実録ICT支援員「冬休み自由研究-テストの実施・採点方法について」
最近、テスト採点でコンピュータを使った取り組みが注目を集めている。テスト処理が新しい時代に突入した。無料のアプリもあるが、多くのアプリは最近流行りのサブスクリプションで1年間の使用料金が10万円以上する。採用した学校もある。ICT支援員として次の3つの「採点を楽にしてくれるアプリ」を使った。
「採点ナビ」
「デジ楽」
「Answer Box Creator Z」
共通する基本的な手順
イメージスキャナーで問題用紙と模範解答を画像データとして読み込む。
解答欄を設定する。(どこに解答が書いてあるかをコンピュータに教える)
問題の配点及び観点別配点を設定する。
生徒名簿を登録する。
(紙のテストを実施し、解答用紙を回収する。)
生徒の解答用紙をイメージスキャナーでPDFファイルに取り込む。
解答用紙と読み込んだ名簿に違いがないかチェックする。
画面横に正解が表示され、一つの問題ごとに全員の解答を一覧表示する。
教師が問1の①から1問ずつキーボードやマウスを使って◯×△をつける。手とペンで行うより格段に効率的で採点ミスも少ない。
採点終了と同時にExcelなどのファイルに総合得点・観点別得点などのデータがエキスポートできる。グラフ化やSP表・度数分布なども出力可能。
解答用紙に◯×△と得点がデジタル表示されたPDFを全員分、紙に印刷する。
PDFデータに◯×△のついた紙のテストを生徒に返却する。
◯×△のついていない生の答案用紙を一定期間保存した後、シュレッダーにかけ廃棄する。
セキュリティ上の問題で無料のクラウドドライブではなくローカルのハードディスクに保存されているのでPDFデータが膨大になり、削除する必要がある。
「Answer Box Creator Z」はマークシートのように選択肢問題にすれば自動採点ができるだけではなく、記述式でも答の表示が簡単ならば自動採点ができる。しかし、操作手順が難しい。
デジタルデータで答案用紙が出来上がっているのに、わざわざ紙媒体に印刷して返却するのは無駄である。やがて、ネットを介してデジタルデータとして生徒と保護者に送るようになる。この辺り、現在のアプリは過渡期だと言える。また、生徒に紙媒体で問題を与えるのではなくデジタルデータとして与えれば、一問ずつ採点せずにCSVデータで簡単に処理できる。
とにかく、学校の学習面における事務的処理のIT化が進んでいる。ペーパーレスでエコであることと併せ、このようなシステムが一般化すれば先生の仕事は軽減されるからデジタル化の方向は間違っていない。デジタル化の波が定着するまで、色んなアプリを使いこなさなければならない。このストレスはコンピュータに興味のない先生には大きな負担となる。そして、学校の本質である児童生徒を指導する目的から考えると直接関係がないことも忘れてはいけない。
私は学校の本質とは直接関わりのないICT支援員なので、現在の状況で紙を使わないテストの実施と採点方法について考えてみた。
現在でも紙を使わないデジタルテストは実施が可能である。
ロイロノートのアンケートとテスト
Googleフォーム(アンケートとテスト)
しかし、どちらも致命的な欠陥がある。テストの最中、生徒はインターネットで正解を調べることができてしまう。ならば、使用するアプリを特定できればいいのではと考えた。Googleフォームはブラウザ上で動くから、使用できるアプリをブラウザだけに特定してもネットが使えるので意味がない。しかし、ロイロノートは「アクセスガイド」を使って生徒にインターネットを使わせずにテストが実施できる。
「アクセスガイド」の使い方
https://www.ipodwave.com/ipad/howto/access_guide.html
テスト実施手順
生徒機のパスコードを入力する。
「設定」から「アクセスガイド」をオンにする。
アクセスガイド用のパスコードを設定する
ロイロノートを起動する
ホームボタンをトリプルクリック(タップ)する。
アクセスガイドを「開始」する。
(ロイロノートでテストを実施する。)
ホームボタンをトリプルクリック(タップ)する。
アクセスガイド左上に出てくる「終了」をタップする。
アクセスガイド用のパスコードを入力する。
ロイロノートのテスト実施中は別のページに移動できない。ネットを使った不正行為も防げる。テストでは画像データも使える。CSVファイルでエクスポートできるから自動採点ができ、得点も計算できる。
アクセスガイドのパスコード設定を教師が行うのは大変なので、できればヘルプデスクに頼んで遠隔操作で設定して貰えばいい。
問題点
アクセスガイドをONにするトリプルクリックは生徒全員分を教師がやらざる得ない。
テスト終了後のアクセスガイドをOFFにするトリプルクリックは生徒でもできるけれどパスコード入力は教師しかできない。
テストのたびにヘルプデスクが遠隔操作でパスコードを変更もできるかもしれないが、放課中に電源が切れていたりすれば設定はできない。
一日3時間テストなら、充電の少ないタブレットはテスト中に電源が切れてしまう可能性がある。
パスコードが機能しなくなる可能性は否定できない。
生徒がアクセスガイドの設定に触れる可能性も否定できない。
可能性はあるけれども、問題点が多くて実施には不安がつきまとい現実的ではない。しかし、発想を変えれば現実的な取り組みもできる。昨年の2学期、7名の情緒障害児中学3年のクラスでロイロノートでテストを実施した。その時、インターネットのテスト中の使用を許可した。ネットを使って調べられることも「情報に関する技術」学習の一環だからと考えたからである。テスト時間を短くしたのでネットで調べれば時間が足りなくなる。テストとして十分機能した。たった7名のクラスなので3学期はアクセスガイドをONにして試してみる。
紙を使わないデジタルテストの実施と採点は近い将来に迫っている。これが冬休みの自由研究の結論である。
アクセスガイドのパスコードを忘れた場合
https://sp7pc.com/apple/ios/36291
iPadで利用させないアプリをブラックリスト化するのは「スクリーンタイム」。これは保護者が子供の利用を制限する場合に使う。
https://www.docomo.ne.jp/ipad/support/service/limit/