TheSkilled - ZAREX Remixを通じて押韻を知ってほしい。


HipHopアーティストである餓鬼レンジャーの2019年04月03日発売の「ティンカーベル 〜ネバーランドの妖精たち〜」が発表されてからというものの、アルバムの中の1曲「The Skilled (feat. LITTLE & FORK)」が原曲であるRemixの流れが「The Skilled IB remix (玉露.KIT.TSUBOI)」をきっかけに生まれています。

ネットでもこの流れをまとめている方もいまして、

HIPHOP 餓鬼レンジャー LITTLE&FORK『The Skilled Remix』集

上記のリンクで音源がまとめられていますが、随時更新されています。興味がある方は是非、リンク先を見に行ってみてください。

そして、自身でもRemixさせて頂いたのが、

TheSkilled - ZAREX Remix

上記の音源ですね。まだ拝聴していない方は1度聴いてみてください。

この記事はこの音源を踏まえての記事になります(ダイレクトな宣伝行為)

というのも、この音源を制作するにあたって原曲を制作された方々に対してとても尊敬の念があります。trackを担当されたDJオショウさんはもちろん、餓鬼レンジャーよりYOSHIさん、KICKTHECANCREWよりLITTLEさん、ICE BAHNよりFORKさん、それぞれにありまして。

それをRemixを制作するという形によって示したい。しかし、餓鬼レンジャーのYOSHIさんはTwitterでこんなことをおっしゃられていました。

とにかく「韻文化」を復興したいです。

この記事を読んでいる方はいつから日本語ラップを聴いていますか?80年代?90年代?00年代?それとも最近MCバトルからなんとなく知ってなんとなくYouTubeで話題になっている曲を聴いているぐらいですか?

遡ること13年前、2006年に開催されたULTIMATE MC BATTLEでICE BAHNのFORKさんが優勝した頃の日本語ラップはとにかく韻を踏んでいなければラップじゃないことを強く体感しています。

ですが、年月が経つにつれフロウが進化したり、MCバトルでのアンサー力、リズムの刻み方など様々な角度での日本語ラップが出現し、踏まなくても格好良いラップが出来る時代になったと思います。

そこで、今回の楽曲での冒頭。

intro『踏まなくても格好いいラップができる時代に、踏みながら格好いいラップをする全国のライマーへ愛と感謝とリスペクト

自分は言わずにはいられませんでした。別に踏まなくても格好良い、すげぇ、やべぇと言われる時代に押韻への愛を貫く姿勢、その人たちがいるおかげで成り立つ『韻文化』の存続への感謝、そしてクオリティの高い押韻を繰り出すスキルに対してのリスペクト。

自分はこの曲と記事を通じて、押韻を知ってほしいと思いました。特に、最近日本語ラップを聴き始めた人たちへ。こんな面白さや楽しさもあるのだということが伝われば幸いです。

そもそも、この楽曲のリリック自体が

サンプリング(ヒップホップやR&B、ポップスにおけるサンプリングとは、既存(過去)の音源から音(ベース音等)や歌詞の一部分を抜粋し、同じパートをループさせたり継ぎ接ぎするなど曲の構成を再構築することで名目上別の曲を作り出す手法のこと。あくまで曲の一部分を引用するだけなので、基本的な歌詞やメロディーラインをそのままなぞるカバーやアレンジとは別物である。)

だらけの構成になっており、バース1からサンプリングが始まっています。

『他人の評価はそれこそ時代次第』

楽曲はウワサの真相 featuring F.O.Hからでリリックを書かれたのは宇多丸 (fromRHYMESTER)さん。

時代によって自身の楽曲への他人の評価は変わってしまうものなので気にしない方がいいといった意図で使用させて頂きました。このRemixに関しては原曲のYOSHIさんも、

ストリートもメジャーもネットライマーも性別もスタイルも年齢も関係もしがらみも無い、ただただ「韻好き」が遊ぶだけ

とおっしゃっているのでこの記事を読んでいてやりたくなった方は是非。

いよいよ、本題です。

結論から言いますが、バース2は数多くの韻の固い楽曲名とパンチラインのサンプリングで構成されています。

まず、バース2の冒頭。

『言いたいことぶちまけたし、
検索単語フェスティバルに』

というのは気になった方は検索してみてください!という意図だったのですが、身内の1人だけが全て正解するという結果になりました(笑

なので、検索しなくてもいいように1つづつご紹介します(本末転倒

『基本は全てB-BOYイズム

日本語ラップファンにとっては定番中の定番のクラシック、RHYMESTERより『B-BOYイズム』ですね。必ず脚韻(詩歌の句末を、同音にそろえること。句末の押韻(おういん)。)で押韻を揃えている上に、日本語の文章としても破綻しておらず、メッセージ性に溢れていますね。

