乃木坂5期の未来
これまで、ここnoteでも、あるいは他のメディアでも、乃木坂の世代交代論のような駄文を書き続けてきていて、異論はあろうとも、このグループが世代交代に成功した、それも大成功した稀有なグループであり、自分はその瞬間を見届けられた幸せ者であると思っている。
しかしながら、5期生の存在というのは、その世代交代の象徴であると同時に、十数年積み上げてきた乃木坂のイメージをぶち壊す存在なのではないかと、今回の超乃木坂スター誕生LIVEと、昨日の番組を見て感じた。
Scrap&Buildというのは、秋元康氏がAKBの曲にもしていたりするが、基本的にはビジネス用語である。
古くなった機械を新しい機械に変えて生産性を上げたり、採算が取れない部門を閉鎖して、新しいビジネスチャンスをつかむため、企業では当たり前のことでもある。
ただ、芸能においては、その継続性というのも大きな魅力であり、小手先の再生というものは反発も大きい。特にアイドルグループはメンバーの入れ替えを頻繁に行えば行うほど、どこか安っぽさというか、懐古厨と言われるものの反発が大きな障害になってしまうものである。
そんな中、乃木坂の運営が選んだものは、質的変化、先輩メンバーの遺産を相続し、維持するだけでなく、それを使って、新しい付加価値をつけるというものであった。
乃木坂の5期は、そのオーディション段階で、ある程度の完成度、あるいはポテンシャルの高い子を選んでいる。これまでのオーディションにあった将来性を期待して獲得する育成枠選手的な存在がいないのだ。
さらに、初期にはシングル発売前やライブ前にしかなかった(?)ボイトレも、恒常的に行われているようだ。
ただでさえ、ポテンシャルの高いメンバーに十分なレッスンをさせる。
これは、かつてのアイドルや今のK-POPに通じるもので、秋元アイドルの常識であった「成長の過程を見せる」=「素人がプロらしくなるのを見守る」というスタイルを踏み破っているといえるだろう。
では、成長の過程を追うというコンセプトは死んだのか? と言われれば、その答えはスタ誕ライブと番組で応えて見せたように、充分、生きているのである。
変わったのは、グループに参加する時点で、なんらかのポテンシャルがあり、伸びしろもある程度までは保証されているような子を厳選しているという点である。
これも、以前触れた気がするが、30点の子が80点を取れるようになれば、誰からもその成長を認められるが、90点の子が95点を取る努力というのはわかりづらい。
運営が、あえて後者である選択をしたのは、これまで培ってきた経験と成功によって、乃木坂のファンの多くは、その95点を取る努力や成果を認められるだけの力をつけてきたと判断したからだろう。
だが、これは諸刃の剣でもある。
例えば、6期において、素材型のメンバーが入ってきた時、その子は選抜に上がれる可能性は限りなく低くならざるを得ないのだ。
私の主観ではあるが、乃木坂において、素材型の典型例は二人いて、一人が生駒里奈、もう一人が齋藤飛鳥である。
生駒は、ダンスはそこそこできたが、歌は下手だったし、ルックスも洗練されないままセンターで英才教育(そしてバッシングのスケープゴート)を受けながら、気が付くと精神的にもスキル的にもプロの表現者になり、グループを引っ張る象徴になっていた。
齋藤飛鳥は初期から長くアンダーを経験し、もっとも乃木坂らしい乃木坂といわれながら、長い年月をかけて大黒柱になっていった。
今後の乃木坂の課題というか、方向性として、こういった「素材型」の子を入れるかどうか、そして入るなら、どう育成していくかというのがある。
個人的には、即戦力化は時代の流れだし、運営の選択として決して間違いはないと思っているが、どこか、こういう素材型のスターが出てくることを待望してもいる。矛盾だね(苦笑)。