【感想?レビュー?】ファミコン探偵俱楽部 笑み男 彼の推理は誰のために(1/2)
こんにちは、なるぼぼです。
ニンテンドーダイレクトの謎PVから始まり、電撃的発表で世界中を驚かせた「ファミコン探偵俱楽部」シリーズの新作、「笑み男」。
2年前に「消えた後継者」「後ろに立つ少女」を遊んでいた僕も、驚きまくり大興奮でした。
坂本氏の残した「賛否の出る結末」にも注目が集まり、期待のさなか本タイトルが発表されました。
僕も絶対に面白いだろう!と思って遊んでみました。
これからいろいろと語っていくわけですが、本作は坂本氏の言う通り「賛否が出るタイトル」だと思うんですよ。
凄く説明が難しいタイトルなんですよね…。
正直うまく説明できる気がしないです。
自分なりに感じたこととかを上手くまとめられたらと思います。
よろしくお願いいたします。
1.前時代ながら、遊びやすいシステム
まず本作のシステムから。
本作は過去作を踏襲しており、基本的にコマンドで話を進めていく、オールドなシステムが採用されています。
基本的な部分は「消えた後継者」や「後ろに立つ少女」と変わらないので、ファミコン時代の選択系アドベンチャーを楽しむことができます。
具体的には、「聞く」「呼ぶ」「考える」など、その場で最適な選択肢を選んで、話を少しずつ進めていく形式になります。
最近のアドベンチャーだとキャラクターを調べれば会話、近くのものを調べれば反応があるなど、割と直感的に操作ができましたが、本作ではコマンドを選ぶひと手間が足されています。
ここまで言うとちょっとめんどくさいかも…?と思われがちですが、実際遊んでみるとそこまで違和感がありません。
むしろ、状況に応じて選択肢から行動を決めるというのは、当時は一般的でしたが、今ではほとんどないので逆に新鮮です。
こういう形式のゲームは、リメイクというよりファミコン要素を強めて8bit風味にしているイメージなので、アニメ絵で表記されているのも含めて新鮮ですね。
時代錯誤的になっていますが、現代のアドベンチャーに敢えて古典的に見せてくれるシステム周りは、一周回ってなのか面白く遊べていました。
さらに、本作は前作から大問題になっていた(と思う)「めちゃくちゃ理不尽な選択肢や調べるコマンド」がほぼほぼなく、詰むシーンが全くないのが優しいです。
「消えた後継者」の極悪要素でおなじみ、見えない落とし物を崖で探すというような詰みポイントは本作ではありません。
背景に落ちているものを調べるシーンはありますが、アニメ絵になったことでものが強調され、見やすくなっています。
理不尽な謎解きを要求されることはないので、気楽にゲームが楽しめるのはありがたいです。
とはいっても、一部シーンで「何すればいいのかわからない…」という、フラグがわかりにくい展開は前作と同じくあります。
そういう時に限って、前作は「調べる→聞く→調べる」みたいな複数コマンドに渡っており、これが難易度を高めるきっかけにもなっていました。
しかし、本作ではそういったシーンでも複数回にわたるような高難易度な選択肢は存在しませんし、選ぶ選択肢がなさそうなところでは「考える」を一回押せばテキストのハイライトでヒントを貰えるので、かなり進めやすいです。
一般的なアドベンチャーより選択肢がある分が難しくはなっていますが、まだわかりやすく遊べる部類ではあるので、ちょうどいい歯ごたえでアドベンチャーが楽しめるのはいいですね。
僕はシステム周りはかなり楽しめました。
2.懐かしき、あの頃の思い出
続いては雰囲気やキャラクター、音楽などの話。
あの頃を思い出させるような懐かしさに溢れた世界観は、見事の一言に尽きます。
本作は、「消えた後継者」から数年後の世界をモチーフとして形作られています。
「消えた後継者」が80~90年代の日本を表現しているだけあって、本作も令和に出たとは思えないほどに当時の世界観を意識して作られています。
