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オタ活まとめ:2022年春クール

何かにハマったというよりは色々なものを観たり読んだりしていたクールだったかなと思います。春アニメは面白かったですねー。『可愛いだけじゃない式守さん』も見てるんですが、そっちの感想は夏クールのまとめに回そうかと。ここにはレビュー書けなかったやりかけのゲームが一本あるので、夏はそれをクリアすることを目標にしたい。

アニメ

Fate/EXTRA Last Encore

『Fate/EXTRA』プレイ済みの視聴者ですら最初は面食らったというこのアニメ。ゲームはやってないけどラスアンは一度見たという友人にちょこちょこ解説を挟んでもらいつつ完走しました。ナーサリー・ライムの話ぐらいまでは面白かったのですが、だんだんよくわからないところが多くなりすぎて、最終的にはちょっと感情がついていかなかった。普通のアニメとしてはそれでも面白い方だと思うのですが、いかんせんFateシリーズはほかに面白い作品がいっぱいあるのでどうしても…。ただキャラクターデザインがめちゃくちゃよくてネロが可愛かったり、エンディング映像がエモかったり、ところどころに奈須きのこ節が感じられたりしたのはよかったかな。マジで意味がよくわからなかったので奈須きのこが書いた原案シナリオ集というのを買って読んだら、若干の不明点を残しつつもある程度はわかったので、再視聴したらまた感想が変わる気がします。

M3 ~ソノ黒キ鋼~

「ホラーが好きで岡田麿里が好きならこれくらい見ておかないとなぁ!?」と言われたので履修しました。
岡田麿里は話をまとめる力が若干不足している気がしていて、監督はじめとしたほかのスタッフとか題材との組み合わせ次第では結構グダグダな話を作っちゃう人だと思っているのですが(もちろんそれを補って余りある魅力があるクリエイターだから好きなんですが)、このM3も正直そのパターンだなという感じでした。心理描写がガタついていて主人公格のアカシがずっと変だし、設定開示を渋ってるせいか前半はほぼ進展がなくてそんなに面白くないし。ほかのライターさんもかなり入ってる作品なので、岡田麿里のシナリオ面での功績や責任がどこまであるのかはよくわからないですが。
でも実はこの作品、1つだけ群を抜いて素晴らしいエピソードがあります。大西信介さんが脚本を担当されている第14話「思ヒ残シノオト」です。屍鋼化が進みついにはLIMになってしまったり、その後もヘイトに無理やり共振させられたりと散々な目に遭っていたエミルが、マアムによってようやく少しだけ救われるこのエピソード。おぞましいゾンビのような姿のエミルに恐怖したマアムが、最後には彼女を抱きしめるシーンでは涙をボロボロ流して泣いてしまいました。エミルがマアムの物語に勝手に文章を書き足してその主人公を救おうとした過去回想もすごくよかったし…正直このエピソードが見られただけでM3を見てきてよかった、報われたと思いました。あとカップル的な観点では個人的にはライカとイワトの関係性もよい。キャラクター単体としては夏入が印象的で、飛田展男の演技がとにかく粘着質でクセになるし、性根が腐りきった碇ゲンドウみたいな感じも独特のペーソスがあってよかったです。でもツグミはもっとキャラとして輝けた気がするんだよなぁ。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

何度も見返している作品なのでわざわざ書くこともないかという感じなのですが、1回しか見たことがない友人が見直して再評価してくれたので一応。

虚構推理

放送当時も見ていたものの途中で挫折してしまった作品。小説を読んだのでついでにこっちも見ました。前に見たときはそこまで琴子を可愛いと感じなかったのですが、今回見たら「あれ、なんか可愛いぞ…?」と思わされました。なんでだろうね。小説の方でも、六花さんに琴子が狙われないように九郎が一人で鋼人七瀬をどうにかしようとしていたという意図が明かされ「岩永は幸せになるべき人間だから」みたいな発言をするくだりが好きなんですが、アニメでもまったく同じ良さを感じましたね。それまでは琴子のことが好きなんだか好きじゃないんだかよくわからなかった九郎が彼なりに琴子に愛情を持っているということがわかるのがいいし、それを悟ってサキさんが踏ん切りをつけられるのもいい。2期も楽しみです。

