3秒ルール

　歳をとると食べる量は減るけれども、それでも、料理人である妻は足りないよりは少し余るぐらいを心がけている。朝食はいつものようにライ麦パンを焼いて食べようとしたが目の前のタッパに入った昨日の昼食、焼きそばの残りを見つけた。
「焼きそば食べたいから、君、パン食べない？」
ライ麦パンは妻のところに行き、私は焼きそばを食べた。
　起きたらすぐ食べたいので食事をしてから洗顔に行く。台所に帰ってからの会話が面白い。
「あっ、こんな所に焼きそば。」
長さ1cm程の焼きそばを床から拾い上げた時の妻の一言。
「食べちゃ、ダメ」
「さすがに食べないでしょ。」
「いいえ。あなたはわかりません。」
妻が磨き上げた床が綺麗だった。
　彼女が疑いの目を向けるのも無理はない。私が食事中テーブルの上に落とし物をした時、構わず拾い上げて口に運ぶ。膝の上に落ちた時も、そして、時に床に落ちても拾い上げて口にすることもある。ただし、落として3秒を経過したものは拾わない。
　これを3秒ルールと言う。歳をとって3秒ルールを適用する回数が増えた。