次に、

『韻が前提で思考するに気づく
そしてニヤつく
こんなに熱くcoolに押韻でガンガン勝負する』

この上記の部分はHIPHOP番組「フリースタイルダンジョン」でのFORK vs 魅RIンの試合の中で

「ここで踏みましたみたいなフロウ止めろ 下品だ ビートに乗せるだけでいいんだ 気付かせるんじゃねぇ リスナーが自ら気付く そういう感性 俺達が築くんだよ 本物のライムは耳に焼きつく 後で気が付く そしてニヤつく

という流れがありまして、サンプリングさせて頂きました。

『気づく』と『ニヤつく』のくだりとその後のリリックですね。脚韻で押韻している上で自身のスタイルと哲学の提示、韻文化は自身で築いていくという姿勢はもちろんですが、問題はその後です。『本物のライムは~』のくだりはリスナーが自らこの面白さに気づいてこその面白さだという明示。この記事のように解説や説明するのは野暮であり、ヘッズはそんなことしなくても分かるはずだという確信が感じ取れます。

ここからは一気にネタばらしを。

『①ワンマンショウ
気にしているのは無名、②有名のせい
とにかく③愛し愛せ 謙虚に遠慮しない④Hip Hop Gentlemen
ルールじゃねぇし マナーは⑤韻守運転
このremixシリーズで⑥揃い踏み
ソロにつきそろそろ飽きてきたか
その発想ごと⑦蟲喰いデバッガー
挙げろ固いライマーって看板
流行だけとは対角線にある大作戦⑧ 珍道作戦
この⑨ガッとしてグー!な⑩リップサービス 限界と思⑪うな
ギブらん度
過ぎてるスキル・テクニックにまずがっつく⑫tokyo gasmask
とりま、色んな曲を聴こう
これ以上は⑬踏もうな議論

①、④、⑤、⑥、⑦、⑧、⑨、⑫、⑬はそのまま曲名ですね。これらは全てそのまま検索にかけていただければ引っ掛かると思います。⑩は原曲をされている餓鬼レンジャーの皆さんの名盤のタイトルで、今でも聴いているので入れさせて頂きました。そして、それ以外の②、③、⑪には歌詞表示ではなく耳を頼りにして聴いた場合気づくことの出来る空耳要素になります。

②有名のせい? → 『夢のせい』by LITTLE(from KICKTHECANCREW)

③愛し愛せ → 『I SING, I SAY』by LITTLE(from KICKTHECANCREW)

⑪うなギブらん度 → 『鰻brand』by boon (MCぬるぽ)

知らなかった音源があれば是非、歌詞と共に聴いてみてください。韻が固い名曲揃いです。

そして、上記のバース2の

『ルールじゃねぇし マナーは(韻守運転)』

のくだりですが、こちらもフリースタイルダンジョンでのNAIKA MC vs FORKでのバトル(←リンク先はライターであるPto6さんのMCバトル書き起こし記事です)での、

【FORK】
ようNAIKA
お前に足りねえのはライムだ
それを教えに来た
FORKレペゼンICEBAHN
これはルールじゃねえ
HIPHOPマナーだ

からのサンプリングでした。上記の書き起こし記事を見て頂けるとわかるのですが、熱い試合でした。押韻ファンにとっても、押韻の哲学やその愛が溢れておりとても素晴らしかったので使用させて頂きました。

そんなFORKさんですが、楽曲の方からもリリックをサンプリングしています。

『流行だけとは対角線にある大作戦』

上記の部分のリリックはFORKさんの所属するICE BAHNのアルバム『STARTREC』にある『クラウチングロケット』のFORKさんのリリック、

ひっぱりダコの神戸ナペイが大袈裟ではなくぴったりだろ開幕戦だからか今苦戦とは対角線にある大作戦に 援護ですとエンドレスにペン乗せる午前のベストテンのケツの言語テクを聞きなオス & メス

が元ネタでした。

以上、サンプリングネタまとめでした。

・・・ですが、この記事の最後を飾るリリックの解説はバース1から。

偉大なパイセンは宣言
ラッパーでなくライマーと
  
趣味と言えばだいぶ楽
なのに度が過ぎたライフワークBig up!』

この宣言をした偉大なパイセンが、

誕生日を迎えました!今年でソロデビュー21年目、キックだともっと。ラップをしてきたというよりライムをしてきたと思ってます。なので肩書きをラッパーでは無くライマーにします。何も変わらないかもですが、覚悟みたいなものです。今年いろいろ頑張るので応援お願いします。

LITTLEさんです。これからも韻を愛し続ける覚悟、姿勢そのものが格好良いと思ったのでバース1の最後に入れさせて頂きました。

どうでしたでしょうか?

聴いたことのない曲名や聞いたことのないラインがあればこの記事自体が『検索単語フェスティバル』のお手伝いになっていれば幸いです。

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