アズロの伝説
(連載の準備編として)
やったのがほどほどの勉強だったから、ほどほどの中学に受かった。俺はそこでアズロに出会った。
メチャクチャなやつだった、といっても一年のころは比較的真面目だったのだが、二年からグレ始め、三年の時点ではあの学校の暗黒時代として振り返られるべきものとして総括されるような状態だった。
汚点の中心に常にアズロがいて、俺はそのそばにいた。俺たちが炎とガソリンのように反応し続けたことがアズロの悪しき素行に拍車をかけたと思う。
有象無象を巻き込んで少年窃盗団とでもいうべきものになったし、裏ビデオの密売も手がけたし、バイクを盗みもした。およそ思いつく限りの悪事をアズロは、公平にいえば俺もやった。
あの中学での三年間で何を学んだか。当たりさわりなくいえば、英語の基礎を叩き込まれたことがよかった、おかげで貴重なバックパッカー体験ができた、などと挙げるが、それ以上に物事のスケール感を身体で覚えたのではないかと思う。やってはいけないことは大抵の人間はやらない。それを俺たちはやった。それだけ幅が出た。よく言えばそういうことだ。当然、悪く言えば社会のクズだと断じられる。
いまアズロが生きているかはわからない。外国へ行ってマリファナ漬けになったのは知っているが、フェイスブックで一度見かけたきり、消息を知らない。
俺の手元にアズロの日記がある。あいつがパソコンを覚えた頃に綴っていた、個人サイトに書かれていた日記だ。フロッピーディスク一枚に収まる程度のものだが、このテキストを元に、アズロの話をしようと思う。
アズロの目線で、アズロの考えで、というようにあいつに近づいた形で書きたい。俺はゴーストライターとしてあいつに憑依しよう。
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