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2022.12.28 内的体験

ループしてループして流れて ぐるぐる回って フィルムを10秒から15秒毎に巻き戻しているかのように時間が進む状態になった。かけている音楽は全く頭に入ってこない。その歌の歌詞も辛うじて思い出せたがすぐに5秒前の自分に戻る。 それでも戻る前の自分はこの感覚に陥っているのに異常なくらい冷静な判断をしている。家に帰る道も知っている。ただ戻された時にさっきまで自分が何を考えたかを忘れたり思い出したりする。 人はある一つのことをしながら、もう一つのことを同時に考えることができる。それが

    • 父の病牀

      8/3 15時半 病床に臥せた父を見ていると居た堪れなかった。 それでも父は懸命だったと思う。 無意識に動かせなくなり閉じきった指を何度も開いたり閉じたりしようとしていた。今日は以前より息が荒かった。身体もだいぶ痩せてしまった。瞬きも少なくなり一点を見つめているだけだ。一体何を考えているのだろうか。もはや考えるとこもできずにただ生命活動を維持しているだけかもしれない。 私はそんな父を見ていたくなかった、もともと頑丈なイメージはないがそれでも私にとっては唯一の父親だ。気が強い

      • それから

        大切な人を失った僕は またその人に会いたいと思った。 どうすればその人と再会できるのかをときどき考えた。 僕はその人が住んでいたアパートに行ってみた。 アパートは白い壁にやや年季が見て取れる風貌で無機質に立っていた。ここもだいぶ住宅地が増えた。 しかしそこはあの人がいたときとなにも変わらず、時間だけが過ぎていて、あの人というピースだけが空白の世界だった。その空白はほんの些細なもので、僕以外は特に誰も何の違和感もないみたいだ。 家の裏手には公園があって、誰もいない公園のベン

        • 或る旅人の日常

          雨上がりの朝 コーヒーを淹れて 澄んだ空気の中 風が流れた 旅人は行くよ 目的地はない どこまでも続く 線を辿って 昼下がりの午後 大通りを縫って 強い日差しの中 風が流れた  日が沈んだら 街を見下ろして 星屑の街に 風が流れた 旅人は行くよ 目的地はない どこまでも続く 線を辿って 旅人は行くよ 目的地はない 僕たちはいつも 明日を信じて

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          僕の影

          夜に馴染む街の光を後にして 人静かな通りを闊歩する 疲れた僕の影は 離れては追いついてを繰り返した 245号線の街灯が不思議と怖くて コンビニで缶コーヒーを買った 知らない街に迷い込んでしまった もう列車はない 置き場のない感情は何処にしまい込んだかな もう誰かを傷つけないように鍵をかけておこうか ヨルガオのように繰り出して 風が吹く通りを流浪する 疲れた僕の影は 相も変わらず必死に追いかけてきた 246号線の街灯がいつもより眩しくて 逃げるように足を早めた 君といた

          僕の影

          山荒の葛藤

          疲れたのは 続く雨のせい 生きづらいのは 殺した感情のせい 眠れないのは 深い孤独のせい 言えないのは 矛盾した躊躇いのせい あと少しだけ もう少しだけ 伝えたいのは 些細な気持ち 言えないのは 言えないのは あと少しだけ もう少しだけ

          山荒の葛藤

          追悼。

          幼い頃からの恩人が亡くなった。 俺にスキーを教えてくれたのも、車を教えてくれたのも、山を教えてくれたのも彼だった。 兄ちゃんと呼んでいた。 ほんとうの兄のようで、父のようで、親友のようで、俺の成長には彼が必ずどこかにいた。 俺の人生は彼の影響がほんとうに強い。 人は遺伝と環境でその人格が決定されるが、環境要因の72%は彼によるものだろう。 おれは惜しい人を失ってしまった。 こういう風に書くと不謹慎に思われるし、その重みが伝わらないし、実際に軽量化してしまうと思う。けど

          追悼。

          涸沢の睡魔

          歩きながら意識が飛んでいく感覚を経験したことがあるだろうか。 いまから6年くらい前になると思う。 高校2年の夏に穂高連峰縦走をした。 上高地から入って北穂、涸沢、奥穂、前穂をぐるっと一泊二日かけて歩くルートだ。 前日は夜遅くまでアルバイトをしていたが、その足で松本へ向かった。翌早朝5時にはもう歩き始めていた。 そのせいもあってか、快調に進んでいた僕の足は涸沢小屋で一服をしてからだいぶ重くなってきた。激しい睡魔に襲われたんだ 何度も膝を斜面にぶつけ、両手を地面についた。

