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そうだ。電車で帰ろう

 住まいは三河の高浜市にあり、教師として勤めていたのは知多半島。勤務地と自宅をつなぐ道路は「衣浦(湾)」を冠する大橋と海底トンネルの二本だけである。鉄道は大府や名古屋を経由する必要があるから電車通勤は不可能だった。まあ、渋滞を覚悟すれば車通勤でも問題はなかった。5Kmだったり9kmを歩いて通勤したこともあった。しかし、通勤距離が10kmを超えれば歩いたり走ったりすることは難しい。一番問題だったのは飲み会である。妻に送迎を頼むか、タクシーを利用して定年までたどり着いた。定年してからも飲み仲間の多くは知多半島に住んでいるから名古屋での飲み会は問題ないけれども半田市辺りの飲み会は歩くか妻の送迎以外に方法はない。年をとると歩くのが辛くなり、名古屋まで出かけるのも億劫になる。コロナの流行もあって、一人の友人とオンライン飲み会を始めた。これが実に調子がいいので、他の仲間に広げようとするがオンラインには抵抗があるらしく同意が得られない。
 コロナも幾らか落ち着き、昨日は太田川駅で大学時代の悪友と飲み会をした。最近健康状態がいいので名鉄住吉町駅まで8kmを歩いて名鉄河和線で合流した。楽しく飲んだ後、アイデアが生まれた。
「金山駅経由で帰ろう。」
週2日、ICT支援員の仕事で名鉄三河線とJRを使って大府の中学校まで通っている。大府市と名古屋市は隣接していて金山駅が近く感じられるようになった。快速に乗れば金山駅から名鉄に乗り換える刈谷駅まであっという間である。妻に2,30分かけて迎えに来てもらわずに済むと考えた。
 妻にメールしたら怒ってしまった。私の個人的なわがままである飲み会の送迎など迷惑に違いないと思ったが、そうではなかった。美味しい食事を作り、玄関で送り迎えをしてくれるのは私が気持ちよく働けるようにとの思いからであり、決して迷惑ではない。飲み会の送迎も同じらしい。どうやら私の8kmのウォーキングと帰りの電車は彼女の仕事を奪ったことに等しいらしい。
「8km歩けてよかったね。」
出かける時、途中でエラくなったら、そこから車で送ってくれるよう頼んで出発した。体力が衰えてきているので完歩する自信がなかった。
「まだまだ、彼女の仕事を奪う機会がありそうで、・・・」
これは嬉しいことだ。


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