プール
派実垣貴明は近所の市民プールに行った。
50メートルプールの遊泳ゾーンに行くとちょうど真ん中辺りでシンクロナイズドスイミングの様なことをやっている60代くらいの男性がいた。
自己流のシンクロナイズドスイミングなのか分からないがゆったりとした動きをしてクルクルと水中で旋回しながら腕を水上に出して水上に出した腕や手もくりくりと回す様な動きをさせていた。
派実垣はその男性に注意を払いながら50メートルプールで500メートル程泳いで休憩しようとプールサイドに上がった。
プールサイドの別室として暖かい室温の部屋が在りそこで休んでいると先ほどのシンクロナイズド老人が上がってプールサイドから出て行った。
出ていくときに一礼してからシャワー室へと消えて行った。
頭髪の形がラスタマンの様だなと思った。
派実垣はもしや。
と思いプールから出た。
急いで着替えて外に出るとロビーの休憩スペースでラスタマンと思しき老人がお汁粉の缶ジュースを飲んで座っていた。
派実垣もジュースを買い飲みながらラスタを見張った。
ラスタが外に出たので少し間を置いて派実垣も外に出た。
プールから出るとラスタマンの老人は山の方へと向かった。
見失わない様に後をつけていく。
老人は畑の間の細い道に入るとどんどん山の中へ入って行った。
人通りが少なくあまり距離を詰めると老人に尾行を感づかれると思ったのでかなり距離を離して派実垣も山道に入った。
集落と集落を繋ぐ山道の様で殆ど人通りは無かった。
老人はしばらくいくと道のない林に入って行った。
派実垣は自分の予感が現実のものとなる気配を感じて急いで老人の後を追って林に入った。
道無き道を林の中を大分歩いて行くと少し開けたところが有り老人が立っていた。
目の前には何かの植物が林が開けたところいっぱいに群生していた。
派実垣はバレない様にしゃがんで老人の動向を伺った。
老人は群生した植物に何か施して行った。
そしてその作業がひと段落すると群生した植物の脇に建てられた屋根のあるコテージの様なところに行って逆さまに括って乾燥させられた先ほどの植物を下ろすと作業台の上で何かの作業をした。
花弁の様なものを積んでいる様だった。
乾燥した花を摘むとビニール袋に詰め出した。
かなりの量がありそうだった。
パンパンに袋詰めにされた花を持ってこちらに向かってこようとしていたので派実垣は静かにしゃがみながら移動して老人にバレない様にその植物の群生地帯にとどまった。
老人は元来た道を帰って行った。
しばらくしてから派実垣は群生している植物に近づいた。
花の匂いを嗅いでみた。
派実垣はその畑に一礼すると元来た道を戻った。
それからたまにプールに行くとそのラスタマンがシンクロナイズドスイミングをしているのに度々出くわした。