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連載3日目 『冬の朝の支度』
連載3日目『冬の朝の支度』
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冬の朝、布団の中から身を起こす。暖房のぬくもりが、ゆっくりと部屋に広がっていた。布団から這い出し、寝巻きから普段着へと着替える。
寝巻きを着る習慣ができたのは、ある読書サークルで知り合ったKさんの助言がきっかけだった。それまで私は、ほぼ全裸か、せいぜい下着姿で寝ていた。Kさんは「寝巻きを着ると保温効果が上がり、熟睡できる」と言う。試しに着てみると、確かに朝までぐっすり眠れた。それ以来、寝巻きはすっかり習慣になった。
そもそも、私は「寝るときの服」という概念を持っていなかった。服にはあまり関心がなく、必要最低限のものがあれば十分だったからだ。加えて、私はASDの特性から、一度決めたルールを守りたがる性質がある。「寝るときの服」という発想がなかったからこそ、ずっとそのまま寝ていたのだ。
まず、上半身には、去年福岡を訪れた際に知り、それ以来愛用しているヒートテックを着る。その上には、兄から譲り受けた麻繊維の長袖シャツ。さらに、ロシアのサンクトペテルブルク(レニングラード)で、たぶん兄が買ったバンド模様入りの厚手のセーターを重ねる。遠目にはレトロゲームのドット絵のように見える柄で、時折「それ、ゲームの模様?」と聞かれることもある。仕上げに、これも兄が買ったと思われる赤いパーカーを羽織る。
下半身には、同じく福岡で知ったヒートテックを一枚。その上に、黒い運動用の作業ズボンを重ねる。上下とも、数週間に一度は洗濯するようにしている。以前は気にしなかったが、人と会う機会が増えた今、清潔でないと何かと指摘される。自分としては多少汚れていても構わないのだが、余計なトラブルを避けるため、ある程度の清潔さは保つようにしている。
足元は、肉体労働で汚れやすいため、ほぼ毎日買い替えている白い靴下。
そして、最後に帽子をかぶる。つばのある帽子は、私のトレードマークだ。物心ついた頃からずっとかぶり続けている。
「なんでそんなに帽子をかぶるの?」と聞かれることがよくある。年齢的に「ハゲ隠し?」と言われることもある。確かに、30代後半ともなれば薄毛が気にならないわけではない。しかし、それは自然の摂理だ。抗うつもりもないし、「増毛!」と大げさに宣伝する広告に踊らされるつもりもない。
実は、私の家には帽子が40〜50個ほどある。なぜそんなにあるのか? それは——。
(続く)
後で返信します。