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【毎週ショートショートnote】 忍者ラブレター

 シンガーソングライターとして、詩織はメジャーデビューし、ある程度の知名度を得た。

「次回タイアップするドラマのテーマが初恋だそうで、その曲を書いて下さい」
「はぁ。」

 マネージャーからのラインを閉じて、詩織は自室で初恋…と思い出しながら、ポロポロとアコギを弾く。
 思い出されるのは、中学生の頃だった。誰にも言えず、本人にも言えず、忍ぶ恋だった。
 思い出しながら一音ずつ弾く。


近くにいたあなた 書かなかったラブレター
知らなくていい このままでいい
キンモクセイの香りの度に あなたを思い出すよ
キンモクセイがあなたの香り



 歌穂は社会人になってファミレスで残業をしていた。
 ひたすらPCと戦う。
 ファミレスの有線から、ふと聞き覚えのある歌声が聞こえた。
 中学の頃の友人の詩織の声だ。
 新曲を作ったのだろう。
 あの頃は毎日登下校を一緒にして今の季節は金木犀の香りが鮮やかだった。
 アコギのシンプルな伴奏に添うような静かな声。

(金木犀は誰と嗅いだ香りなのかな)



 偲ぶ恋は、届かないラブレター。

(440字)



※毎週ショートショートnoteさんに参加させて戴いています。

【毎週ショートショートnote】『ショートショート書いてみませんか?』お題発表!10/22|たらはかに(田原にか) @tarahakani #note https://note.com/tarahakani/n/n88e599aca708


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