【感想】「アンリアルライフ」で僕は泣いた
こんにちは、なるぼぼです。
Steamはスプリングセールが開幕、いよいよ春らしくなってきました。
僕は先日からアドベンチャー熱が高すぎるのでアドベンチャーだけ購入。
その一つ、「アンリアルライフ」をクリアしたのですが…。
いや、ホントに泣けるゲームだった。
予想を超えていいゲームだったので、感想をつらつらと書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。
1.オールドライクで、懐かしい謎解き
さて、まずは本作のシステムから。
本作はアドベンチャーの中でも、2010年代のフリーゲームに近い、フィールドのものをうまく使った謎解きが組まれています。
面白いのが、「キオク」を用いて進んでいく謎解き。
主人公であるハルは、物の「キオク」を見ることができます。
この記憶を覗くことで「そこに合った過去の瞬間」を見ることができるというのが、攻略に一役買っています。
時間を超えて何が起きたかというワンシーンを見るとともに、それが謎解きのヒントになっていきます。
シンプルなヒントの提供ですが、「モノの過去」という特殊なものを見るという所に幻想感と世界観の補強がなされていて、とてもいいです。
また、そういった「キオク」を使わずとも、謎解きがシンプルにできているのも良い所です。
なんというか、「青鬼」や「Ib」にあったような、懐かしい謎解きの内容だったなと思いました。
シンプルで「ここでこうすればいいんだな」と分かりながらも、それでいてある程度考えなければならないという、面白い作りになっていたと思います。
とはいえ、配置系の謎はやっぱり「色々見ないといけない」というめんどくささがあるので、そこも懐かしいけど不満でしたね…。
まぁ古臭いと言ってしまえばそれまでなのですが、「どこにどれだけ物を入れるか」みたいな、配置タイプの謎はちょっとめんどくさかったです。
2.幻想的で美しい、青の世界
本作を購入する目的と言えば、やっぱり「世界観」でしょう。
それに関しては文句なしの出来だったと思います。
とにかく世界観は青。
青い幻想的な世界は美しいという他なく、非現実的なキャラも相まって不思議な感覚に陥ります。
それだけでなく、195番道路やホテルなど、ちょっと現実的なところも時々入っているので、現実と幻想の絡み合う、絶妙な世界観が構築されています。
特に良かったのが「幻想美術館」。
ストーリーの中盤で訪れるのですが、本当に幻想的な背景で美しく、プレイヤーを魅了します。
入り口が結構オシャレな美術館なのに、壁に月が映っていて、本当に美しいんですよね。
中も星のきらめく夜の空になっていて、本当に綺麗です。
おススメ。
背景以外のビジュアルも良く、キャラドットは動きも相まってコミカルで楽しいです。
特にハルちゃんのお着換え後の姿がめちゃくちゃ良かった。
萌え袖なんですよね。
超絶カワイイ。最高です。
全体を通じて、幻想的かつ青を主体とした綺麗な世界が広がっているので、ビジュアルで惹かれた方はマストバイだと思います。
3.キャラクターの魅力が高すぎる
本作最大の特徴は、キャラクターの魅力でしょう。
本作は個性的なキャラが出つつも、かなりの魅力を残しています。
僕は、最初に出会うのがAI型の信号機…というところから驚きました。
なんとなく幻想的な世界だから、人間みたいなのは出ないだろうと思っていたんですけど、まさか信号機が喋るとは思わないじゃないですか。
しかも凄い丁寧語。
ハルへのサポートも凄く堅実で、凄い良い相棒です。
脇役も魅力的で、お母さんのようにハルに優しく接しながら美味しい食事を用意してくれるマリモの「マリー」、頭をくるくる回しながらも何を考えているかよくわからないホテルの「支配人」、居眠り常習犯でぶっきらぼうながらも色々と面倒を見てくれるペンギン運転手の「カセリ」など、個性的なキャラが集います。
そして、彼らの良い所は、みんながみんな「優しい」ことだと思います。
ハルは、急に異世界に落ちてしまったのか記憶がありません。
そんなハルに対して、みんなとてもやさしく接してくれます。
マリーは優しい言葉と共にご飯をくれるし、カセリも成り行きで助けたとはいえ、様々な便宜を図ってくれます。
他のキャラクターも、様々な理由で主人公と出会い、時にはハルを助けてくれます。
良い人たちしかいないんですよね。
しかし、これだけだったら「ただのいい人たち」なんです。
で、僕も中盤までは「ただのいい人たち」と思っていました。
そして、そこまで印象深いものとも思っていませんでした。
でも、とある理由でカセリと謎のAI「0」と列車に乗って旅に出るところから、雰囲気がガラッと変わります。
列車の旅の中、ハルはカセリに疑問を投げかけます。
「私が先生(ハルが探している人)を追いかけていいのかな?」
カセリはこう返すんです。
「お前が追いたいと思うから追いかけるんだろ?」
「自分にその時できることを、皆探してるだけなんだよ」
…なんて深い言葉なんだ。
ゲームでも聞きなじみのありそうな言葉ですが、こういった言葉がこのゲームから出てくることに、深い感動を覚えていました。
このあとも、こういった感じのセリフが多く出てきます。
ネタバレなのであまり多くは言えないんですけど、「MOTHER2」の最後みたいな雰囲気が終盤は強く漂うので、最後の方はせつない気持ちになりました。
愛のあるキャラに出会いたい人、おススメです。
4.衝撃的かつ、揺さぶり続けるストーリー(ネタバレ注意!)