絶園のテンペスト

篠原俊哉×岡田麿里という嬉しい座組の作品。前半の特殊設定ミステリみたいな話も後半の謎のラブコメ展開もそれぞれ違った味わいがあって、最後までとても楽しく見ました。吉野と葉風の未来を予感させる終わり方が切なくも明るくていい。
ストーリー、作画、キャラのいずれもハイアベレージでしたが、この作品の雰囲気を形作っていたのはやはり大島ミチルの劇伴かなと思います。『亡念のザムド』の劇伴もそうですが、やはり僕はこの人が作る音が本当に好きなんだなと再確認させられました。
個人的には葉風みたいなCV沢城みゆきキャラはもっともっと増えてほしいですね。死してなお男主人公たちと視聴者の心を鷲掴みにしてくる愛花の絶大なるヒロイン力に葉風が渡り合えたのは、沢城さんのおかげなのでは。口調に似合わぬ乙女なところや可愛らしくも凛々しいルックスと謎のシナジーを起こしていてめちゃくちゃ刺さりました。

ラブライブ!サンシャイン!!

2期を最後まで見ていない作品だったこともあり、友人たちと「一度ちゃんと見たいね」という話になり見ました。ニジガクの方がやっぱり話が安定しているのですが、やはり『ラブライブ!』といえばこの濃厚な花田十輝節だよなぁという気持ちがあります(良くも悪くも)。放送当時は千歌ちゃんと善子が好きだったのですが、今見直すと梨子ちゃんや鞠莉もよかった。あと無印やスーパースターに比べて百合要素が濃厚なような。かなまりもそうだし、10話終盤の千歌ちゃんと梨子ちゃんの会話とかなんかもう…すごい(語彙消失)

ラブライブ!サンシャイン!! 2期

中盤にラブライブのいいところ、終盤にラブライブの悪いところが詰まっているなと思わされた作品。独特のノリで繰り広げられるコメディパートは──人は選ぶだろうなと思いつつも──抜群に面白いんだけど、シリアスパートになると色んなことがふわっとしてしまうこの感じ…。最終話付近にはいくつもグッとくるところがあったけど、肝心のシーンや説明をいくつも省いたせいで不条理な夢のような印象でした。
2期まで見進めるとキャラ同士の関係性が変わってくるので、そこは楽しかったです。とくに善子と梨子ちゃんが仲良くなっていて微笑ましい。

サクラクエスト

なかなかサブスクでは配信されなかった大好きな作品。Blu-rayを持っているのでちょくちょく見直してはいたのですが、このたびめでたくdアニメストアに来たので2周してしまいました。この作品の魅力については「隠れた名作アニメ『サクラクエスト』のススメ──迷える人生にそっと寄り添う、等身大の町おこしドラマ」という記事に書いたのでそちらを参照のこと。

狼と香辛料

作画もテンポもそんなによくないのでたぶん原作を読んだ方が面白いんだろうなとは思いつつ、ホロは顔、セリフ回し、ロレンスをからかいつつもデレる感じや小清水亜美の声が魅力的でした。エンディングはプリンセス・プリンシパルっぽい(製作年順で言えば逆だけど)。

乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です

タイトルの印象に反して普通に男の子向けのラノベ原作アニメ。往年のラノベの感じとなろうのテイストを足して2で割ったような…。基本的にクズキャラが好きなんですが、そういう人には向いているアニメだと思います。
作画は予算がかかってないラノベ原作アニメのそれという感じなのですが、話は結構面白かったのでもう少しお金がかかっていればなあという感じ。ラノベは市場規模が小さいためか漫画よりもアニメ化で損してることが多い印象があります。ついでにいうとキャラクターデザインももう少し原作イラスト寄りにしてほしかった。その方がヒロインのビジュアルが可愛かった気がする。
リヴィアとアンジェどっちが好きかというのはこのアニメを語る上での定番のトピックかと思いますが、僕はアンジェが好きです。芯が通っているところと、それゆえに不器用な感じがいい。実は性格悪いCV佐倉綾音キャラが大好きなのでマリエも好きだったりします。

ヒーラー・ガール

最初は宗教アニメっぽいとか言われていましたが、演出が独特かつキレていて、掛け合いのテンポもよくて、スタッフの愛が伝わってくるすごくいいオリジナルアニメ。ミュージカル苦手な人は超苦手そうだなと思いましたが…。『Just Because!』の夏目美緒が大好きなんですが、かなちゃんの磯部花凜もまた独特のよさがありますね。6話くらいまでは全ての回が好きです。特に響の実家に行く回。後半だと12話かな。師匠がヒーラー一本でやっていくことに決めたときのエピソードが好きです。

