真夏の小論文講座
さて、先ほどの読書感想文と並行して、小論文についても概要だけ書いておきますね。
並行して……といいましたが、読書感想文と小論文とは、まったく違ったものになります。
何が違うのか?
まあ、いろいろな違いはありますが、読書感想文を読んで批評してくるのは、ほとんどの場合、学校の先生かクラスメート、親兄弟といった顔見知りです。(賞とか取るなら別ですが)
つまり、書き手のことも知っており、何を書こうとも受け入れようとしてくれていると考えていい。
しかし、小論文は、最初から不特定多数の読者を納得させる必要があるんですよ。そのための文章だといっていい。
「私はこう思うんだ」といっても、「私」のことを知りませんから興味もわかないわけです。
大学入試の場合、小論文のほかに、志望動機や自己PR文なども提出するわけですが、それだって心構えとしては小論文。つまり、不特定多数の知らない人が読んで納得、少なくとも好意的な印象を持たないといけないわけですね。
ま、授業のときはそちらも詳しくやっていくのですが、今回は概論的に小論文についての心構えを説明します。
小論文ですから、論が必要です。
課題は様々なのですが、先日、どこかの医大で出されていた問題が面白かったので、それを例に挙げていきましょう。
「3年間つきあっている恋人に別れの手紙をかきなさい」
「恋もしづらい受験生に出す問題か?」「今時3年も付き合ってるカップルなんかないよ」とか、騒いだところで問題は逃げませんから、無理にでも書かなければいけないですね(笑)。
さて、この問題、もちろんふざけているわけではありません。あなたならどう書き始めますか?
私はこう考えます。
「3年間という長い間交際していた相手への手紙であること」
「憎しみあって別れるのではなく、別れを納得させること」
こうなると、最終的な目標は「恨まれないこと」「恨みを軽減させること」に気を使わなければなりません。
少し話が変わりますが、昨今、男女は別れが下手になりました(オイw)
逆恨み、ストーカー、慰謝料請求、リベンジポルノと過激化する人もいれば、ラインのIDを消して、ブロックしておしまいというケースもありますね。恋愛の価値観というものが、多様化したとも言えますが、私から見ると、随分刹那的で自己中になったなぁという印象です。
今回の問題は、そういう意味では、すごく前時代的なものなのですが、違う角度から見れば、他人(相手)の気持ちを想像して思いやりを表現することが求められているのでしょう。
この問題が、医学部の入学試験ということは、言いづらいことを告げる(例えば余命とかね)ケースも想定しているのかもしれません。
まず、書き始める前にこういうことを想定します。
そして、実際に相手はいなくても、相手(別れ話を切りだす相手のキャラクター)を設定しないといけないですね。
次に、自分がふられるとしたら、どういうフラれ方をすれば納得できるか、あるいは憎悪が募るかを脳内でシミュレーションします。
相手がイメージできたところで、「別れる理由」を考えるわけです。
この続きは長くなるので端折りますが、私の場合、「この失恋が双方にとってプラスに感じられる落としどころはどこだろう?」という部分を考えるのが、この問題における望ましい解答と考えます。
整理しますよ。
「別れの手紙を書きなさい」→「別れをポジティブに納得させなさい」→「それを相手に伝えなさい」の三段階で考えるわけです。
模擬試験的にこの問題を出すと、まあ半数は自己保身…私は悪くないんだけど…という及び腰の解答か、さもなければ「私のことを大事にしないあなたが悪い」という糾弾めいた文章になってしまう人が多いんですね。
というわけで、今回は一例をあげて解説しましたが、小論文っていうのは、こういう形で、自分の考え、信条的なもの、あるいは論理的な組み立てを見るものとなります。
その具体的な方法に関しては、また次回。
なお、別のログでも申し上げましたが、この夏、小論文対策の授業をさせていただきますので、興味がある方、特に難関校(慶應SFCとか医学部とか)を狙っている方は問い合わせなどしてみてください。