【楽曲解説】彗星軌道の終着点【太鼓の達人楽曲公募2022

今年の公募楽曲が全て出揃いましたね〜〜〜〜ということで前々からやってみたかった楽曲解説をしてみようと思います!

どんなコンセプトで構成や音作りをしたか?音ゲー楽曲としてどんなアプローチをしたか?みたいな解説や小話をつらつらと備忘録のように書き連ねていくので興味のある方は是非ご覧下さい。

「同じ星空の下で」という曲について

今回の楽曲「彗星軌道の終着点」の解説にあたって、去年の楽曲公募で僕が出した「同じ星空の下で」という作品について少し触れておきましょう

聴いてね↓

当時の自分の曲の中で一皮剥けたどころか明らかにバカほど突出した完成度であり、ここ1年間の曲作りでこれを超える(クオリティや満足感)物が無かったなぁというのが実情で、公募楽曲の構想にあたりコレ超える曲が書けるんか?という心配にしばらく悩んでました(まぁ作ってみればちゃんと最高傑作が出来たので成長してるなと安心した)

曲の組み立て方として、
ギターとベースとドラムの基本的なバンドサウンド+装飾としてのオーケストラやチップチューン+飛び道具的な時計音やリバース音などのfx類
といった作り方をしてて、キャッチーなメロディと展開多めのドラムで彩るのが定石かなと思ってます

楽曲構成

イントロ
→挨拶ガバキック地帯
→最初の盛り上がり(以下Aメロ)
→3拍子地帯(以下Bメロ)
→2ビート地帯(以下Cメロ)
→サビ前ガバキック地帯
→サビ
→ブレイクダウン
→落ちサビ
→エンディング

去年のやつ(同じ星空の下で)がかなり歌モノの構成に近く、展開がキャッチーで分かりやすかったのに対し今年はサビに至るまでに色んな曲調を用意し、メドレーみたいに繋げる構築方法を採りました。
キャッチーさは損なわれる反面、思いがけない展開を組む事ができるのでこの1年間の研鑽を余すとこなく発揮できたかなと思ってます。(個人的にはBメロからCメロへの移り変わりが好き)

イントロ

2020の公募におけるcapchiiさんの「YOAKE」の採用コメントから見るに、イントロでどれだけリスナーを惹きつけられるかは音楽面で重要な要素であり、言い換えれば「冒頭数秒でこの曲の世界観をいかにリスナーに提示できるか」という問いになり、太鼓チームもそれを重要視してるように思えます。

ただどのように提示するかという部分に正解はなく、耳を傾けたくなるサウンドであることが前提として「楽曲全体を俯瞰した際にイントロがきちんと役目を持って構築されているか」が重要だと自分の中では考えています。
ただ考えなしにリフやリバースシンバルを鳴らしてないか?気を衒って複雑なセッションを展開し、後の展開と整合性が取れてはないか?と言った風に、「楽曲の入り口」として機能してるようなパートであることに気をつけて製作しています。

実際の曲での例を見ると、ピアノとグロッケン、途中からローファイなリズム隊とストリングス、アタックの遅い8bitの音色を使ってのセッションになってます。今回のイントロの役割として「曲の世界観への招待」をコンセプトとして作っています。(きちんと招待できてたらいいなぁ)ちなみにもう一つコンセプトがあるけどこれは次のセクションにて。

挨拶ガバキック

音ゲー楽曲は尺が短い(2分弱)ことを考えるとイントロで世界観を提示した後に曲のエッセンスを凝縮した短いパート(ギターリフだったりベースドロップだったり)が置かれる事が結構あります。SDVXの「666」とかイントロが終わった後に強烈なガバキックを置いてますが、あれとかいい例なんじゃないかと思います。
僕はこのような意図を持って置かれたパートを「挨拶パート」と呼んでいて、去年の楽曲でもピアノを軸とした挨拶パートを置いた後にAメロを展開していました。

というわけで僕もガバキックを置いてみました(????)
ネタやウケを狙って配置したわけではなく、イントロから流れ込んだ際のインパクトや譜面のレベルデザインみたいな所を色々考えてガバキックを鳴らしてます。

ところで、ここのメロディどっかで聴き覚えはないですか?

