suicaでスマートEX
旅行に熱意のない私が息子を何度も北海道に連れて訪れたのは職場の若い同僚達に誘われてスキーに行ったからである。そのころの北海道の印象が強かったらしく、息子は北海道の大学を選んだ。あるいは、教師である両親の厳しい躾を嫌ったのかもしれない。我々夫婦にとって、それはそれで嬉しいことであった。一人息子が北海道に住んでいたおかげで、何度も飛行機で往復した。大学時代を大いに楽しんだようだが、流石に北海道の冬の厳しさに耐えきれず、就職は東京を選んだ。どうやら、未だに両親の住む町の近くには興味がなく、結婚も子育ても東京で行っている。
彼が東京に就職して以来、自宅と東京を何度も行き来するようになって18年になる。我々のような高齢者に車で東京まで行く選択肢はないから、新幹線を利用してきた。息子が就職する3年ほど前に「suica」が登場していたけれども、名古屋ではまだ「toica」の声を聞いたことがなかった。息子が就職して、彼の住む会社の寮を見に行った時、彼から「suica」を渡された。その息子から渡されたカードは、今どこに行ったか見当たらない。まあ、手元になくともウオレットやアップル・ウォッチに登録してあるから困ることはない。
やがて東京に行く回数が増えてきて、新幹線予約がスマホでできる「スマートEX」を利用するようになった。登録の段階で苦労したが、何より名古屋駅でスマートEXから新幹線のチケットを取り出すのに苦労した。あの時、パスワード入力を何度も失敗して辛うじてチケットを手に入れた時の喜びが忘れられない。
孫に会うためにスマートEXを使う機会が1年ぶりにやってきた。日にちと時刻を調べて、スマートEXで予約を入れた。少し緊張したが無事に成功した。この時、ふと思い出した。
「数年前からsuicaで改札が通過できるようになったはず。」
妻は18年前に渡されたsuicaをなくして、今は「toica」を使っている。私のsuicaと妻のtoicaをスマートEXに登録しようとしたが、クレジットカードの期限切れで設定を変更してから、登録をしなおした。この登録作業は緊張したこともあって、ずいぶん手間取った。それでも無事に登録が完了してホッとした。
妻に報告のついでに、一つお願いをした。
「suicaでうまく通過できないかもしれないから、名古屋駅に早めに着く電車で行こう。」
「全然、OKよ。」
それでも、年寄りには名古屋駅で緊張が待っている。
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