香福駅周辺の商店街とか、ポンプ場の雰囲気とか、どことなく懐かしい香りがしているんですよね。
田舎町が出てくるところでもちょっと昔の雰囲気を味わうことができたり、神原刑事の車の中もどこかノスタルジックです。
とにかくちょっと昔の雰囲気が流れていて、何だか懐かしい気持ちになれます。
続いて音楽。
本作は「消えた後継者」「後ろに立つ少女」の音楽も一部採用しており、あの頃と同じ気持ちで音楽を楽しむことができます。
個人的に印象に残っているのが事務所に戻ってきた際の推理のBGM。
「消えた後継者」の推理BGMと同じであり、同作のテーマソングのアレンジということもあって、本当に昔を思い出しました。
「消えた後継者」が本当に好きだったので、やっぱりこういうところで過去作を思い出させてくれる演出が粋です。
あゆみちゃんの操作パートでは「後ろに立つ少女」のBGMが流れる点も、昔を思い出して懐かしくなります。
最後にキャラクター。
本作も、前2作と同じぐらいハチャメチャな個性あふれるキャラクターと事件を紐解いていきます。
陽キャっぽいのにどこか憎めない「神原刑事」、熱血すぎて暴走しまくる中学教師の「福山先輩」、インパクトのある風貌とは裏腹にかなりまじめなスナックのママ「笑子ママ」など、個性が爆発したようなキャラのオンパレードです。
「~ぢゃ」という特有の語尾を持つキャラも健在で、キャラクターと雰囲気は過去作プレイヤーならよりのめり込めるようになっています。
一方で、ほぼほぼボケに回らない久瀬刑事のようなキャラもおり、引き締めるところはしっかり引き締めている点は見事です。
声優に関しても、緒方恵美さん(エヴァのシンジ君の声優)を中心に、凄いメンバーが揃っています。
世界観にマッチしたキャラと声優も、世界観の演出に一役買っています。
本作は、デザインで言えば全体的に凄くリッチな印象に仕上がっています。
そういった部分では、さすが任天堂!と舌を巻くばかりです。
3.絡み合う事件たち
続いては本作のストーリーから。
本作の主題は現代で起こった「男子中学生殺人事件」の現場にあった紙袋から、「都市伝説 笑み男」と「18年前の連続少女殺人事件」の繋がりを通じて、事件の犯人を追いかけるというものです。
18年前の事件との共通点、被害者の男子中学生の周りで起こっていた失踪、都市伝説との相違点など、様々な点で同じ点や違う点が見えており、謎が謎を呼んで飲み込まれていく感覚が、序盤の面白さとして用意されています。
印象的な点として、3つの事件は繋がっていることが示唆されるものの、18年前の事件では女の子だったのに今回は男の子が被害にあっている点など、相違点も用意されているところが疑問符を大きくしていていいですね。
繋がりがありそうだけど、相違点もあるから必ずしもそうとは言い切れない、絶妙な事件同士の距離感が不安感を大きくさせてくれます。
全体的な印象としては、80~90年代の推理ホラーのような、サイコホラー×オカルトという形が用意されていて、非常に時代を感じます。
「都市伝説 笑み男」という犯人像が用意されていることで、90年代特有のオカルトや都市伝説オーラが溢れており、世界観ともマッチしています。
さらに、笑み男の中身を見るとかなり露骨なサイコホラーで、犯人がいる事件が起きていることも相まって、結構人間的恐怖も感じられます。
サイコホラー好きもオカルト好きも楽しめるような事件の中身やストーリー性は、どこを切り取っても楽しめる作品に仕上がっています。
序盤の展開としては、謎が謎を呼び、世界観との合わせで綺麗に進行していってくれるので、非常に楽しく遊べました。
久瀬刑事が実は事件関係者だったような、身近なキャラクターが事件に関わっている点も面白かったですね。
4.「探偵の意義」と轟夫妻(ネタバレ注意!)
