名作「チップス先生さようなら」
この本は私はごくごく幼い頃に一度読んでいて、その時のイメージとしては学校生活に差す「暗い戦争の影」といった印象が強く、個人の力ではどうにもならないことと子どもたちを愛する先生の心、みたいな作品だと認識していました。
実際そういう側面もあるのですが、今回縁あって再読する機会に恵まれ、元々持っていた暗いイメージから解き放たれた印象も持つことができ大変よかったです。
短い作品ですので、これまた全ての方に対してお勧めの有名な作品ではありますが、特にお子様をイギリスのボーディングスクールへ入学させる考えをお持ちの方にとっては、良い参考となると思います。必読の書。
実は息子が今お世話になっている学校にもチップス先生のような存在の方がいらっしゃって、今あらためてこの作品を読み返した上で、当時のことを思い返しています。不思議なご縁でしたが、初めての学校見学の時と2度目の学校見学の時にも、私や息子が短い会話をさせていただきました。ほんとその時その時にはそこまで気になる存在ではなく、むしろちょっと何故ここにいらっしゃるのか分からない変な人みたいな印象だったのですが・・のちに息子が実際に入学することとなり、ふと思い出して「そう言えばあのおじさんはどういう人だったの?」と聞いた時に、まさにこの文学作品に出てくる「チップス先生」のような存在、学校にとって、また生徒たちの学生生活にとって無くてはならない、大切な役割を果たされている方だったのだと知りました。
そしてそれを聞けば、そう言えば前の学校にもそういう方いらっしゃったなーと思ったり。ひょっとしたらこの「チップス先生〜」という作品が有名だからこそ、こういう精神的な柱のような存在がボーディングスクールには必要だという共通認識が生まれたのかも知れない。または、歴史有るボーディングスクールとは自然にそのような存在を生み出すものなのかも知れません。
息子の学校でのチップス先生的存在の方は、前の学校ではサーがついている地方の名士で、時々学校に遊びに来るので寮生(通いの子もいる学校だった)にはお馴染みの存在とのことでした。イギリスは突然のロックダウンから学校閉鎖、やがてオンラインによる変則授業となり、先生・生徒共に切り替えが大変難しかった頃にピンチヒッターとして時間割に登場されてました。将来の職業選択のアドヴァイス授業をされてた。
今の学校のチップス先生は、非常時には何か受け持ったりもされるのかも知れませんが、今のところシルクハットまでかぶった正装でお庭に居る不思議なおじさんです。学校見学の時に構内にあるたいそう由緒有りそうなモニュメントを「なんだろうねこれ」「ラテン語で書いてあって読めないね」と息子と話してたら声をかけてくれました。戦没者慰霊碑だとのこと。また、学校見学では校内見学や説明会の後に懇親会のようなお茶の時間があるのですが、そこでも声をかけてくれました。
このお茶の時間が今から思うと大切で、特段ここで採点してるみたいなそんな厳密な意味では無いでしょうが、でもやっぱり先生方や他の保護者たちと上手くやりとりができて社交性のある親&子どもは良い印象が残せます。学校見学のあとで心当たりが特に無い中で学籍確保のオファーがもらえたので、ひょっとしてあのおじさんが新入生を選ぶ権限があったのかな?と息子と二人言い合ったものです。前の学校にはその学校を見学に行く旨連絡してあったものの、まだ成績証明なども提出していなかったタイミングで、ほんとそれくらいしか心当たり無かったもので。
でも実際、学校見学でどのくらいコミュニケーションがとれるかを示すというのは大切だと思います。そうじゃないと校風に合う生徒(或いはご家庭)かどうかも分からないし、ちょっとやり取りすることが出来れば大体どの程度の教養があるかというのも自然に出てくる。これはハウツーとかチェックポイントとかそういうことではないと思いますが、きっと自然に、そういうことができる子たちは安心というような意味で。もちろん学籍オファーにはいろんな理由があるだろうから、こういう社交性とかマナーとか教養のようなものがこの機会に発揮できなくても(面接はあります)すごく秀でたものがあるとか、優しい子だとか、それぞれの子どもの個性に最適なものを押し出した方が良いと思います。学校見学と言うのはまだ、何がなんでも選ばれたいではなくて向いてるなら入ろうかという段階だし。
ちょっとまた話がそれましたが(note書き始めた「どうやって子どもをパブリックスクールに入れたの?」に答える目的に立ち返ってみた)、「チップス先生さようなら」はお勧めです。私自身も、こういう気持ちで子どもたちを見つめていきたいな。
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という、これ前々から下書き状態で今日たまたまアップしたんだけど・・
4年前のまさに今日が、今進学してる学校の最初の見学日だった。
息子が風邪気味でろくに喋れなくて(話題振られた時だけシャキンとなって少し話せた)もうダメだ&息子自身そんなにインスピレーション無かったのかなと思ってたのですが、帰宅の電車内で急に「あの学校に入りたい!」と言い出すわ、実際少しして入学担当の先生から割と良い連絡が来てもう一回見に行くこととなり、とんとんと話が進みました。
何事も縁也。