豆柴

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豆柴

楽しく読んでいただけたら嬉しいです。  Ì hope that you guys enjoy my world!

最近の記事

サドル狂騒曲90 ソドムの男達

 年末に泊まった部屋のベッドに青葉をそっと横たえると、恭平は胸元に手を回しブラウスのボタンを外して肩口からずらした。白い小さな背中に、赤黒い鞭の跡が縦横無尽に走り、所々に張られた絆創膏には赤い血が滲んでいる。傍らで見ていた雄太は拳を握りしめて低く唸った。 「 契約違反だ。投資対象の価値を下げた上に命の危険に晒した。この取引はご破算にして卿を傷害致傷で訴えてやる 」 「 青葉がナイフで卿を切りつけたんだ。それで卿が怒り狂って鞭でメッタ打ちにした 」 「 何だって… どうしてそ

    • サドル狂騒曲89 希望の光

      ライトベージュのナイティを着て深く眠る美奈子の頬を、雄太は指で静かになぞった。 「 ベッドに入ったら子供の時の話をしたいの。進藤のおば様やママも若かったしたくさん思い出があるわ 」  無邪気に笑っていた美奈子だが、いざシルクの枕に頭を埋めて雄太のキスを受け抱きしめられたら一瞬で眠りに落ちていった。  今頃幼い俺と夏の高原を走っているんだろう。あの頃が一番幸せだったかもしれない。    雄太は壁の時計を見た。あと30分で日付が変わる。  恭平に電話をしてからもう4時

      • サドル狂騒曲88女神と毒婦

         会長の後ろには相本部長が立っている。会長が拳銃をスッと横にそらすと、相本部長は白いハンカチを広げてそれを受け取った。 「 相本、もし卿がおかしな事をしたら遠慮せず頭を打ち抜きなさい 」 「 かしこまりました 」  相本部長は目線を幣原様に合わせると、静かに拳銃を右手に持ち替えた。あまりの冷静さに怖さを感じる。  会長はベッドに近づき、恭平さんの手を縛るタイをほどいた。恭平さんは喉を押さえながら起き上がると、大きく息を吐く。私が顔を上げたら抱き起こして裸の胸で抱きしめてく

        • サドル狂騒曲87 土壇場の優美

          手応えはあった。シャツの割ける音に続いて短い呻き声が聞こえ、反動で私はベッドの足元に倒れこんだ。ナイフの刃先にうっすらついた血の染みを見て振り返ると, サイドテーブルにもたれて脇腹を押さえる幣原様の背が見えた。二つに割けたシャツに赤黒い染みが3つ。血だ。  「 う… 」  恭平さんの弱い声がした。ベッドの上で縛られたまま仰向けでぐったりしてる。首に赤黒い手の跡が生々しい。 「 恭平さん!死なないで!」 ベッドに上がると私は剥き出しの下半身を元に戻して、縛られた手をほどこうと恭

        サドル狂騒曲90 ソドムの男達

          サドル狂騒曲86 獣狩りの夜

          「 断る。お前の美しさは確かに常人の領域を超えているが、あの無粋な小僧の手垢がついている。残念だが食指は動かないな 」 「 卿、私は16で家を出てからその日の寝場所を探すために好きでもない男に抱かれました。心も体も汚れ切った下衆の私を救って浄化してくれたのが、進藤です 」  恭平さんはゆっくり幣原様に近寄り手を取ると、頬にそれを当てた。2人は見つめ合ったまま黙っている。私は恭平さんの白い身体から目が離れない。しなやかだけど力強い。繊細で折れそうなのに、圧倒的な存在感がある。

