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【感想?レビュー?】未解決事件は終わらせないといけないから 新たなるノベルゲームの提示

こんにちは、なるぼぼです。

せっかくだし新作ゲームでも眺めてみるか、とSteamの話題の新作をちょろちょろと眺めていたのですが、そこで気になったのが「未解決事件は終わらせないといけないから」というゲーム。
正直あまり聞いたこともなかったゲームで、個人的に掘り出し物になればいいかな、ぐらいのテンションで遊んでみたのですが…。
まぁとんでもないゲームだった。
久しぶりに背筋がゾクゾクするような面白さを感じましたね。
この感覚を味わったゲームって直近だと「OMORI」と「パラノマサイト」ぐらいだったと思うので、ホントにとてつもない掘り出し物を当ててしまったのだと思います。
ということで、簡単にゲームを紹介しようと思います。
一部ネタバレも含むのでご注意ください。
それではいきましょう。


1.未解決事件を追う

本作は、「未解決事件となっている犀華行方不明事件」の真相を、当時解決できなかった警官「清崎 蒼」が追うゲームです。
誰が犀華と最後まで一緒にいたのか?
あの時何があったのか?
犀華は実在しているのか?

(彼女が生きているのだとしたら)犀華は今何をしているのか?
その謎を、過去の重要人物の供述から追っていきます。

本作は、おばあちゃんとなり未解決事件によって人々を苦しませてしまった贖罪を感じている蒼が主人公となっています。
そのため、基本的には彼女が事情聴取した内容をもとにして、物語が進んでいきます。
最初、彼女は事件を簡単にしか覚えていません。
犀華の父、哲郎が「これ以上、あの子を探さないでください」と言ったことだけを覚えていました。
しかし、彼女の目の前に現れた謎の婦警によって、事件の最初と最後を思い出します。
犀華の母が通報してきたこと、状況の確認を母としたこと、犯人である人物が自首してきたこと。
それらを思い出し、そこから徐々に関連する供述に結び付けていくことで、事件が進展していきます。

ここで、シンプルに面白いのが「過去の事件を掘り下げている」というシチュエーション。
「Her Story」も似たような内容ですが、事件を追う中で出てくる情報がどんどん深くなっていくのは面白いです。
「街」や「IMMORTALITY」でも言ったんですけど、ストーリーの起承転結の順番が入れ替えられたりバラバラに配置されているというのは、ゲームでしかできない、ゲームならでは特権になっていると思っています。
本作もそういった点を持っていて、事件の真相がある程度わかったうえで話が進んでいます。
起承転結で言えば、「起」と「結」が判明している状態なんですね。
そこから「承」と「転」に当たる部分を探していくので、「どうなっていくんだろう」「どう辻褄を合わせるんだろう」と疑問が膨らんでいって、最後まで探求心たっぷりで楽しめました。
その点で、「未解決事件」というテーマを用意したことは良かったと思います。

2.最高のワードザッピング

本作の特徴として、特定の言葉から新たな供述を生み出す、「ザッピング」のシステムが採用されている点があります。

本作では、供述の中に時々ハッシュタグが付いた言葉があります。
その言葉をクリックすると、別の供述やロック付きの発言を探し出すことができます。
さらに、その言葉を消費することで新しい供述を見ることができるようになっています。
こうして限られた言葉のリソースを使いながら、別の供述を探していく。
そんな独特な探索方法で、ゲームは進行していきます。
ワードを見つける楽しさもありますが、証言が次々に出てくる忙しさもあって、これだけでも楽しいです。

ただ、これだけではシンプルにザッピング。
このザッピング、シンプルに言えば「街」っぽいとか言えるのですが、本作のもっといい点が「ザッピングした先の対象が、その人の供述とは限らない」という点。
ザッピングした先にある発言がその人のものとは限らないため、口調や事実関係などから、誰がした発言かを整理する必要があります。
この「信用できない語り手」とでも言えるような要素が非常に面白い。
誰がした発言かわからないことで、どの供述でも身構えたり集中するようになるので、発言や事実関係をなぁなぁにできません。
推理ゲームって結構事実関係を覚えていけないといけなくてしんどいという印象が強いんですが、本作はどのタイミングでも誰が喋っているか把握しないといけないので、緊張感や集中力が続き話を理解しやすくなっています。

