「点数稼ぎ」という言葉を使う人の心理を想像してみた

6つほどの仕事に落ち続け、無職期間が3ヶ月になろうとしていた頃、ようやく次の仕事にありつけた。といっても、この職場は三回目である。正確には少し前にもオファー→やっぱりダメ、をやっていたので、働くに至らなかった機会を含めたら四回目である。そういう、人の入れ替わりがとんでもない職場だ。

初回は良かったのだが、女ばかりの職場なのにマウンティングがなかったのだが、二回目からマウンティングの煮こごりのような職場になってしまった。マウンティング好きな人に権限を与え調子に乗らせるいうシステムを採用した結果だ。マウンティングが嫌いなこと甚だしい私は、職場カーストの最下層へと転落してしまった。私は一挙一動を見張られ、少しでも怪しい動きをすると公開処刑でダメだしされるようになった。
このことが嫌で嫌で、多分そのストレスで蕁麻疹が出た。仕事で蕁麻疹が出るのは13年ぶりだ。

ところで、この「一挙一動を見張られて公開処刑されること」に対して、私がなぜこんなに拒絶反応をおぼえるのか、しばらくわからなかったがやっとわかった。そう、まさに子供の頃されていたからだ。幼稚園、小学校、中学高校……短大、大学……。私という人間はどこへ行ってもすぐに目をつけられる。「見張っていなければならない」と思わせる何かを持っているらしい。これは、移行支援に行った時、あと県の就職訓練の体験に行った時、私に限らず全ての利用者が職員からこういう目で見られているのを見て割とカルチャーショックだった。「障害者更生」とかいう怖い言葉がまだ存在するように、障害者というのはほぼ犯罪者とイコールなんだなと、倫理的にどうなのかはさておき、そう思われていることを認めないと先に進めないのだと学んだのだ。
ただ、私や多数の障害者は別に積極的に犯罪や問題を起こそうと思って生きているわけではないので、ぶっちゃけそういう見張りの労力はものすごく無駄でもったいないと思う。そういう人たち、私に普通に「あんたを見張るのに疲れる」とか言ってくるし。勝手に見張って勝手にヘイトを溜められて正直私は「知らんがな」しかないんだが……。

ともかく、大人になってそういう機会がなくなり、大人最高!二度と子供に戻りたくない!!とずっと思っていたのだ。

しかし、今の職場は、障害者だから、というより、「マウンティングに興味がないってことはそれ以外のなんらかの方法で不利益を与えようとしている!」という被害妄想的な理由でめちゃくちゃ見張られていて、だから私は必死で目立たないようにしているのに、とにかく本当に何をしても怒られる。公開処刑で怒られる。
こうなると、なんとかして少しでも公開処刑をされる機会を減らしたいと思ってしまう。これがますます事態を悪い方へと転がしていく。

私はどこの職場に行っても、「人が嫌がってやらない仕事を積極的にやる」というのを信条にしていて、その理由というのが、「私のような使えないクズを雇っていただいているのだから少しでも恩返しをしなければ」という一心なのだが、ところが、これは実はめちゃくちゃ悪手らしいということを最近知った。

人がやりたがらない仕事をやると、「点数稼ぎをしていて嫌なやつだ」と思われるらしい。知らなかった。本当に知らなかった。

いや、だってやりたくないんじゃん。やってくれてラッキーなんじゃないのか。この思考がもう、超絶少数派の思考らしい。
点数稼ぎと言われても、点数を稼ぐことの何が悪いのか、少しでも稼がないとクビまっしぐらでは……という考えがもう特殊すぎて理解されないらしい。

なぜなら、健全な自己肯定感を持っている職場の皆様は、私の一挙一動を見張りことあるごとに公開処刑をして、私の自己肯定感がプラスに振り切れすぎないように調整してくださっているらしいのだ。

な、なるほど〜〜〜!!!

目から鱗どころか目ん玉が何個か落ちた。
健全な自己肯定感を持つ人は、自己肯定感がマイナスの人間がこの世に存在するということを知らない。人のやりたがらない仕事をする私は、自己肯定感が溢れすぎているように見えていたらしい。

人間を40年やってきて、初めて知った。

私にとって、人のやりたがらない仕事をするということは、赤点を少しでも及第点に近づけようとする行為だ。
しかし、傍から見れば、既に100点満点を取っている(と、本人であるところの私は思っている)のに、存在しない110点や120点を認めろとダダを捏ねているように見えていたのだ。

うん、確かにそれはずるいし問題行動だ。
私でも、それはやべーなということが理解できる。

そのことがわかったので、私はとにかく最低限しか仕事をしない、という方向にシフトチェンジした。
死ぬほど暇な職場でこれをすると、本当にただサボっている人になる。監視されている身でこれをやるのはなかなか厳しい。が、そんな私の気持ちとは裏腹に、「それでいいんだよ」という空気を感じる。
カースト最下層に対する、貴様もやっと収まるべきところに収まったな、という満足げな視線を感じる。
職場の皆様は少ない仕事の奪い合いをしながら、その奪い合いに参加しない私を見てニヤニヤしている。

この職場での立ち居振る舞いかたはこうして理解できたが、かといって私の性格的に、ただサボってお給料を貰うというのは耐えられない。
仕事は忙しければ忙しいほど燃える体質を発揮できる職場との出会いは、もしかしたら永遠にないのかもしれない。

しかしともかく、真剣に仕事がなさすぎて貯金が底をつきそうなので、真剣に引っ越しを考えている。求人を探す時、場所を変えれば検索にヒットする数が本当に桁違いなのだ。市内にひとつあるかないかの求人に命をかけるより、数十ある仕事から私を受け入れてくれる職場を探した方が絶対に誰にとってもいい。

しかし、今のアパートはすごく広くて閑静な住宅街で、坂道だらけとはいえ逆に大雨の影響を受けない。角部屋で隣は空室。こんなに良い物件は、他でいくら探しても見つからない。保証人不要という条件のせいもあるだろうが……。

更に、今住んでいる市が福祉に対してものすごく積極的で、私には関係ないが子育て世帯への手当がえぐい。私が生まれ育った市は子供がめちゃくちゃ多い現代日本らしからぬ市だったけども、ただ単に物価が安いベッドタウンだっただけだ。なんか知らんけど子供が多くなり、それにあぐらをかく形。それと比べて、子持ち移住者を全国から募っている今の市、多分全国的に見てもすごい。あと、私に関係あるところではDV被害者への支援も手厚い。移住しなくても避難するだけで支援が手厚い。なので、わざわざここから転出するのはおそらくデメリットしかないだろうなという気配が既にある。

でも、いくら税金のたぐいを免除して貰えてもひとりで暮らしていく以上家賃などどうしようもない支出はあるわけで、それらはいかに税金を免除されようがどこかしらから捻出しないといけないという当たり前すぎることを一人暮らし歴2年目にして知った。


…………あれ???

タイトルからあまりに離れてしまったので、この話はまたいずれ書くことにする。


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