          サドル狂騒曲86 獣狩りの夜

          サドル狂騒曲85 美しい瞳

          「 無礼者。入ってよいとは言っていないぞ 」  グラスのお酒を軽く含んで幣原様は恭平さんを睨んだ。 「 申し訳ありません。非礼は承知しております。ですが北岡がこちらに伺ったと進藤から聞きましたので早く止めにいく必要があると判断いたしました 」 「 あの小僧が?知っているのか。では話は早い。私がこの娘の処女を貰い受けても何の異存もないという事だな 」  「 それは違います。あの約束はまだ有効です。彼女が20歳になるまでどうか待っていただきたい。そうでなければ、私たちが投資した5

          サドル狂騒曲85 美しい瞳

          サドル狂騒曲84 赤い怒り

          「 入れ。鍵はかけておらん 」    静かだけど威厳のある声が聞こえて私はドアを開けた。中は暖かい。奥に暖炉の火が燃えているのが見える。私は頭を下げて次のお言葉を待った。 「 顔を上げろ 」  頭を上げようとするけど、緊張で上手く動けない。どうしよう、さっきまでは平気だったのに、やっぱり本人の前に立つとあの時の場面がどんどん頭に溢れて来る。縛られて、胸を土足で踏まれた痛みが蘇って全身を走る。  負けるな青葉、顔を上げるんだ。  コーヒーの香りに惹かれるように、私は顔を暖炉

          サドル狂騒曲84 赤い怒り

          サドル狂騒曲83 交錯する想い

          「 青葉が幣原卿の部屋へ向かってる。クラブハウスの2階個室だ。今週は卿が貸し切っているのは青葉も知っている。お前が今どこにいるかわからないが、とにかく行け、行って青葉を止めてこい   」  マンションのリビングで雄太は片手に携帯、片手で美奈子の体を羽交い絞めにして床に伏せている。狂ったように暴れる美奈子に蹴られながら、雄太は開け放たれたベランダの引き戸を凝視していた。風に煽られはためくカーテンの音が闇の吠える声と重なって響く。 「 銀座だけど、どうして青葉がユウのところへ… 

          サドル狂騒曲83 交錯する想い

          サドル狂騒曲82 白いアベ・マリア

          「 雄太さん、この人、どうしてセキュリティの番号を知っているのかしら 」 般若姫はドレスの白とは全く不釣り合いな冷たく固い顔を私に向けたまま雄太さんを問い詰める。雄太さんがすぐに姫の手を取って引き寄せると、姫は見せつけるように胸にしがみつく。 何、あの態度… 胸にチリチリと苛立ちが広がって、私は唇を噛んだ。 「 さっき話した友達とここに来た時教えたんだ。でも、ふたりきりになった訳じゃないよ 」 なだめるみたいに優しい雄太さんの口ぶりが更にイライラに拍車をかける。何よ、私のアパ

          サドル狂騒曲82 白いアベ・マリア

          サドル狂騒曲81 再会の般若

          最後に会って2週間くらいしか過ぎてないのに、その顔はとても懐かしく映る。陽に焼けた顔、広い肩幅、目尻が少しキツイけど、綺麗な二重まぶたが上品で優しい。怒ると怖いけど、キスする時は笑ってくれる。 ああ、雄太さんだ。私は喜びで準備していない言葉を口走りそうになる。いけない、開きかけた口を一度結んでスタンバイすると勇気を出して最初のセリフを切り出した。 「 雄太さん、遅くにごめんなさい。私、どうしても伝えたい事が… 」 「 お前… 」 マジマジと私を見る目は怒っていないし笑ってい

          サドル狂騒曲81 再会の般若

          サドル狂騒曲80 気まずい訪問者

           雄太は部屋に入ると、美奈子の手を引いてキッチン、居間、トイレとバスルームの場所を回った。美奈子は壁伝いに歩きながらも、大体の位置を把握して頷いた。 「 大丈夫よ。自宅より広いけどわかりやすいから一人でも歩けるわ 」  頭の回転が速く、俯瞰が利くせいか美奈子は視覚障害を感じさせない程機敏に行動できる。家では一人で炊事や家事をこなすと聞いて雄太は舌を巻いた。  「 すごいな美奈子は… これじゃ俺がついてる必要はないな 」  「 自分の事は自分でやらないと。後、見えないと逆に嗅覚