まだまだ普通のザッピングとの違いは終わりません。
本作は、「いつ供述されたものか」という時間軸も重要になっています。
誰がいつ発言したかで、発話者と時間関係を整理すると、鍵付きの証言を開けるための鍵のもとを入手することができます。
しかも、この鍵付きの発言は真実に近い内容が供述されていることが多く、本作ではこの鍵開けが重要になっています。
なので、「いつ」という時間軸も意識しなければなりません。
そして、その「いつ」を整理するために、情報をTwitterのタイムラインのように配置されたボード上で動かし、適切な位置を割り出していきます。
この探索が非常に面白く、鍵開けというご褒美もあるため、どんどん整理を進めていけます。

しかし、まだこんなもんじゃない。
本作には、時間を合わせて鍵を開ける証言だけでなく、日付を聞いてきたり、根拠となる情報を選択しなければならない鍵も存在し、これまた開けるために証言整理をしていく必要があります。
いやダル~!と思うかもしれませんが、ここで影響してくるのがTwitterみたいなボードの画面構成。
いつでも証言を把握することができるため、証拠を突き出すタイプのゲームよりも情報を確認しやすく、環境サポートが整っています。
もし証言を間違えてもお手付きのデメリットがないため、最悪総当たりで解決できる点も優しさにつながっています。
こうした要素が、お手軽に推理ゲームを楽しめるようになっており、苦手なプレイヤーも安心してゲームにのめり込めます。

3.合わせられたビジュアル

本作を語るうえで地味に重要なのがビジュアル
本作は基本的に文章がメインになっていますが、証言ごとに一枚のイラストが添えられており、それが作品の臨場感を高めてくれています。
しかも、そのドットがかなり細かい。
作品として入り込みやすい仕様だと、推理ゲームは実写にする傾向が強いですが、本作はドット絵を採用しているにもかかわらず、のめり込む感覚が非常に強いです。
一枚絵の写真のような雰囲気や、過去の記憶を追っているような色褪せた演出があることが、作品の後押しにつながっていると思います。

あと、すごいのがBGM。
本作は緊迫感のあるBGMが最初から流れているのですが、ストーリーの進行に応じて音が追加されていく仕様になっています。
これだけ言えばありがちな仕様なのですが、変わるタイミングがポイントポイントで設定されているので、驚きと同時にBGMも切り替わってより臨場感が増します。
また、それも一つ二つといった量ではないので、ストーリーにきれいに合わせられていてよかったと思います。
一曲だけだったのに、ここまで魅せてくれるとは…。
驚きでした。

4.塗り替わっていく真実(ネタバレ注意!)

さて、いよいよストーリーの話。
注目していたのはここで、衝撃を与えてきたのもここでした。

何が凄いかって、最初からわかっているくせして、犯人がだれかわからなくなるという信用を与えないストーリー展開でした。
最初は自首した人が「なんで自首したのか」というところに焦点を合わせていたんですが、段々自首した人ものっぴきならない事情があったこと、「誰かと離婚していた」こと、「娘を失っていたこと」が徐々に明らかになっていきます。
最初は哲郎が母親と離婚していて、金がないから仕送りも送ってこないクソ野郎だと勘違いしていましたが、徐々にその供述が犯人のものだとわかると、「お前マジか…!」と思うとともに、彼がかわいそうに見えてきました。
キャラクターの発言が不明瞭なだけに、キャラクターごとのイメージが一転するようなストーリー構成は見事だと思います。
そういったことが起こるからこそ、作中の発言がことごとく信用できなくなる点も、推理ゲームとして面白いなと思います。

そして、誰がどう喋っているかわからない状況下で、少しずつ犀華が一人じゃないことに気づきつつあり、二つの親子関係があることが見えてきます。
少しずつ察してはいましたが、決め手となる出生届の謎を解いた瞬間、「このゲームとんでもないな」と思いました。
なんとなく「ダブルキャスト」みたいなオチが見えるな…?と思っていましたが、それでもやっぱり驚かされたので、ほんとにすごいと思います。
なんで名前が隠されていたのかも、ここまでくると「そういうことか~!」と納得できました。
宮城家と原島家、双方で悩み続ける親子関係が交錯する、見事なストーリー構成だったと思います。