処刑少女の生きる道

面白い…と中々断言しづらかったアニメ。たぶん話そのものは面白いし作画も安定しているんですが、テンポが妙に悪かったり、戦闘シーンがいまひとつ盛り上がりきらなかったりで、惜しい作品でした。とくに戦闘シーンはギミックが凝っているものもあったので、もう少し演出で緊迫感やテンポ感出してくれればもっと楽しめた気がする。話の続きは気になるので2期やってほしいなぁ。個人的にはやっぱりメノウが一番好きで、その次がパンデモニウム。

であいもん

キャラクターデザインや色味が悉く僕好みで、映像が快いアニメでした。CVもよくて、一果ちゃん役の結木梢は新人も新人だそうですが演技の違和感は全くなくすごくいい声だったし、島﨑信長の声も優しい声音で癒されましたし、髙橋ミナミもドンピシャだったなぁと。
ラブコメ脳の修羅場スキーなので佳乃子さんと美弦ちゃんが集まって和のことでちょっとピリってる展開が一番楽しかったんですが(5話とか)、ほかのハートウォーミング回も臭すぎたり湿っぽすぎたりしないでサラッと語られていてちょうどいい塩梅でした。特に11話の雪の日の回は一果ちゃんの心境の変化や和との信頼の深まりが感じられて、1話から見ているとジーンとくるものがある。
余談ですが、すぐアニメに影響されるオタクなので最近和菓子を食べまくってます。炭水化物が多いから太らないか心配。

パリピ孔明

最初面白くて、中盤失速して、終盤にすごい勢いで盛り返していい感じに締まった作品。タイトルの出オチ感に反して、物語はしっかり丁寧に作られていました。中盤失速したと書きましたが、終盤の盛り上がりのための助走期間として考えると仕方ないのかなという気がする。
映像面については安定のPAだなって感じなんですが、特にOPの絶妙なダサさがいいですね。クセになる。それからメインキャラの英子がめちゃくちゃ可愛いので「どうせ出オチ枠でしょ」とか思って見なかった人でも、もし関口可奈味キャラデザと本渡楓が好きなら絶対に見た方がいいと思います。
そういえばTwitterでは「終盤のゲリラライブが交差点を占拠してたのがマジで大迷惑でクソ」みたいな話がありましたが、実際、事前の許可どりや交通規制はしてたと考えていいのかな。路上ライブのくだりではそのあたりにも目端が利いていたので、孔明が何かしらフォローしてる気はしますが、少なくとも劇中では記憶の限り描かれてないですね。

ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜

ハニワの知識はゼロに近いのですが、内山昂輝と島﨑信長がメインキャストで、ひよりちゃんの見た目が可愛かったので見てみました。安心と信頼の成田さんシリーズ構成という感じで、最後まで楽しかったです。ベタではありますが、最初ちょっとギスってたひよりちゃんとLIP×LIPの2人が、話数を追うごとに信頼関係で結ばれていくのがよかったですね…。6、7話と11、12話が好き。

阿波連さんははかれない

「オープニングアーティストがTrySailじゃん」と思って見始め、そのままなんとなくで完走したアニメ。この作品で寺島拓篤の声を覚えました。たまに櫻井孝宏っぽい。
途中までコメディだと思っていたら後半に急に恋愛要素が濃くなってびっくりしたけど、ハッピーエンドだったしよかったんじゃね?

シャドウバースF

多分通年もの?前作見てないけどまぁいいか、と半ば開き直り気味に視聴。ちなみに原作ゲームはちょこっとだけやっていた時期があり、最後は超越ウィッチを使っていました。
まずこのアニメのいいところはキャラクターデザイン。昨今のホビアニっぽい奇抜な髪型や色遣いを踏襲しつつ、悪趣味にならずにまとまっているというか。ぎゃろっぷ時代の『遊☆戯☆王』くらい悪趣味な感じも大好きなんですけど、それとはまた違った良さがある。それからドラグニルとかいうCV井澤詩織のマスコットキャラがマジでかわいい。
ただなんとなくカードバトル中やその後の掛け合いが浅いというか、言い回しが変わっているだけで内容が実質的に同じセリフを何回も擦ったり、新キャラがカードバトル後にセブンスフレイム加入を決めるまでの掛け合いがあっさりしすぎていたり、というのが気になりました。カードバトル内容だけでいえば、現時点での個人的なベストバウトはイツキvsタツミ。

