トーキョー・カブキ・アクターズ
眠らぬ街、トウキョウ。煌びやかなこの地にも闇はある。
「終電間に合うかな…」スーツ姿のOLが早足で歩く。
彼女は急いでいた。月は隠れていた。路地裏を照らす光は微かだった。
故にトリイにも、一面に貼られた札にも、
(オオオ…羨ましい…恨めしい…)宙を舞う悍ましき生首にも気付かなかった。
「…そして今後気付くこともあるまい」
女性と生首の間を黒装束の男たちが駆け抜け、幕を引く!
棚引く布は亡者の黒、生者の萌黄、それを分かつ柿渋色。
PONG!PONG!PONGPONGPONG!鼓が鳴り響く!
「イヨォーッ!」PONG!一際大きな鼓、そして叫び。
雲の切れ間から差した月光が男の顔を、白塗りを、赤き紋様を照らす。
SLASH!薙刀が生首を正中線で分断した。
眠らぬ街、トウキョウ。煌びやかなこの地にも闇はある。
その闇を祓う術を持つ者達、闇を歌い闇に舞う伎を持つ者達。
彼らを人は「カブキ・アクターズ」と呼んだ。
【続く】