………………お察しの通り、イントロの最初のピアノリフがそのままメロディになっています。一度提示したモチーフを繰り返し曲中で使う技法を「ライトモチーフ」と呼び、クラシックではよく使われてるらしいです。それを踏まえた上でイントロを聴いてみると「ライトモチーフの提示」というもう一つの役割が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

レベルデザイン的な話をすると、BPM260の24分音符って単色(ドンだけ、カッだけ)で置かれたらなかなか苦戦しそうだよなという思惑があって配置してます。
生ドラム音源だと24分の連符を置くとどうしても音像が汚くなるので(実際にbfd3のキックをたくさん配置してあまりの汚さに泣いた)ガバキックみたいなEDM分野からエッセンスを引っ張ってこないとこの辺のデザインが上手くいかないわけで。難しいね。

Aメロ

そもそも太鼓の達人の難関曲はBPM280〜300越えが多く、意外と260とかその辺で難関曲ってなると無いんじゃないかな〜というのがあるんですよね(BPM250未満で難関みたいな曲とかは32分を多用し実質BPM倍だろみたいなモノが多かったりする)のでこの辺のBPM帯で難関曲を作りたいな〜というのが今回の曲作りの原点だったりします。

Aメロは使ってる楽器的に一番サビに近いボルテージを持っており、難易度的にもサビより低く、道中よりは高いという風にデザインしています。
前半後半でドラムのメロディへの絡ませ方を変えてますが、この作り方によって前半はシンコペーションや付点音符の強調、後半は楽曲のノリ重視でコントラストを付けています。ドラムがどれだけメロディをなぞるか調整するだけで同じフレーズでも雰囲気の違いを出せるのでおススメです(もう片方の曲でもこの技法を使ってます)

Bメロ

一旦休憩地帯が欲しい頃合いなので、ワルツ調のセクションを作ってみました。ちなみに僕のサンクラの曲の中でこのパートの元になった箇所があります。気になった人は探してみてね。
後半では打って変わって重心重めのギターサウンドで畳み掛けてます。12分→16分の流れでドラムもシンクロさせつつ前半の締めとして構築しています。(個人的に3拍子の1小節を2つ割にした後付点16分音符を入れる箇所が好き)
音楽的に見たらこのパートの後半分は楽曲中唯一のマイナー調(Fminor)なのでリズム隊と合わさって一つのアクセントになってると思います。

Cメロ

先ほどの展開でFminorの空気になっているのでその流れを引き継ぎながら次のセクションに流れ込みます。
2つ打ちのリズムにする事で3拍子からゆったりと4拍子に戻す準備をし、サビへ向けて元の調(Gmajor)に戻る展開を構築します。
直近のパートがギターを全面に出していたので、その対比としてピアノの旋律(とグロッケンのキャラ付け)で落ち着いた雰囲気を展開しています。コード進行の間隔が直前パートよりも広くとってあるのでゆったりした流れが醸成されます。

↓以下思想的な話↓

ピアノを使うと一口に言っても、フレーズの主旋律をなぞるだけのピアノ、細かい飾りを施すためのピアノ、飛び道具(リバースやエコー)としてのピアノ、または実際のピアノ奏者のように左手と右手で音楽を奏でるピアノ、など様々な用途があるわけですが、僕は右手左手共に作り込まれたピアノとその他のピアノの2つに大別して考えています。
更にその2つでは編曲に対する考え方も違い、

前者…ピアノのフレーズ(というより音楽)を柱として、ドラムやその他楽器はピアノの音楽に纏わせるモノ。当然ミックスではピアノの質感を殺さないように設計する
後者…ピアノと他の楽器は全て対等な存在であり、どの楽器が主張しすぎてもいけない

という風に考えています。その結果前者はピアノの演奏が主軸となるのでピアノの魅せるフレーズの雰囲気(クラシカルだったりバラード調だったり)がそのセクションの柱になり、それを元に他の楽器をフレージングして雰囲気作りをするといった風な作り方になるわけです。既に形成された雰囲気に合うようにドラムやその他の楽器をフレージングします。

ようはピアノが先か後かって話ですね。

長い話になってしまったけど前者の感じでここは編曲してます。

このセクションの後半ではメインキーに戻るために一瞬だけGminorに上方転調をし、リズム感の変化のために裏拍キメを入れてたりしてます。この4小節のためだけに用意したファミコン風の音色はリリースをどんくらいにするかの調整に数時間くらい費やしました。頑張った〜〜〜〜

その後、ガバキック地帯以来のライトモチーフが登場し4小節続きます。ここはブレイクっぽい役目を与えていますがドラムパートで不規則なリズムを打つ事でここまで慣れてきた2ビートの感覚を洗い流して次のパートを迎える役目を果たします。

