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錫森栞
2023年3月12日 11:51
自室から流れてくるラジオの声を聞きながら物干し縄を伸ばして洗濯物を干した。下の運河を見下ろせば煙を巻く船頭が下っていっていた。「快晴。今日は素晴らしい快晴です。中央通りもいつにも増した賑わい…」ラジオの漣に耳を澄ませると下の花屋で主人が高らかに笑う声が聞こえた。廊下を横切って、階段から少し覗くと若夫婦が主人と談笑していた。「あれ、なんて花ですの?」大きな窓に顔を出した真っ白な花を白い帽