さて、最後はストーリーのお話。
ネタバレ注意です。
ハルにとっての世界とは何だったのか。
僕は何も知らないまま最後の駅までたどり着きました。
そこで見たのは、散々なことを友達に言われるハルと、それを受け入れられなくて、偽物の先生によって飛び降りをさせられるシーンでした。
ハルの過去は壮絶なものでした。
元々世界が架空じみていたという前提はあるとはいえ、ハルは現実では人前で喋れない病気に苦しみ、それを理解してくれた唯一の友人にも、恋愛関係のごたごたで縁切りされてしまいました。
ここには、中学生ならではの無邪気な悪意と、どうしようもないやるせなさが一緒に混じった、若者ならではの重い苦しみが描かれています。
そして、それらを癒す唯一の要素として、先生の存在がありました。
でも、先生も転勤でハルのもとを去ってしまいます。
ハルは絶望し、先生に「うそつき」と言葉を投げかけ、踏切の中で自殺を図ろうとしました。
その時先生が助けようとしたことで、二人とも幻想の世界の中に閉じ込められたのです。
…とてつもない真実です。
これが終盤で一気に明らかになること、布石はあるとはいえ大部分は理解できないように組み立てられていること、凄かったです。
そして、ハルちゃんを当時支えていた「絵」という存在が幻想の世界の中にも活かされていて、アンズによってそれが全て壊されたことで、彼女自身の「自尊心」が完全に壊されていたことが、ガイコツの前で「絵が描けない…!」と言ったハルの言動から伺えます。
途中でハルが陥る不安定な感情や、全て諦めて逃げてしまえばいいという偽物の先生(死んでしまいたいと思う自分)によって自殺に追い込まれるエンディングなど、そこで「なんとなく」しかわからなかった真実が紐解かれるというのは、何とも残酷で悲しいものでした。
そして、死んでしまいたいと思うほどに残酷な現実と、ハルが戦わなければならないという真実は、とても辛いものだったと思います。
それ以前に、ハルと先生が一緒に生き延びる道というのが難しかったという前提も、ハルにとって悲しいことであったと思います。
先生はハルを生かして自分だけが電車に轢かれればなんとかなる、と自分を犠牲にする式を立てました。
ハルはその式に気づくわけですが、そこから二人を救うために、お別れと生じて奮闘する姿はなんとも感動的です。
特によかったのが「カセリとのお別れ」。
カセリに支えてもらったという感謝もあるんですけど、二人で月を眺めながら、色々な思いをはせるというのが、なんともお別れらしくて泣きそうになりました。
そして、ハルは偽物の先生であった「死んでしまいたい自分」を受け入れることで、世界から脱出します。
死んでしまいたい自分の言っていることは至極真っ当です。
先生ももういなくなる、アンズは自分のことを認めてくれない、他の人には喋れないからバカにされる…。
誰も自分を認めてくれない世界というのは、苦痛の極みになるでしょう。
それでも、受け入れてあげる。
それでも、前を向いて生きていく。
「どうなっても知らない」ともう一人の自分は言い残します。
本当に苦しい現実でも、見捨てないための何かを見つけたから、前を向いて生きていく。
どれだけ難しくても、幻想の世界で旅をした「友達」と心を通い合わせられたから。
そして、犠牲になろうとしていた先生も救う。
自分だけで生きていくなんて無理、という思いもあるんでしょうけど、犠牲になんてさせない、先生に助けてもらったから、という強い思いが、ハルの中にはありました。
そして二人は脱出。
帰路につきます。
演出の強みというのもあったんですけど、あれだけの壮絶な過去を体験しながらも、幻想の世界での出会いや別れを通じて、「自分に必要だったもの」を見つけ出して、前を向いて生きていく、ハルの強さに感動したと思います。
それでいて、それまでずっとハルを支え続けてきた「195」のセリフにも感動を覚えました。
少女の長い旅。
結末のあまりにも美しい終わり方に、涙が出ました。
凄く良いゲームだったと思います。
5.終わりに
いかがでしたでしょうか。
本当に、本当に良いゲームでした。
題材とか雰囲気とか「メモリーガール」に近いなと思っていたんですけど、それ以上にMOTHER2に近い哀愁とお別れ感が本作にはあって、「まだ別れたくない」「いい人たちだった」という気持ちが強くなって泣いてしまったんでしょうね。
本当に傑作だったと思います。
さて、次回は特に考えていません。
一応「Ai:ソムニウムファイル」をおススメされて買ってみたので、機会があれば遊んで、ビビッときたらレビュー書こうと思います。
それではまた次回。
さよなら~。