『らしさ』の呪縛〜乃木坂46が苦しんだ呪い

 乃木坂46というグループは、結成から5~7年近く、「乃木坂らしさとは?」という命題を与えられてきたグループである。

 メンバー自身が「乃木坂らしさとは何か」に考え、悩んだだけではなく、ファンもまた「乃木坂らしさ」論争のようなものが必ず存在した。

「AKBの公式ライバル」という初期のコンセプトから脱却しないことには始まらない。その答えは、プロデューサーの秋元康氏でもなく、今野氏でもなく、メンバーとヲタの共同作業で見つけ出していくものであったともいえるだろう。

 しかし、結成して10年……1期も2期も半数以上が卒業した今になっても、「乃木坂らしさ」の答えは出ていない。それでありながら、しかし、なんとなく、ファンは「ああ、乃木坂らしいなぁ」と感じるエピソードがあるというのが、なんとも面白い。

白石麻衣の『はふーん』、生田絵梨花の深夜バスのテンション、齋藤飛鳥と山下美月のかけあい、ひたすら貯金箱の中身を確認していく樋口とまあやのショールームに乱入するかずみんと真夏……メンバー同士の関係性の中に流れる統一感は、言葉にすることは難しいが、確かに「乃木坂らしい」のだ。

私は思う。

おそらく「乃木坂らしさ」を考えているのが「乃木坂らしさ」なのだと。

外仕事で結果を出し他のメンバーに還元していくのも、ライブ前に先輩が後輩にアドバイスをするのも、落ち込んでいる子を、やみくもに気遣うのではなく、自分との関係性や相手のメンタルなどを考えて、最適な距離感を模索しながら声をかけるのも、「乃木坂ってどういうグループなのか」ということを俯瞰して考える視点がないと出せないものだと思う。

一人一人が乃木坂のメンバーという自覚とプライドを持ち、自分の行動、言動が仲間やファンにどういう影響を与えるのか、またその発言の責任は自分でとれるのか……そんなことを、自然に考えているように私は思っている。

そりゃスキャンダルもあるだろう。だが、そういうときに、スキャンダルを起こしたメンバーを誹謗中傷から守ろうとする姿勢、またそのことを心に刻み、反省から立ち直るメンバーも、客観的にみた「乃木坂」を意識しているのである。

乃木坂はルックスがよくて、上品なお嬢様集団……なんて、見せかけの印象ではない。OGを含め、自分たちの振る舞いが「乃木坂らしさ」につながる。だからこそ、西野七瀬がバーのママを演じても、堀未央奈が不倫大好き妻を演じても、乃木坂のイメージに泥を塗るのではなく、「本物を目指して努力し可能性を広げていく」乃木坂らしさを補強するものになるのだ。

今、いろいろな問題で、迷走をしているグループが散見されるが、私には、「自分のグループを俯瞰してみる」意識がないメンバーやファンが事態を悪化、拡散させてしまっているように思えるのである。

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