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小学生の頃、世界は単純に美しくて、面白おかしいものだった。
中学生の頃、人のすべてを信用するのは危険だと気づいた。
それと同時に自分のなかだけでとどめておける楽さを知った。
そこに底しれない苦痛が伴うことも知った。
高校一年生初めの頃、人の愛情にも種類があることを知った。
所有愛、偏執的愛、自己愛、性愛。
欲望が人をかりだたせ、愛という単一な言葉ではその欲望を表すことはできないのだと知った。
また私もその中のしょうもない人間なのだと知った。
自分は人付き合いが苦手なのだと気づいた。
誰かに何かを打ち明けることがどうしようもなく苦手なのだと気づいた。
自分が何かを打ち明けることができるのは自分が書く文章のなかだけだった。
拙い文章だ。
私は初めて途方もない自己嫌悪に溺れた。それとともに他人が、家族が、友達が、苦手になった。
毎日毎日、太陽の出ない暗い海を、あるかもわからない氷山を目指して泳いでいるような気分だった。
音楽と文学がこれまで以上に好きになった。
一時高校を辞めかけた。
高校一年生の後半、秋口の頃、誰かを心から愛すること愛されることの素晴らしさを知った。
心地よかった。
湧き上がってくる愛情は不安や不満を誘ったが、それでもそれ以上の幸せがあった。
所有愛、偏執的愛、自己愛、性愛。
悪いことだけではないのだと知った。
人生に彩りが生まれた。
思い出す。
変わったこと。変わらないこと。