27A

彼女は波打際、自分の頭上に手を掲げた。その白く細い手を眺めている内に海は夕闇に染まり始めた。


それはまるで赤子がまだ生まれた時にする仕草のように。


彼女は死に方を知ろうとしていた。





「飴瓶」


空っぽな飴瓶みたいな世界を書いていたい。


何もないのに薫る甘い匂い


そこにあった筈のもの


硝子に彩られた景色。


擦りガラス越しの飛行機雲。


抜け出せないような高いコルク。


何もない楽園。


何もないのに楽園を信じている。


何もないのに甘い匂いを吸う為に息をしている。


何もないのに、生きている。

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