ちせ

今日も書くよ。描くよ書くよ。

ちせ

今日も書くよ。描くよ書くよ。

最近の記事

それでも地球は曲がっている【毎週ショートショートnote】

 ヨコハマのオフィス街を環奈は颯爽と歩く。  関内にある支社に赤坂から出張でやってきた。赤坂の高層ビルから電車に乗り、関内の碁盤の目のような人工的な通りを抜けて、少し古ぼけた小さなビルに入る。 「最近、横浜支社の業績が悪いから視察に行ってきてくれ」  上司の命で横浜まで来てみれば、年季の入ったビルに所々掃除も行き届かずホコリやゴミが溜まっている。  目に留まる隅にたまった砂埃、薄汚れてホコリが付いた壁。 “お母さん、かんなおそうじしてきれいになったの!” “べつにそんなところ

    • 人生は洗濯の連続!【毎週ショートショートnote】

       僕は今日も手を洗う。  考えてみろ。  男は排泄をする時には必ず触れなくてはならないものがある。  座る時も立つ時もだ。  そして、僕以外のそいつらは、手を水で流しただけで外に去っていく。  その手が世の中のありとあらゆる、そう、あれもそれもこれもどこもかしこも触れていく。  その上から恐る恐る触れようとしてみれば、指先にその汚れが付くのが見える。  おぞましい泡立つような寒気が背筋を通り、そして、ありとあらゆる汚れは僕の体の隅から隅までその汚れで僕を覆いつくす。  家に帰

      • 【王ステ二次創作】The Lady dreams in the Dream.2

         夕暮れを過ぎて夜になれば、ハイゲイト墓場に滅多に人が訪れることはない。来るとしたら、墓守、墓荒らし、度胸試しに来る町の若者。そして、彷徨う亡霊くらいだ。  新月の月明かりもない夜はすぐに暗闇に包まれた。それでも夜になってすぐは呑み歩く者も多く、ヴラドとヴィンツェルは結局軽い夕食(といってもおぞましい人の臓物や血液だが)を済ませてから目的のかの噂のある墓地へと向かった。  ヴラドはシルクハットに分厚い霧除けのコートを羽織り銀製の鴉の飾りのついた黒い杖を持っている。ヴィンツェ

        • レトルト三角関係【毎週ショートショートnote】

           カレーもいい。ハンバーグか。いや、それともスパゲッティ…。 「はやく決めて」  お母さんが言うけど私は頭の中でひたすら悩んでる。 「冷凍庫溶けちゃうでしょ」 「ねぇ、ちょっと」 「聞いてるの!?」  うるさいなぁ。休みの日の昼ご飯くらい適当に悩ませて。 「もう、決めてから開けて!」  バコッ!という音とともに冷凍庫を閉められた。  朝は遅かったけど、中学生の私にはご飯が足りない。  昨日の深夜にやってたアニメを見逃し再生しながら何も言わずにいると、お母さんはやっ

          戦国時代の自動操縦【note毎週ショートショート】

           朝焼けが街を焼き尽くす炎のようにかつては新宿だった廃墟を照らしていく。オゾン層が壊滅した地球の表面は暑い。ジリジリと焼けるような日光はヒト型兵器・アマテラスの表面に強い紫外線を当てる。  某国の売り込みとして、新宿を壊滅させるためにアマテラスがやって来たのは昨日だった。  今の戦争は博覧会だ。  新しい武器ができました。  このくらい虐殺できます。  壊滅できます。  おいくら出しますか?  その値段が死んでいった人の命の値段であり、アマテラスの値段だった。  その値段は

          戦国時代の自動操縦【note毎週ショートショート】

          【毎週ショートショートnote】 忍者ラブレター

           シンガーソングライターとして、詩織はメジャーデビューし、ある程度の知名度を得た。 「次回タイアップするドラマのテーマが初恋だそうで、その曲を書いて下さい」 「はぁ。」  マネージャーからのラインを閉じて、詩織は自室で初恋…と思い出しながら、ポロポロとアコギを弾く。  思い出されるのは、中学生の頃だった。誰にも言えず、本人にも言えず、忍ぶ恋だった。  思い出しながら一音ずつ弾く。 近くにいたあなた 書かなかったラブレター 知らなくていい このままでいい キンモクセイの香

          【毎週ショートショートnote】 忍者ラブレター

          数学ダージリン【毎週ショートショートnote】

           ポツポツと浮かぶ泡のようにポストが上がる。職場で休憩中の香織はスマホの画面を消す。  推しができた。いつの間にか新しい付き合いが始まっている。  香織は人付き合いが苦手だった。社会人になってから随分と言われた。  「あんまり残業しないでよね。仕事押し付けてるみたいじゃない」  「裏で言われてるよ。上手く仲立ちしなよ。辞めちゃうよ」  何度も何度も陰で噂され、表で無視され、怒鳴られ、睨まれ、できないやつだと言われ続けた。  香織は帰りの電車が嫌いだった。  新人の頃を思い出す

          数学ダージリン【毎週ショートショートnote】

          ビューティフル・マインドを観て。

           映画「ビューティフル・マインド」を観ました。  いや、見てなかったんかいというほどの名作ですが見ていませんでした。  結果号泣でした。  この気持ちを上手くまとめられませんが、旦那さんは最終的にはノーベル賞とる程の天才なんですけれども、統合失調症なんですね。  で、通院されたのが結婚後奥さん妊娠中というタイミング…。しかも精神病棟入院かぁ…。きっつー…。  子育て中に夫の薬の管理と赤ちゃんのお世話。働けない夫の代わりに働いていることが「今日は3時間残業だからママに預けるわ

