安価な労働力として「特定技能・特定活動・技能実習」制度を利用すると痛い目を見ます
※制度そのものについての問題や意見は、本記事では取り扱いません※
今どこの企業も人手が足りませんし、かと言って人的コストを増やしたくないとのことで、もしかしたら「特定技能・特定活動・技能実習で外国人を雇用しよう!」とお考えの企業もあるかもしれません。
しかし、人事担当として4ヵ国から、外国人特定技能・技能実習生を受け入れた経験上、安易な考えでこれらの制度を用いて労働力確保しようとすると痛い目を見ます。
今回は啓発の意味も込めて、「実際体験してないと気づけない大変だったこと」を共有したいと思います。
提出書類とプロセスの煩雑さ
特定技能・技能実習・特定活動で外国人を雇用する場合、国ごとで要件とプロセスが結構異なります。特に大変だったのは「フィリピン」からの受け入れ。
他国よりも用意する書類が多いことに加えPOEAやPOLOといった省庁との面談が必要になります。(基本的に代表が対応機関に赴く必要がある)
また、日本の賃金要件をクリアしていても、フィリピン側の「手取り賃金」の下限を満たしていない場合、許可が下りません。地方の食品会社で受け入れした際は、かなりギリギリでやっていたため、3回ほど差し戻しを貰ってしまった程です。
② 宗教や文化的背景の考慮
外国人労働者の宗教や文化的背景を尊重することは大切です。特にインドネシアなどのイスラム圏の国は礼拝のための時間と場所を必要とすることがあり、食事に関しても留意が必要。実際社内食堂などの運営はかなりルール決めに時間を要しました。
また、服装や習慣についても理解が必要です。初めてインドネシアの方を受け入れた際は、「何でこんな派手なシャツを⁉」と驚きましたが、実は向こうの正装だった、なんてこともあります(笑)
③トータルの人的コストは割高
コレに関しては、「そもそも安い労働力を確保する制度ではない」という前提ではありますが、特定技能・技能実習・特定活動で外国人を雇用する際は、基本的にコスト面は割高になります。
家の契約金、生活費用や家具、家賃、光熱費、ネット代など、多くの費用が企業持ちとなり、さらに、大抵の国では徴収していい生活費の上限が設けられているため、総合的なコストは高くなることが多いです。
私が受け入れていた地方の食品加工業では、高卒の日本人社員よりも、人件費としては一人あたり3万円以上高かったことを覚えています。
また、制度の意義的に良い悪いは別として、彼らは基本的に「稼ぎに来ている」意識が強いため、給与や残業に対する要求も高いことが多いところにも留意が必要です。
④ 国の組み合わせは慎重に
外国人労働者を複数の国から雇用する場合、歴史的背景や文化的な違いから、どうしても喧嘩になり易い組み合わせがあり、雇用前に送り出し機関や受け入れ機関に確認を行うことをお勧めします。
また、2ヵ国だと完全にグループで分かれてしまい、業務の円滑な進行に支障をきたすこともあるため、個人的には1ヵ国または3ヵ国の組み合わせを検討することがお勧めです。
まとめ
人事担当だった頃、外国人人材の斡旋業者からのテレアポはかなり多く、ある意味「需要の表れ」だとも感じていました。しかし、安易にこれらの制度を利用した労働力確保に走ってしまうと、お互いに不幸な結果になりますので、是非慎重な検討の上利用して貰いたいと思います。