          涸沢の睡魔

          孤高の人 Lost in the Alps

          BPM=83〜90 孤独には慣れてるはずだ 風が生き物のように音を立ててうねる 汚れちまった悲しみに今日も吹きあたるかのよう 顔に冷たい風を感じるのは 高所であるなによりもの証拠だ やがて雪炎がここ一帯を覆い尽くすだろう 背後には着々とガスが差し迫る ブロッケンの影が俺を惑わす 自然の采配からは逃れられない ハイブリッドレインボーに向かって真っ直ぐ進め 決して振り返ってはいけない。 大キレット ザイテングラート ジャンダルム モルゲンロート 暴風を切るナイフリッ

          孤高の人 Lost in the Alps

          サカナクション

          〜私の音楽観を作った音楽(2)〜 私の音楽観のなかで最も音楽活動へ誘導したのはサカナクションというバンドの存在だ。 私がサカナクションというバンドを認知したのは割と最近なのかもしれない。はじめての接触は、dinnerという江口洋介が主演を演じるドラマのタイアップになっていた『ミュージック』である。当時、割と攻撃的なサウンドやアップチューンな楽曲ばかり聴いていた私にとっての最大の転機になった。 バンドとクラブミュージックの融合だ。 このバンドはなんと言ってもライブがすごか

          サカナクション

          失った時のこと

          きみと僕の季節が始まって何日か経過したある日のことだった。 きみは突然水をやりたいと言い始めた。  勿論反対した。今考えると僕はどういう訳かそういう仕事について少なからず偏見を持っていた。 何処でどう形作られた偏見かは解らないがはっきりと嫌だった。でもぼくはきみがどこかへ行ってしまうようなそんな気がした。 吐き気と倦怠感がからだを飲み込んだ。  以前読んだ本に生物学的な境界について書いてあったのを思い出した。 生物の環境は境界によって隔たれ、自己の境界とは内部環境と外部

          失った時のこと

          松任谷由実

          〜私の音楽観を作った音楽(1)〜 私という人間が始めて音楽と接触したのは車の中だ。母や友人の影響でうちの車では、専らユーミン(松任谷由実)が流れていた。その頃の車はカセットテープが搭載されていて、巻き戻しの擦れる音が懐かしい。多分子どもの音の記憶力って今では考えられないほど凄まじいものだろう。ほとんどの曲の歌詞を意味も知らず、音で覚えた。歌詞カードは無かったし、子どもだからその歌詞を深く理解するにはまだ早かったが、そのメロディは今でも脳裏に焼き付いている。 sweet, b

          松任谷由実

          目が明く藍色という一つの答え

          サカナクションは札幌から東京へ活動拠点を移し、2010年1月セントレイに続き約一年ぶりの2枚目シングルとしてアルクアラウンドをリリース。斬新な音楽性と評価されチャートの上位にランクインするなどしてヒットするが、山口一郎自身はアルクアラウンドのような前向きで分かりやすい表面的な曲調の曲に「自分らしさ」をあまり見出せなかったという。 そんなジレンマと闘いながら、これからどういう曲をやっていきたいのかを考えてリリースしたのがkikUUikiというアルバムだ。後にラジオで山口はア

          目が明く藍色という一つの答え

          alive

          また呼吸を整えて  生きる意味を探し僕は歩き出す 君は共感できない 痛みや悲しみをずっと抱えてる 真黒な世界も 鮮やかに色づき 生きていれば その傷も癒える 生きて  真暗な世界も 光が差し込み 生きていれば その傷も癒える 生きて 生きて

          霧雨と外燈

          霧雨頰に馴染ませて 僕は泣いてたんだ 雑踏の消えた交差点で 何かを考えてた 何もない日々に戻る 遠くへ行きたくて 僕は歩く 歩く さよならも言わず君は消えていった 雨の中を僕は淋しく歩いた 雨は少し落ち着いて 薄暗い外灯辿る 懐かしい古い高架線で 誰かを想っていた さよならも言わず君は消えていった 雨の中を僕は淋しく歩いた さよなら

          霧雨と外燈