SPY×FAMILY

まずなんといっても色遣い、キャラクターデザイン、作画と、映像面のクオリティが桁外れに高い。キャスティングもピッタリで、とくに種﨑敦美のアーニャがいい味出してます。映像と演技だけでお腹いっぱいになる贅沢な作品。
ヨルさんが人を殺していますが、そこらへんは括弧に入れて見るものなのかなと思っていたら、原作者はそのあたりもちゃんと考えて描いているらしいということをインタビューで知ってびっくりしました。

カッコウの許嫁

2クールもの。作画もキャラのモラルも酷いけど、ヒロインの趣味がめちゃくちゃ合うのと話が面白いので見ています。とくに幸ちゃんが好きなので2クール目ではもっと活躍してほしい。エリカ父が不穏な空気を醸してるのでそのあたりも展開的には気になるところ。
OPも曲・映像ともに好きなので2クール目のOPがこれを超えてくれるのか不安ですね…。

かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-

ラブコメアニメの中でもトップクラスの面白さを誇る『かぐや様』の、待ちに待った3期。
ラップ回はじめどの回もキレッキレで面白かったのですが、とくに連続放送されたラスト2話はこの作品にしかないだろうなという独特のシチュエーション(告RADIOのネタ投稿にありそう)でドラマの最高潮を迎えてくれて大満足。かぐやと白銀がよかったのはいうまでもないですが、妙にずれているけど伊井野ケアがちゃんとできて偉すぎる石上、なんかやたら照れていてかわいい早坂、福原遥の声が可愛すぎるつばめ先輩、そしていつも通りの藤原書記と、ほかのキャラも輝いていてよかったですね。

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2期

ラブライブのアニメシリーズの中でさいつよコンテンツとなったニジガクの2期。嵐珠・栞子・ミアの新キャラ3人のMVはマジで最高すぎてYouTubeの公式動画をアホみたいにヘビロテしまくってました。DiverDivaの曲と映像もカッコよくて中毒性が高い。
ストーリー的には宮下愛に対するCV石川由依のお姉さんの複雑な感情が描かれる4話、ゆうぽむが楽しめる5話、栞子がスクールアイドルをやることに前向きになる7話、ミアの掘り下げとMVが最強すぎる9話、特に話らしい話もないのに謎の多幸感がある10話がお気に入り。続編やってくれ、頼む!

遊☆戯☆王ゴーラッシュ

キャラクターデザインは素晴らしいんですが、今のところストーリー面ではSEVENSの方が面白い。Twitterにいる遊戯王オタクには全肯定勢が多いですが、まだ話もそんなに動いてないしテンポもよくないので、この段階でそんなに褒めるのもおかしいのではという気がします。ラッシュデュエルのチュートリアル回がかなり多かったのも盛り上がりきらなかった原因だと思うので(ホビアニである以上チュートリアルは丁寧にやった方がいいので仕方ないんですが)、2クール目からに期待。13話の引きはワクワクする感じだったので結構面白くなるんじゃないか。
好きなキャラはユウディアス、遊歩ちゃん、ズウィージョウ。

BIRDIE WING -Golf Girls' Story-

2クール連続かと思ったら分割で来年放送ってマジかよ!待ちきれねえ!
友人間での愛称は「バカゴルフ」。外連味とツッコミどころ満載のアニメファンが絶対好きなタイプのアニメで、僕もそんなアニオタの例に漏れず「これこれ!こういうのでいいんだよ!」と言いながら毎週見ていました。クール半ばで若干ダレましたが、また調子を取り戻してきて学園編は面白かった。