続いては、自分が一番印象に残ったシーンの話。
轟夫妻との邂逅と、そこでの一幕です。
本作では、18年前に失踪した謎の男「都築 実」を追って、主人公が彼の住んでいた亀松町で調査を行うシーンがあります。
そこで、失踪前の都築が働いていた車の整備会社が「轟モーターズ」であり、そこの社長夫妻が轟夫妻でした。
主人公は轟夫妻に都築がどう過ごしていたのかを聞きますが、そこでの話は「犯人とはとても思えない、まじめな青年」という人間像でした。
だからこそなのか、轟夫妻は「都築は絶対に犯人じゃない」「犯人だと疑ってきた警察は追い返した」と話します。
そして、「都築を見つけたら連れ戻してほしい」とお願いされます。
結局、主人公は18年前の連続殺人事件のことも、今の事件との繋がりのことも轟夫妻に伝えられないまま、都築の捜索をお願いされてしまいました。
その後、都市伝説と都築の間に深い関係性があり、都築が近くに住んでいることを知った主人公は、轟夫妻に連絡が入るかもしれないと思い、もう一度轟モーターズを訪ねます。
しかし、「なぜ近くに住んでいることを知っているの?」と聞いた奥さんに対して、主人公は「都築が一連の事件に関わっているかもしれない」と明かします。
その瞬間、深刻な顔つきで「お帰りください」「都築を犯人扱いする奴に話すことは何もない」と突っぱねられてしまいます。
轟夫妻は、最初に会ったときに「兄ちゃん良い目をしているな」とか、「兄ちゃんになら知っていること全部話してやる」と信用されていただけあって、その後の発言は棘があるものでした。
特に「兄ちゃんは都築と同じようなキレイな目をしてると思ったのに、俺の思い違いだったんだな」という社長の一言は、信用が崩れ去ったことをハッキリと示しているセリフです。
そして、主人公はその対応に対して、「ただ都築に会いたいだけの人の思いをくみ取らず、容疑者扱いして聞いてしまっていた」自分にひどく後悔します。
そして、彼はその前に久瀬刑事を疑ったことで、神原刑事からも「あんな顔をしていた先輩を犯人扱いするなんてありえない」と怒られていました。
そう、彼の中で事件の謎が深まっていったことで、彼は「見るものすべてに疑いの目を向けていた」のです。
だからこそ、そんな意志をすぐに理解した神原刑事も轟夫妻も、彼に対して厳しい態度を取ったのでしょう。
それは「探偵は何を見極めるべきか」という、主人公の中での「探偵の意義、必要性」を問いただす、非常に重要なシーンであったと思います。
轟夫妻とはその後すぐに和解することができましたが、彼の中では大きな疑問として、「探偵の意義」という言葉が付きまといます。
この「探偵の意義」を問い直す展開は推理ゲームでもかなり異質であり、僕はここが強く印象に残りました。
推理ゲームは他者を意識したゲームであり、あくまで主人公は探偵としてそこにある事件を解決していく存在、自分が何者であるかは重要ではない、というのがこのジャンルのセオリーでした。
ところが、本作はあえて轟夫妻のような容疑者と接点のあった、それも好印象だった人間を用意することで、「あなたから見て容疑者でも、私から見ればかけがえのない存在である」という、相互理解の失敗を描いています。
こうした相互不理解はコミュニケーション上で多々起こることですが、本作は探偵と聞き手という役割があることで、主人公側が不理解に対して「探偵とは…?」と考えさせられるのが面白いです。
「目の前の人間を悲しませることが探偵なのか」「探偵は何を求めなければならないのか」と考えさせられるシーンは、作中でも印象的で、自分も複雑な気持ちになりました。
5.急展開(ネタバレ注意!)
