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~今、マイルールをつくるとき。ティルダ・スウィントンの魅力~

ルールを守っていればいいという時代は完全に終わった、と思っている。世間のルールに隠れた無意味な悪循環にのみ込まれる前に、すべきことは何か。それは今日という日がもたらしてくれた時間の中で、本当に素直な自分の心が感じたルールに従うこと。けれど、そんなマイルールと供に自信を持って生きるのは、かなりハードルが高い。でも、試すなら今でしょ、とも思うこの頃。そこで今回は、長く憧れ続けたけれど一歩も近づけなかった女優、ティルダ・スウィントンに迫ってみる。

まず引っ張りだしたのは、大事にしまっておいたファッション画像。飾りが何ひとつない紺地の衣服に、モナリザくらいの微笑みをこちらに向けている短髪のティルダ。どこから探っていいのか途方に暮れた後、随分と前に観た『オルランド』(ヴァージニア・ウルフ原作1992)の記憶にやっとたどり着いた。その頃猛勉強中だったファッション史の一環で観たのだ。

今回いろいろな作品を観なおしてみると、初期の『カラヴァッジオ』(デレク・ジャーマン監督1986)にしても、最近の『フレンチ・ディスパッチ』(ウェス・アンダーソン監督2020)にしても、同じ監督の同じチームでの作品が多いことに気づく。

大好きな監督ジム・ジャームッシュとも組んでいて、予算が集まるまで何年でも温めようとティルダに励まされながら作ったという『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ』(2013)は、ロマンチックなヴァンパイア映画の傑作だ。

自身を見出してもらったデレク監督との芸術性だけにとどまらず、『オルランド』の適役“両性具有”だけにとどまらず、濃いチームを広げていく。“映画が家で、スタッフは対話をする家族”と称し、“私にあるのは、キャリアではなく人生です”と言ってのける。

小学生時、「ユーモアを解する心」と題した国語の教科書の文章が、どうしてもわからなかった記憶を今でも時々思い出す私。改めてユーモアの意味を引いてみると、「知的な寛容」とある。人間社会の矛盾に対する最大の対処法だ。愛ある知恵が根本にある。ティルダが持つとびっきり自由なルールの鍵とは、ユーモアを解して繋がる仲間と彼女のルールだった。もうすぐ春。ちょっと大胆でもマイルールを信じて仲間に呼びかけよう。


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鈴木 郁子(Ikuko Suzuki)
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