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大晦日

 父方の祖父母の命日は正確には覚えていない。母方の祖母の葬儀はしっかり記憶しているので、命日もその日が近付くと思い出していた。  

母方の祖父は母が幼い頃に亡くなっている。終戦前だったのだと思う。伯母や母に聞かされても、何年前のことなのかは全く覚える事はなかったが、その日だけは忘れる事ができなかった。

 大晦日は母方の祖父の命日。
祖母からも伯母からも、祖父が大酒飲みであったこと、酒に溺れ亡くなったことは何度も聞かされていたので、大晦日に亡くなったということは、残された家族にとってとても衝撃が大きかったのだと思う。
 曽祖父母がその頃存命だったのかは、詳しく聞かされていないが、既に跡取りの祖父に村の紺屋を任せ、戦前から隣町に出ていた娘夫婦と暮らしていたと聞いている。
女所帯の世帯主となった祖母は幼い子を抱え、身内が近くにいるとはいえ、雇い人も抱え大変な想いをしてきたのだろうと思う。
 その頃の祖母の年齢に自分がなり、あらためて祖母の強さを感じる。
反面酒に溺れたと言い伝えられている、祖父にも会って見たかったとも思う。