「かたちは思考する」を読んで
平倉圭「かたちは思考する」が好きで、繰り返し読んでいる。
本書は芸術制作分析についての本であり、一章以降、様々な芸術(ここでいう「芸術」は絵画のような所謂芸術作品だけでなく、「人を捉え、触発するかたちを制作する技、その技の産物」と定義)について、「なぜそのかたちは人を捉え、触発するのか」、「その力の正体」について分析的に考察している。
私が好きなのは序章で、序章では一章以降で根底にある考え方、基本理論について書いてある。以下は序章の一文である。
他でもありえた可能性を背景として、特定の一つの形が実現するとき、形自体の中に思考がある。形はときに周囲の者を捉え、巻き込み、揺り動かす。形は、その具体的な姿を通して力を放つ。
以下、感想とちょっとした考察。
何を表象するかより、表象自体の力に注目している点が面白く、強く惹かれるものがあった。例えば、絵画であれば、何が書かれているかよりも、なぜその絵にひき込まれるのかということである。そして私はそれが大事だと思う。
人生についても同じことが言えると思う。
生きていれば他者に影響を与え続け、他者から影響を与えられ続ける。人生は表象の連続であり、芸術と言って良いのかもしれない。
「何をするか」よりも「他者に対しどれだけ影響を与えることができたか」「どれだけ影響を受けることができるか」、これは芸術的な態度であり、私はこの「力」に強く惹かれる。