          ビューティフル・マインドを観て。

          【王ステ二次創作】The Lady dreams in the Dream.1

           お話のはじまり  時は19世紀末、英国ロンドン。ヴラドとヴィンツェルはロンドン内に居を構え、活発な市民運動で坩堝のように様相を変えていく市街地の様子がよく見えるアパルトマンに住み、市民に呈した姿で、だが市民よりやや裕福な程度の家具等を揃えて多少の商いをしながら永い歴史の変遷を観測してきた。  小国といえども、一国の王子であり王であったマリアタに市民に扮させる等とヴィンツェルが許すはずもないが、主人直々に「老いない貴族が社交界に跋扈してみろ。獣ののような諸侯貴族に格好の餌食

          【王ステ二次創作】The Lady dreams in the Dream.1

          +17

          王ステ_FA まとめ

          王ステ_FA まとめ

          +8

          駅(ポスターとそれを撮る人を見て声をかけた駅員の話。)

          ※ヨリ重ポスターについての創作の短編です。 関係者様やENG関連についてのイメージを壊したくない方は閲覧を注意してください。 ポスターについてマイナスな表現が出てきますが、私の感想ではありません。あくまでも、小劇場のファンでも何でもない一般人の駅員・澤さんの感想です。(私は全員が主人公だからあのポスターであると思っています) 亜音さんと佐藤修幸さんには僭越ながらお名前を使わせていただくご了承を戴きました。亜音さんのぶさん、大変お忙しいところ、ありがとうございます。🙇💦🌕 ツイ

          駅(ポスターとそれを撮る人を見て声をかけた駅員の話。)

          王ステ 黎明の王 考察1

          黎明の王、千秋楽まで駆け抜けられたこと、演者スタッフの皆々様、おめでとうございます! 心より楽しませていただきました。☺️✨ マリアタが献血を求めた際には「え?本気で言ってる?シュレッダーしてたのに?☺️人を人とも思わない串刺し公はいずこへ?」と思いましたが、裏の意図があるのかないのか、今のところまだよくわからんなぁと思っています。 あの時だけ都合良く言ったのか、誠心誠意殺したくないと思ったのか。でも今まで殺してきたよね?都合いいなぁ。という思いです。なにか道中あったの

          王ステ 黎明の王 考察1

          舞台 異説・狂人日記 感想ネタバレあり

          受容と拒絶両方見ました。 私は主人公が闇堕ちしていくのは大好物なので圧倒的受容〜🥹💕でした。 エロチシズムと狂気の曖昧と骨を食べるという愛情なのかただのカルバニズムなのか。というところもなかなかオツなものがありました。 骨を食べるという表現に一番に思い出したのはたそがれ清兵衛の悪役の爺さんでした。 成敗に向かった清兵衛に「まぁ、すわれや」と言って、骨壷から何かを取り出しボリボリと食べる爺さん。それまでの生活から娘が死んだこと等々切々と話すのですが、生きていた頃の娘の話をしな

          舞台 異説・狂人日記 感想ネタバレあり

          ねじれた魔法を解く方法 14

           救急搬送されたのち、ダイチの父親は何度も心肺蘇生をされて、そして亡くなった。  ダイチは事情聴取を受けて、私も事情聴取を受けた。サキちゃんは、話すのが苦手だから、ほぼ筆談で通してたけど、施設の樋口さんていう職員さんが一緒に受けることでサキちゃんの思いをより伝えてくれた。  正当防衛には過剰だし、過去の出来事を含めても大人は我が子を殺しかけても罪に問われないのに子どもは大人になって親に仕返ししたら殺人になるんだって。  私はユキの話をずっとしてた。  ユキがどんな仕打ちをされ

          ねじれた魔法を解く方法 14

          ねじれた魔法を解く方法 13

           「はあ…心理のテスト…」  ぽかん、と私は不思議そうに首を傾げた。 「あなたの中には女性の交代人格が居ると伺っています。幼少期の虐待のトラウマから発生しているものの可能性も配慮して、事件当時に判断能力や計画性があったものかを調べます。」  淡々と白衣を着た女医が説明する。 「はぁ…」 「北原さん、今までの病歴は?」 「特にありません。」 「北原さん、これまで精神科への受診は?」 「いや、不便を感じてこなかったのでありません」 「トイレ等間違えたことは?」 「ありません。体の

          ねじれた魔法を解く方法 13

          ねじれた魔法を解く方法 12

           私はダイチが好きだった。  私は歪な存在だったし、本当はいない子だけど、それでもダイチは私を必要としてくれた。  時々中古の安いカメラで鏡越しに私を撮ってくれる。  ダイチの眼は片方二重で、日によって変わる。くせっ毛が酷くて、ダイチはシャンプーなんて気にしないけど、私はできればちゃんとトリートメントまでしたかった。  ダイチを好きな自分に自信が欲しかった。  子どもたちに優しいダイチが好き。  他の女の人に優しくするダイチが好き。  クソオヤジに全然似てないダイチが好き。

          ねじれた魔法を解く方法 12