小論文講座Ⅱ

連投しますが、こちらは比較的真面目な……というか、大学入学や就職のときの提出論文に即して解説していきます。
といっても、やはりテクニカルな説明は私より上手な人がたくさんいますので、基本的な心構えとして、頭の片隅に入れてくれたら楽になるかなぁ? みたいな感覚で気楽に読んでください。

とりあえず、小論文というのは、前回書いたように「論」なわけです。
自分の考えを、不特定多数の相手に伝えるように書く文章ですね。
まず、この大原則だけは頭にいれておいてください。

人間の行動というのは、非常に論理的にできています。
勉強ができるとか、年齢が上とかいうのとは関係なくね。
思い出してください。
スーパーでほしいお菓子があったとします。
1~2歳なら、欲しいといえば買ってもらえたことも多いでしょうが、3~4歳になると、「今日はダメ」ということもありますよね。
そのときどうするか?

①「欲しいの、欲しいのー」と連呼したり強く主張する
②その場にしゃがみこんで「欲しいー」と泣く
③「お手伝いするからー」と交換条件を出す。

これ、実は非常に論理的な手段なんです。
まず、①は連呼をする、あるいは大声を出すことで相手(親かな)を威嚇するわけですね。
②になると、「欲しいものを買ってくれないと困らせるぞ」という脅迫手段になるわけです。
③になると、交換条件をだして交渉しようとするわけですね。
幼稚園児でさえ、無意識に「どうしたら欲しいものが手に入るのか?」ということを論理的に考えるわけです。
小学生になると、もっと上手になります。

④「クラスのみんなは持っているよ」
⑤「それがないと友達に馬鹿にされるんだ」

というふうに、社会性だとか、人間関係にこじつけて説得してくるようになりますよね?

こういう論理的思考というのは、ですから、ほとんどの人が、生まれたときから持っている思考なのだと私は思います。

親相手に「自分の希望を通す」ことから、不特定多数に「自分の考えに賛同してもらう」ことというのは、つきつめれば同じです。
私はよく、中学生に「お小遣いを1000円値上げしてもらうためのお願い文を書きなさい」という課題を出すのですが、本当にユニークで、ときに切実な文章を書いてくる子がいます。
また、中には、最初は勢いよく書き始めるのに、途中で「1000円もいらないなぁ」なんて言い出す子もいます。

この「1000円いらない」という子は、面倒くさいからというのではなく、自分の生活環境や交友関係を考えて、値上げする必要がないという判断を下した子なんですね。
ふだん、いわば本能的に「お小遣いちょうだい」という子も、論理的思考で使い道を考えたら、必要がなかったという結論に達した。
つまり、「小論文を書く」ということ、いや、自分の感情を文章化することによって、自分の感情をコントロールすることができるようになる。
これができない子が「なんかムカつく」「なんかイライラしてたから」と問題行動を起こすわけで(ときには大人の犯罪者もそうですよね)、自分の感情や思考と向き合う機会、あるいは練習として、それを文章化する癖をつけておくと、あらゆる点で、コミュニケーション力もあがり、人生の成功率も高くなっていくわけです。

ただ、こんなこと言ってますけど、正直昨今の日本を見ていると、こういう論理的思考や、物事を解決するための提言がすごく減っているのが不安です。
マスコミの記事や政治家の答弁なども、インパクト重視でミスリードを誘い、論破という言葉が流行したように、目先の勝ち負けだけにこだわる文章が平気で公の場所で流されている。
先日話題になった「石丸構文」だとか「ごはん論法」なんてのは、論理的思考を感情的扇動が多い潰すようなもので、大学が小論文を重視するようになってきたのは、そういう精神的な劣化を食い止めたいというものかもしれませんね。

おっと、話がずれてきたのでこのへんで。

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