翔太がいた宮城家は、母親の不在から苦しんでいました。
病気によって他界してしまった母。
翔太も犀華も、心に大きな傷を抱えながら過ごしていました。
ヘルパーの恵に「ママ」と言っていた犀華も、本当の母親がいないことは大きなダメージでした。
翔太も恵との複雑な関係に四苦八苦していました。
「本当の家族に見えるかもしれないから」「犀華がおばさんをママって呼ぶのが、天国から全部見えるでしょ…」という発言には、母親がいなくなった事実を淡々と受け入れざるを得ない、悲しい少年の心が見えます。
恵もこの事実を知っており、「私、翔太君に嫌われているとばかり思っていました」と心中を告白しています。
恵がこぼす「早く大人になった子供は、感情もコントロールするようになってしまいます」という一言に、この家族の苦しさが包まれています。

そして、彼らは犀華の行方不明から本音を吐露するようになっていきます。
翔太と恵は互いに自分を責めるようになっています。
恵はともかく、翔太が「自分が目を離したから」と思って自責の念に駆られているところも、大人びていて悲しさを覚えました。
哲郎も車いす生活の中で娘を失い、戻ってきたものの、結局はまた彼女を傷つけてしまったと思っており、自責の念に駆られています。
お互いがお互いを思いやるがあまり、お互いに傷ついている。
複雑な家庭事情の中で、彼らは互いに自己を攻撃しあうことで、家族を作っていました。
…悲しい話です。

そして、犀華を連れ去った未解決事件の真犯人も判明しました。
攫われた犀華の母親だと思っていた人物は、本当は犀華を攫った張本人でした。
しかし、その動機はとても悲しく、切ないものでした。

死んでしまった娘の犀華の面影を重ねて、犀華を攫ってしまった理佐子。
プレイヤーは、理佐子の精神が壊れていたことを母親の貴子や元夫の公正から聞いていくことになりますが、そこには愛娘を失った悲しみを背負い、立ち戻れないままあのころで足踏みをする女性の姿が見えてきます。
理佐子は最初にあった段階から「あの子は寝ていますから」と言ってきますが、それも悲しいことに彼女の妄想でしかありませんでした。
彼女は、公正が自首した時も「養育費を送ることは難しい」「祈らずに自分で状況を変えようとしている」として、連れ去りの状況をかなり冷淡な目で見ています。
娘を思いすぎるがあまり周りの人間にも狂った姿勢を見せていたり、犀華と翔太のヘルパーをしていた恵のことを不審者のように見ていたところからも、彼女の錯乱ぶりがうかがえます。
そして、貴子の口から語られる小学校就学通知の話。
彼女が狂った瞬間でしたが、それでも生きる希望を娘の幻影に描写して、満面の笑みを称える彼女は、誰にも責められるものではない、母親の姿だったのだと思います。

さて、本作は全てを知ったうえで、自分の秘密を暴露する瞬間があります。
そこで警察バッジを選ぶか、人を選ぶかで、「清崎蒼が本当は誰だったのか」、「婦警は何者だったのか」が分岐し、物語のエンディングが変わります。
一つは審判者が成長した犀華であり、心残りを持ち続け腐っていた蒼を救い上げ、一緒に理佐子を救おうと奮起するエンディング。
もう一つは、多重人格の中で蒼の人格を生成した理佐子を、婦警である蒼が救い上げ、治療を促すエンディング。
どちらもありうる結末で、どちらも「未解決事件は終わらせないといけないから」という主題に沿った、切ないエンディングでした。
個人的には理佐子を蒼が救うエンディングの方が好みです。
彼女の苦しみを、最後の最後まで救おうと奮闘した蒼の努力が、理佐子の狂ってしまった人格から救い上げてくれた。
そうした救いこそが「未解決事件の終結」であり、本作にふさわしいエンディングだったと思います。

5.終わりに

いかがでしたでしょうか。

本当にその場のノリで買ったゲームだったんですが、システムに驚かされ、ストーリーの展開に驚かされ、エンディングで切ない気持ちに胸打たれるという、最初から最後まで満足感たっぷりのゲームでした。
何よりこれだけの満足度にもかかわらず、2時間強で終わってしまう絶妙なボリュームがお見事です。
時間が無くなって大ボリュームのゲームに気軽に手が出せなかったからこそ、このボリュームで衝撃と満足感を味わえたことに感動しています。
めちゃくちゃ面白かったです。

さて、次回ですが案の定未定です。
一応「うつ病の部屋」というゲームを遊んだので、それについてちょっと書きたいな~なんて思っています。
お楽しみに。

それでは今回はこの辺で。
またね~。


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