サビ前ガバキック

直前のライトモチーフから導かれるようにイントロのガバキック地帯をリフレインさせます。どんどん細かくなるガバキック→フィルターかけたドラムで盛り上げの構成は冒頭と同じですが、サビへと綺麗に繋ぐために4/4の鋳型に当てはめてリフレージング(この言葉で合ってるんかな?)してます。サビ前にクールダウンも置きたかったので8bitのメロディも追加で置いています。(この構成は割と前作でも似た事してた)

サビ

前作と同じようにエモフレーズを展開して盛り上げます。今回はメロディはスクエアの音色1本に統一してみました。(この展開からのサビならメロディの掛け合いよりこっちの方が芯が通るかなと思って)
ここで置いたコード進行は最近使い始めたものですが、

I→VI/IV→V/III→VI

いわゆるJPOPによくある王道進行(4536)の頭を一度にしたverです。一度始まりによってコード頭の爽快感と力強さを付加したまま切なさを演出できる最高のコード進行だと思います。
この進行をサビに使った好きなバンドの名曲があるので貼っておきます。

↓聴いてね

このようなキャッチーでエモいメロディはまず自分で歌ってみて気持ちいいメロディを用意し、それを楽曲に当てはめた上で16分を加えたりビブラートさせたりとかしてるので、割と歌モノのメロディに近いかな〜と思ってます。ただ歌モノと違って同じ音階を連続では鳴らせないので(細かい装飾で並べるとかは除いて)コレがまあまあ制約にもなったりします。なのでメロディ構築は編曲より下手したら時間が掛かる場合もあります(特にメロディ以外を先に考えてしまった場合)

ブレイクダウン

地味にピアノとシンセベルのフレーズがライトモチーフになってます。
激動の展開から導かれたサビが終わって小休憩……といったパートですが、星空を眺める時の吸い込まれるような静寂をここで表現してみました。16分のシンセベルアルペジオは流れ星。

譜面のレベルデザイン的にもサビの後は休憩があった方がいいよねという事で数小節ほどリズム隊を無しにしてます。

サウンドデザイン面で言えば全パートかなり高音に寄せて作っており曲中で一番重心が高いゾーンかなと思います。

ここのセクションは最初8小節、次の4小節、ピアノソロの3つに大別できますが、徐々に盛り上がる構成にする事で大サビへの期待感を膨らませます。真ん中のセクションのスネアが12分→16分→20分になるとこは個人的に天才だな〜〜〜〜と自負してます。

落ちサビ

サビのフレーズをサビ前で使った8bit音源で奏でて、6分キメ→ドラム連打といった構成です。要はサビの前半を崩して作りました。
キメからのドラム連打で譜面的にもメリハリがつくように構成してます。Aメロパートでドラムの付け方でノリを変えよう!みたいな事を言ってましたがここはその応用編みたいな感じで手数を盛り込みつつメロディに沿うようにしてエンディングに流れ込むお膳立てをします。

ハイハット4つ打ちから導かれるサビ後半はビート感とコード進行を変えてエンディングに向けてボルテージを高めています。ドラムがスラッシュビートで忙しい分その他の楽器は全音符で埋めています。このパートは個人的にめっちゃ気に入ってます。

サビ最後は4小節のひとかたまりを2回繰り返してます。これは上に貼った動画の曲から着想を得ています。合間合間にギターの細かいフレーズを挟む事でアクセントにしています。

エンディング前の一小節はメロディと飛び道具的なピアノ(ディレイとリバース)とクリック音のみで構成し、一瞬のブレイクを形成しました。こういうとこにクリック音みたいな生活音を入れるとギャップがあってハッとなりますね。
このように激しいパート→激しいパートと連続する際は一瞬ブレイクを挟むと聴き飽きずに繋げられるかなと思ってます。

エンディング

イントロ同様に曲の中でも重要なパートですが、どのような役割を持たせるかも千差万別になります。今回は落ちサビで盛り上がるだけ盛り上げたのでその勢いのまま突っ走ろうという選択を取りました。
ストリングスでライトモチーフを繰り返してその他楽器で色付けをしています。ドラムは前半2ビート、後半は長いフィルという風に作り譜面的にも最後の難関となるように仕立てました。
コードはIVを保ったまま最後まで走り抜けます。前回はIのままエンディングを作りましたが今回はIVにしたことで曲終わりの印象も変わったのではないかな〜と思ってます。

おわりに

総じて太鼓の達人の難関楽曲あたりを目指して制作しましたが、割といい感じのものができたかな〜と思ってます。去年に比べても音ゲー的な面白さが増幅した曲を書けたので満足してます。採用されて欲しいなぁ。

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