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中計なんていらない
変化の激しい時代、変化がすぐに知れてしまう時代
コロナが蔓延したことで、産業が停滞し、モノの価格、燃料資源の上昇、それに伴う物流の停滞が起こりインフレが起こっている。
そのコロナが収束しないうちに、ロシアとウクライナの戦争が起きたことで、人々の心に暗い影を落としている。
日経平均株価は今日も大幅続落。何とも嫌な気分だ
「空けない夜はない」「やまない雨はない」とは言うが、どうにも為す術がないという感じで世界中が弱ってきている
「ピンチはチャンス」逆境を絶好の機会ととらえ乗り越えるべきと言いたいところだが、なんか厭世気分がはびこっている
気候変動による災害の多発、疫病の流行、戦争やテロなど、取り巻く環境を著しく変化させる要因が盛りだくさんで、どう対応するのが正解なのかわかりづらくなっている。
本当は、昔からそれほど変わっていないのかもしれないが、SNSなどを含め与えられる情報量が増え、いやがおうにも知れてしまう状況が、そう思わせているのかも知れない。「知らぬが花」ということもあるだろう。
近未来の予測はやるだけ無駄
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とはいえ、予想を変動させる要因が増えたことで、中期計画をつくることが難しくなっている。計画をつくっても、それを達成させない事象がいくつも出てくる。コロナだったり戦争だったりSDGsの対応だったり、何か想定外のことが次から次に現実化する
そうなると、つくった計画はどんどん修正しなければならない。
想定外の問題の起きる時間軸が極めて速くなってしまったことで、相対的に中期予測の意味が小さくなっている。
それでも、経営企画部は、一年中、その修正に大わらわすることになる。特に上場企業のように外に計画を発表している場合は、「このまま計画通りに進むのか?」などの問い合わせが増えるため、修正せざるを得ない。四半期に一度の開示があるため、経営企画の仕事は計画の策定と修正に集中することになる
もちろん、3か年計画などの中期計画は、自社の現状を分析し、その延長線上に達成するであろう業績をスケジュール化することであり、予想と実績をウォッチするにはありがたい存在だ。時間をかけてつくり、何かあればすぐに修正される計画は、きわめて企業の今を表している
だからと言って、その計画を信じる人は少ない。アナリストだって、すぐに修正されることがデフォの計画を信用する気にはなれない。企業の経営企画部門の対応力は評価できても、計画そのものの信憑性は薄い。
そうなると、現実問題としては、アナリストとしても、自分のつくる予想を検証する上での比較材料として使うくらいだろう。
ぶっちゃけ、(小売業のような)現状の連続線上に業績がついてくるタイプの事業以外、中期計画なんて必要あるのかとさえ思う。
Picture of the future
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企業の足元を照らすための、短期的な計画は重要だ。会社を潰さないため、社員を守るために必要だ。しかし、中期計画は必要なのか?少なくとも外部に発表する必要はないのではないか?発表すると、その是非について評価されるし、何か環境が変われば、修正して発表しなければならない。労力をそこにかけるより、違うところに使う方が効率が良い。特にマンパワーが豊富でない中堅中小企業の場合はそう思う。
3年後の業績予想や戦略を説明するよりも、自身が属する世界が、この先どうなると信じているのか?その世界でどういう立ち位置でありたいのかを発信する方が、総体としての企業価値を判断しやすいのではないだろうか
長期ビジョンとして、10年後に、こういう企業でありたいというメッセージを発信している企業はたまに見ることができる。ただ、その前提となる10年後の世界がどうなっているのかという客観的なメッセージ
たとえば、デジタル化社会の到来によるスマート社会が具体的にどういう世界になっているかなど、コロナや戦争などによって変わることのない普遍的な未来の姿を発信してくれる企業は少ない
企業が想定する未来感に共感できないと、企業が発信する長期ビジョンにも共感できないし、それを元につくられた計画も信頼できない。
ステークホルダー資本主義の時代
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昨今、短期的な株主の利益を重視するという株主資本主義から、株主だけでなく、従業員、顧客、取引業者などのステークホルダー(利害関係者)すべての利益を重視するというステークホルダー資本主義に世界の潮流が変わってきた。
この違いは、時間軸の問題だと考えている。利回りで考える株主にとって時間は大切な資源である。だから企業がどの程度の業績になるかを教えてくれる中期計画があれば、検討材料の一つにはなるので嬉しい
しかし、株主のニーズにあわせ、短期的な利益を大きくすることが、その他の利害関係の利益を損なうことも多い。短期の利益を大きく見せるために、長期的な先行投資をやめざるを得なくなるなんてことは、しょっちゅうあることだ
短期の株主の利益はその他の利害関係者の利益がトレードオフの関係にある場合が多い。短期の売買で利益を求める株主のために、従業員、顧客、取引業者、ひいては社会の利益を損なう必要があるのだろうか?
渋沢栄一は「論語と算盤」の中で、出世や金儲け一辺倒になりがちな資本主義の世の中を、論語に裏打ちされた商業道徳で律し、公や他者を優先することで、豊かな社会を築くことを提唱した
また、近江商人は、「買い手よし、売り手よし、世間よし」の「三方よし」をモットーにしていた。
ステークホルダー資本主義は、日本人の源流にある考え方だと思う。
そういう意味で、10年単位で、今後の世の中がどういう世の中になるかを考え、その世の中でどういう立ち位置につくかということを深く考えた、ビジョナリーな経営を模索することこそ、すべての利害関係者の利益に貢献するし、企業の健全な価値を創造しやすいのではないかと考える