けなかったから悪いと思い込まされていた。

例えば、年商(純利益ではない)50億稼いでいます。というセミナー主催者がいたとする。私自身も数人の法人で年商5億は行ったことがあるから、無理な金額でもないなという感覚だ。

そして、そうした人が一般人に向けてセミナー開催とかやってる時間あるのかなと。本業がセミナーになっている人は稼ぎがセミナーとなってくるので引き出しも浅くなるし、実は天井も低い。同じことを繰り返しているだけ。

まず数字がおかしい

お金についてもおかしいところが多い。セミナーで3億円稼いでいると喧伝しているのに、どうも数字が合わない。たとえば月30,000円のセミナーで2,000人集めると月60,000,000円(6,000万円)。これが12ヶ月としたら、720,000,000円(7.2億円)。3億円という喧伝している数字と、集客数からかなり乖離していたりする。

そして、よくあるのが年商で語り、純利益で語らないパターン。フランチャイズ収入であるにも関わらず、フランチャイズ店の売り上げまで収入に参入しているパターン。貸借対照表や、財務諸表などのポートフォリオを公開できないセミナー講師は、まずやめたほうがいい。

Xのフォロワーも、Instagramのフォロワーも、YouTubeの登録者数も簡単に水増しできるし、買える時代だ。フォロワー数はまったくあてにはならない。

そして、なぜか本社事務所がレンタルオフィス。年商50億円あって、レンタルオフィスって、一般的な経営感覚からしたら謎です。そして、求人情報をみても安い

あれ、月収100万円はどこに消えた?稼げるのは受講生だけで、従業員は薄給なんだろうか。

依存させる構造

リアルで集めるのは大変だから、楽なネットを使うのも最近のベターな手法だ。なんせコストが安い。そして、そこからリアルな集客につなげていくのが、ここ10年くらい繰り返されてきた手法だ。それを受講生にも勧めるのが、もう王道。

はじめは月額数万円(青年会議所や経営者の集まりよりも高い)の負担で、セミナーを受講させる。もちろん月額のサブスクだ。そして、オンラインサロンからセミナーが終わった後も、講師や団体に依存させるような構造が作られていることがある。

たとえば合宿や集中講座とうたい、追加のサポートやフォローアップを提供することで、再度の受講や高額なプログラムの購入を促進することはいつものパターンだ。

インフルエンサーのできあがり

そして、そこで出会った人同士で数千円から、数万円の「営業」や「相互フォロー」が始まる。しかし、虚業が多く実業ではないから、YouTube、note、X、Threads、Instagramを頑張りましょう。ライブ配信をしましょうといった実業に結びつかない、一見売れているインフルエンサーのできあがりでしかない。

そして、それらは全てalphabetやmetaのプラットフォームに乗っかっているだけで、自分ではなにもしていない。プラットフォームは作ったもの勝ちの世界なのに。

しかも仲間内でコラボ動画の配信や「イイネ」を打ち合うから、「イイネ」の数字は増えてもインプレッションが増えていない(30以上イイネがあるのにインプが1000以下とかお話しにならない)し、実際に利益が上がっても、そう何度もリピートしたくなる事業展開をしている受講者はまれなので、すぐに頭打ち。

そして、そのタイミングで主催者からのフォローや叱咤激励が入り・・・・沼にはまっていく。たちの悪いことに仲間内では褒め合うから、正しい数字も感覚も経営感覚も鈍化していく。

フォローや叱咤激励も、怒鳴る・大声を出すといったセミナー講師なら要注意だ。それ、洗脳で使うよくある手法です。そして、より深みにハマり弟子と受講生に言わせたり抜けられない継続契約に持っていく。

そうしたビジネスセミナーに出るより、経済同友会や商工会議所、青年会議所に所属したほうが本当の経営者の集まりなので、よっぽどマシだ。

具体的な成果が見えない

講師が自身の成功を大いにアピールすることがありますが、その実績が真実かどうかは確認が難しい場合がある。また、実際に教えられる内容が役立つかどうかは不透明だ。2000人の集客!受講生!とあおっていても、その属性や具体的な売り上げの数値、どのような事業展開が継続して行われているのか不明なことが多い。

そもそも、確定申告はできても、財務諸表や貸借対照表といった書類を作れなかったり、税理士に依頼していないミニ起業の受講生も多く、喧伝されている話と乖離しすぎている。

それでも、前述のスキームでカモはいくらでも寄ってくる。

そもそも、だれが引っかかっているの?