          サドル狂騒曲80 気まずい訪問者

          サドル狂騒曲79 それぞれの思惑

          「 お前は一体何を考えているの?謹慎期間がやっと終わってこれから本格的に現場復帰するタイミングで退職するのは私に対する嫌がらせかしら 」  会長室の椅子に腰かけた緋呂子は怒りの籠った眼差しを雄太に浴びせかける。雄太はその視線を跳ね返すように昂然と女会長を見下ろした。 「 別に文句言われる筋合いはありません。ちゃんと1か月前に退職申請を出してますんで何の落ち度もないはずです」 「 詭弁を聞いてるんじゃないのよ。散々やりたい放題しておいて温情をかけてやったにも関わらずその態度

          サドル狂騒曲79 それぞれの思惑

          サドル狂騒曲 78 神の祝福

          賑やかな渋谷の街並みを抜けて1本路地に入るとそこは高い塀に囲まれた高級住宅が並ぶお屋敷通り。その一番奥まった一角にそびえるバカでかい門扉が片桐様の邸宅の検問所(失礼)らしい。スーツを着た目つきの鋭いおじさんが立って、車のナンバーや恭平さんの身分証明書、車の中やトランクまで開けて調べられる。 「 こんなにチェックが厳しいんですか… 」 「 この辺は住民以外立ち入らないし、よそ者には厳しい土地柄なんだよ。住んでいるのはお年寄りがほとんどみたいだから防犯には気を使っているんじゃない

          サドル狂騒曲 78 神の祝福

          サドル狂騒曲77 春の宵

          尻は小さいな。ヘアと髪の色はほぼ一緒か。脱毛かトリミングすればもう少し色っぽくなるけどこのままでも健康的でいいな。それにしても…青葉が言う通り乳はデカい。スケブラからはみでそう、つうか、重みで紐が切れるぞ。釣鐘形の方が好みだけど、こりゃドッジボールだな。AV女優でもここまですごいサイズはそんなにいない。品のある顔だからアンバランスがたまらんというか、そんなめくれた可愛い唇見せるなよ… 色白、いいなあ。あああ、割れ目から乳首が見えてる。下も触り放題ってやつ?ヤバいやばいやばい、

          サドル狂騒曲77 春の宵

          サドル狂騒曲76 本日はようこそ

            堀川家に現れた雄太は、乗馬倶楽部で見た姿とはまるで別人だった。 あの時砂で汚れていた髪は少し短く切って前髪だけ軽く垂らしたクラシックなスタイルに変わっていた、薄青のテーラードジャケットは体の線にピッタリ沿った個性的なデザインでオーダーメイドでしか出せない斬新さがある。程よく日焼けした首元に目の覚めるような真っ白いシャツが眩しく光り、もっと驚くことにおそろいであつらえた袖のカフスとタイピンには大粒のダイヤが埋まっていて極上の光を放っている。だがそれらを凌駕するに足る雄太

          サドル狂騒曲76 本日はようこそ

          サドル狂騒曲75 不吉な予感

           雄太は自宅には帰らず倶楽部の厩舎で一夜を過ごした。餌の飼い葉が薄いシート状に固められ積み上げられた倉庫で当直室から持ってきた毛布を引き寝転がったまま天井を見つめ続ける。寒さは感じないが、怒りも悲しさも寂しさも湧かない。長い間育んだ恭平への愛が一瞬で持ち去られた虚無感なのか、その手口の鮮やかさ故に傷口や痛みひとつ残さず思い出を消した恭平への感謝なのか。煙草を手にする衝動すら起らない程雄太の内面は燃えつきて、冷えた灰から立ち上る思い出の余韻に身を任せひたすら夜が明けるのを待ちわ

          サドル狂騒曲75 不吉な予感