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編集なし。自分の眼で脚で口で。トットちゃんの好奇心の先

 「上手くできなくてもいい。でも、心の底からやりたいと思った事は気のすむまで続けよう」とは、常に私が思っていること。いや、そう考えて生きてきた訳ではないが、振り返ってみるとそんな風に思う。“心の底からやりたいこと”に正面から向き合えているのか。続けていくうちに起こる数々の問題を解決すること自体がやりたいことなのだ、と思えるのか。

 34回目となるこの女優コラム。日本の女優第一号が、川上貞奴(1871~1946)。そしてテレビ女優第一号が、今回の女優・黒柳徹子さん。
テレビ放送開始日(1953年2月1日)からずっとテレビに出続けているとんでもない人だ。舞台での演技を観たことのない方(残念ながら私もだ)には、司会者なのかもしれない。
それもそのはず、現在も続いている長寿番組の司会を受けた時に、テレビ女優は辞めている。視聴者に役の色のついていないトークを届けたいとの思いからだ。その時テレビ局と「絶対に編集しない」契約を交わしているというから、業界を知り尽くし筋が通っている。

 オペラ歌手を目指し音大の声楽科を卒業。文学座の研究所に通ったり、NYで演劇を学んだりして、2018年まで舞台は続け、近年は、朗読劇に出演している。
誰もが知る愛称、トットちゃん。その好奇心あふれる姿は、多くの著書で知られているが、今回集めた本の中に『トットちゃんの15つぶのだいず』(2023年 原案・黒柳徹子)という絵本がある。大好きな家族との食事も、トモエ学園でのお弁当も、戦争が始まって無くなり、ついには1日の食べ物が炒った大豆15粒だけ。封筒にいれて持ち歩き、いつ食べようかと考えながら1日を過ごし、帰った時に“家が焼けてなくて家族が生きている!”と喜びながら生き抜く話。発行が昨年だということが、なんとも気になる。
個性的なヘアスタイルや派手な衣装、独特の語り口。ユニセフでの姿が派手すぎると、否定的な当時の意見を耳にしたこともあるが、一貫した強い気持ちがあったのだと、今なら思える。世界の本当の姿を、編集無しで自分とテレビを使って伝えたい、との活動なのだ。飢餓、紛争、病気から子供たちを救おうと幾度危険な目に遭遇しても、親善大使トットちゃんは、今日も語りをやめない。

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鈴木 郁子(Ikuko Suzuki)
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