一部のセミナーは、参加者に「成功者の仲間入りを果たした」と思わせることで、他のセミナー参加者を紹介させたり、友人や家族を勧誘するよう促すこともある。こうした手法は、参加者の人間関係を利用する不誠実なものだ。

そうしたなかで、良く引っかかっている人には特徴がある。

  • 老いていくことを意識し始める

  • 仕事や家庭での責任の重さや周囲の期待

  • キャリアの停滞

  • 子どもの独立による虚無感

  • ホルモンバランスの変化による不安定感

そう、ミッドライフクライシスが襲ってくる年齢や、生活保護受給者、シングルマザー、障害者などの社会的弱者だ。公金がこうした場所に流れていると思うと、もやもやすることもあるが、これは受講生が悪いのではない。

受講生のエピソードも似たようなことが多いのも特徴的だ。うつ状態、離婚、モラハラ、DV経験者、出社拒否などの職場不適応症、現在への焦り、不安が継続している、キャリア構築に失敗した一発逆転をしたい人など。そもそも、アッパー層はオンラインサロンやビジネスセミナーに参加なんてしない

企業家(≠起業家)やアッパー層はビジネスセミナーの受講なんてしない。するなら同業種や異業種での会合に初めから出ている。職能団体や学閥も依然として存在する。そうした世界を知らないからこそ、セミナー・サロンにはまる。

あるセミナー主宰者が話していましたが「王道では稼げないからセミナーにハマる。人は楽をしたい生き物だから」と。これはある種の真理だろう。

キツネとタヌキの化かし合い

受講生同士、お金がある、余裕があるように見せていても、相談の中で売り上げや生活費を可視化してもらうと、フルタイムでパートをしたほうがよっぽど稼げるなんてパターンもある。

受講生自身が事業を始めた年、実績、経歴を盛るなんてパターンもよくあり、借金があったり、不倫を隠して営業をしていたこともある。受講生同士ですら、キツネとタヌキの化かし合いだ。だからこそ、書類ベースでしか私は相談を受けない。帳簿や受診歴、開業届、戸籍謄本などを見ればわかる話であるので。

今の東京都だと、1200円程度の時給なんてざらだ。純利が時間当たり1500円を切っていたら、そもそも事業として成立していないと思ったほうがいい。さらに言うならば、起業・オンラインセミナーに投資した金額を回収すらできてないなら危うい。セミナーが3万円/月だとしたら、10ヶ月で30万円。

それ+1,500(時給)*8(時間)*20(稼働日数)=240,000円
=54万円を純利(月商ではない)で上げられてないなら、プチ起業家としても破綻している。

24万円だって、地域や職種によっては、短大・専門卒の初任給より安い。7年前の専門卒のGMO新卒でこの金額だった。なんなら、16日稼働で30万円(18,750円/日給)なんて就職先も増えてきている。

スタートからズレている

もっとも、真面目に起業するなら初めから原資を貯めて使うなり、借り入れなりして起業し、従業員を雇いつつ、まっとうな経営者を目指すはずだ。スタートからズレていることに気がついた方がいい。

ただし、生活保護という安定収入を受けながら起業するのはありかもしれない。なんせ失敗しても生活には困らないのだから、ノーリスクだ。子育て世帯だったら、それなりに受給額はある。子どもに影響を出してほしくないのが、児童福祉の専門家としては最低限の警鐘を鳴らしておきたいところであるが。

そして、本気で経営や起業を学びたいならMBAをとったほうがいい。同じ時間やお金をかけるなら、専門職学位も取得できるし、大学院修了にもなる。官僚や経営者も多いので横のつながりも確実にできる。

ともあれ、みなさんも気をつけましょうね!
この人は大丈夫。この人なら信頼できる。という人ほど信頼できないのがビジネスセミナーやオンラインサロンですから。そして受講者同士も虚構のキラキラを身に纏っている場合があるので、受講者も信じて沼にはまらぬようにお祈りいたします。


いいなと思ったら応援しよう!

真紀
現場から現代社会を思考する/某国立大学の非常勤講師/専門は社会福祉学だが、最近は社会学に傾倒中。