最後に、本作の終盤の展開をお話ししましょう。
本作、最後に関してはかなりの急展開です。
都築の正体が掴めそうになってきたところで、急に「都築は山奥の方に住んでいるのではないか」という情報が住人経由で入ってきて、主人公がそっちに向かい始めます。
そこで久瀬刑事に出会い、捜査を中断させられ帰宅しようとしたときに銃声が鳴って…。
主人公が慌てて戻って見つけたものは、血まみれの久瀬刑事と、横たわる都築と思わしき人物の姿でした。
そこから、彼女の独白と久瀬誠との再会が語られます。
この展開、僕はかなり良くないと思いました。
というのも、まず展開が急すぎるんですよ。
町で聞き込みしていたら急に「都築あの辺住んでるよ」となって、山に向かったら「終章」の文字が出てくるので、プレイヤーとしては「え、なんもわかってないけどもう終わりなん!?」と驚かされます。
そこから恒例のダンジョン攻略に移るのですが、あまりに急すぎて本当に驚きました。
「めっちゃ謎広げてるけどどうやって回収するんだろ…?」と本気で心配になったのを覚えています。
そして、拍車をかけて酷かったのが「犯人の意外性が全くないところ」です。
犯人はお分かりの通り都築なのですが、容疑者として挙がっていただけに全く意外性がありません。
過去2作は(多少わかりやすいとはいえ)意外なところから犯人が出てくるので驚きはありましたが、本作は妥当な人物が犯人なので、なんか拍子抜けします。
驚きが少ない分、推理ゲームとしての面白味も少なく、なんというか印象が薄い終わり方でした。
何より、本作の問題点は「推理がほぼ意味ないうえに、推理させてくれない」ところだと思います。
元々このシリーズは犯人が最後に犯行を説明してくるので推理も何もあったもんじゃないのですが、本作は犯人の意外性が全くないので、目星を立てる意味が全くなく、終盤の推理ゲームの答え合わせをする楽しさがほぼありません。
さらに、急展開で話が進んでいくこともあって、プレイヤーが置いてけぼりにされ、犯人を予想する前にゲームが終わるという流れも最悪です。
推理ゲームとしての犯人予想もできないまま、シリーズ特有の意外性のある犯人像もなく、犯人が死ぬため犯行動機もほぼ説明がなく、終盤のインパクトに欠け、パッとしない終わり方を迎えます。
一応久瀬刑事が幸せになったことは伝えられますが、それがどうでもよくなるぐらいの、終盤の全てがわかるカタルシスはありません。
そこは推理ゲームとして見ても、ファミコン探偵俱楽部シリーズとしても、致命的な問題点です。
事情があってこうなっているので致し方ないのでしょうが、エンディング見た時点で「なんだこのゲーム」と思われても仕方ない出来です。
中盤まではシリーズ経験者にはお勧めぐらいの面白さだったのに、終盤でめちゃくちゃ冷めちゃって「なんだかなぁ」と思ってしまいました。
ここまでだったら駄作です。
ただ、最後の緊張感あふれるシーンは「消えた後継者」や「後ろに立つ少女」で見た最後の展開らしくて良かったと思います。
最後の最後で出る都築の顔がいかにもホラーらしくて、ここだけはホラーアドベンチャーとして評価できると思いました。
物語の展開が急すぎるのも相まって、色々と緊張感が走っていたので、ホラー演出としては良かったんじゃないでしょうか。
終盤の鉈持った誠とか超怖かったですからね。
また、轟夫妻のその後を案じてしまい、心にしこりが残るという点では良かったと思います。
都築が犯人であるとわかってしまったので、彼らはこの真実を見てどう思ったのでしょうか。
探偵の意義を考えてまで出た結末がこれだっただけに、轟夫妻のことを考えると複雑な気持ちになります。
佐々木君の事件でも、自殺とわかってしまっただけに森本さんにかかるダメージは大きく、そちらの責任を見ても複雑なものがあります。
そうした複雑さを考えれば、なんだかんだいいエンディングだったのか…?とも思います。
語られることが少ないのがもったいないですけどね…。
6.終わりに…?
いかがでしたでしょうか。
本当はもっと語りたいことがあるのですが、この時点で思ったよりも長くなっていたので、別記事で続きを書こうと思います。
この先では本作の「〇〇〇」に触れていくのでご安心を。
これだけだとクソゲー扱いしてるのと変わりないですからね。
最初にも言いましたが、僕は本作は「神ゲーともクソゲーとも言えない、賛否両論がそのまま当てはまる」と思っているので。
その辺の話はもう一個の記事の方でしようと思います。
続きは下記記事からです。ぜひ読んでいってください。
それでは今回はこの辺で。
さようなら。