洗脳で同棲
恋人とは付き合って2年ほどで、去年の末に私たちは同棲を始めた。今のところ仲良くやっているし、ふたりで暮らす生活がようやく馴染んできた。
今でこそ、一緒に生活するようになったのだが、ここまで来るには(かなり)大きな壁があった。
たしか、あれは付き合いたての頃だったと思う。その時、私は社会人一年目で右も左も前も後ろも分からず、ほとんど毎日のように泣いて帰ってきていた。そんな彼は大学院2年で、ちょうど就活をしている頃だった。お互いに自分の目の前のことで頭がいっぱいで、余裕がない中、彼の就職先が無事に決まった。前々から、その会社は配属がおそらく関東になるということは聞かされており、当時は地方にいたので遠距離になるな、と一瞬暗い気持ちになった。だけど、新幹線で通えば問題ない、とその時は軽く考えていた。
そして事件は起こる。なんのはずみだったか、今となってはもう忘れてしまったが、彼が「俺は遠距離は無理だと思う。」と言い出したのである。しかし、彼のことが大好きだった私は、(仕事もめちゃくちゃ嫌だったので)じゃあついていく、と息巻いたのだ。そんな、私に「一緒に住むとか考えられない。俺は、自分の(好きなことをできる)時間のほうがまだ大事だ」と、クリティカルな一撃を言ってのけたのだ。
私は頭が真っ暗になって、その言葉を何度も反芻した。たしかに、付き合って1年も経っていなかったが、遠距離が無理で、ついていくのもダメで、というのはあまりにも残酷で、じゃあどうすりゃいいんだ、と毎日泣いては別れまでのカウントダウンに怯えていた。
だけど、ここで諦めずに立ち向かっていくのが私。自分の思いをつらつらと述べた激長メンヘラインを送り付け、どうにか遠距離でも関係を続けていくことを約束した。
(まあ、そんな努力も虚しく、彼は就職を蹴って進学することになったというのは、また別の話なのですが。)
ここでやっと、表題の回収です。そんなひとりの人生を謳歌している彼を、どう口説き落として一緒に住んでいるかって?
A. 簡単です。洗脳するだけです。
それから、私はことあるごとに「一緒に暮らしたい」やら「もう(自分の)おうちに帰りたくない」やら「(彼の家)ここが大好き」と言い続けてきた。ご飯を振る舞ったりして、甲斐甲斐しいオンナをアピールしたこともある。そんな毎日の小さな洗脳の積み重ねで、晴れて私は同棲生活を手に入れたのだ。彼をその気にさせるには、具体的な生活のイメージを持たせることと、そしてコツコツと継続的に洗脳することが重要。
以上、同棲導入の指南でした。(着地点がわからない)