盾の勇者の成り上がり 2nd Season

1期はざまぁがキツくて途中までしか見られなかったんですが、2期はざまぁ要素少なめとのことだったので見ました。1期よりも作画が結構崩れてる気がしたけど、ざまぁ展開を見るストレスよりはマシだからご愛嬌かな…。絆が可愛くてデザインも良かったので好きだったんですが、最近CV富田美憂なら誰でも好きになっちゃう疑惑があるのでそのせいもあるのかもしれません。
1期の時も思ったのですが、ステータス画面の作り込みなどの細かい工夫や色遣いによってリッチ感が出ており、かりにキネマシトラス以外の制作会社が低予算で作ったとしたら、同じ話でもこういう雰囲気にはならなかっただろうなと思いました。逆に言えばほかの多くのなろう系アニメが安っぽい原因の一つは、こういう細部がちゃんとしてないことなんだろうなと思います。
原作勢的には脚本に改変や端折りがあったのが不満っぽいですね。確かにキョウをはじめもう少し掘り下げてほしいキャラもいたので、もとの小説を読んでみたくなりました。

映画

銀河英雄伝説 Die Neue These 激突 第2章

査問会のくだりでは一生ヤンが理不尽な目に遭うのでつらい気持ちになりましたが、フェザーンが色々陰謀を巡らせているのはワクワクするというか、この先どんな展開になるか気になるところです。そしてついに要塞がワープ。硬派で重厚な作品でこういうアホみたいな展開があると嬉しくて頬が緩んでしまいますね。こういうのもっとやってほしいです。

ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

IMAXかつ3Dで見てきました。3Dは初体験で、没入感はあったものの、そのせいかやたら疲れた。ちなみに国内アニメを強引に独占配信するやり方が気に入らないためディズニープラスには加入しておらず、前日譚にあたる『ワンダヴィジョン』は視聴していません。
一緒に見た友人は1作目の方がよかったと言っていたのですが、僕は今作の方が印象的でした。『ドクター・ストレンジ』の強みである摩訶不思議な映像は今作でも健在だったのに加えて、僕好みのホラー要素があったり、バトルシーンが多くかつ練られていて見応えがあったり…なにより今作はストレンジの掘り下げ方がよかった。しかし反面ワンダの扱いがかなり酷なので、その点は結構キツかったです。書物の力に操られて…というエクスキューズはあるものの、かなりエグいことをしてしまっている。『ワンダヴィジョン』見てるとこのあたりは納得のいく展開なんですかね?
映画では別バースのストレンジが助けようとしていたはずの少女アメリカを、世界のため犠牲にしようとするエピソードで幕を開け、さらにその後も少なくとも2つのバースのストレンジが世界の破滅の原因になったことが描かれます。この作品の好きなところはそういった前フリに対して「でもこの(MCUの)ストレンジだけは英雄なんだ」とするのではなく「結局このストレンジもほかのストレンジと同じく破壊者たりうる」としたところ。そしてそれでももう一度彼を信じようとした人たちのおかげで、ストレンジも別のストレンジができなかったアメリカを信じるという決断ができるようになり、結果的に彼女を死なせずに済むところです。その意味では今回大きな過ちを犯してしまったワンダにも、もう一度やり直す機会が与えられてほしい。ふつうに気の毒すぎるし…。

銀河英雄伝説 Die Neue These 激突 第3章

艦隊戦が繰り広げられた章。砲撃で多数の人死にがでているっぽいところ申し訳ないんですが、正直いうと映像・音楽の迫力もすごいし、読み合いもすごいし、めちゃくちゃ見応えがありました。ヤンに足かせをはめることで緊迫感のある展開になっていたし、ユリアンが相手の動きを読んで「ヤンの一番の弟子」みたいなこと言われるところなんかは「よくやったユリアン!」と心の中でガッツポーズしてました。個人的にはこれまでの銀英伝DNTのエピソードの中でも最高峰のひとつ。

シン・ウルトラマン

話は面白かったし、映像も楽しかったのですが、よくわかんない椅子映り込みカットみたいなのをやたら多用していたのはなんなんだ…? と思いました(なんかのパロディらしいとも聞いたのですが、いずれにせよ別に画的にはさして面白くないので意図がよくわからず)。ウルトラマンマニアならニヤッとするネタが多数仕込まれていたっぽいのですが、僕は子供の頃にちょろっとそのときの最新ウルトラマンを見ていた程度の観客だったのでとくによくわからなかったです。Twitterでちらほら見かけた「長澤まさみの写し方がちょっと…」という意見はまあ言わんとすることはわかるという感じ。心に残るいい作品だとは思うのですが、主に映像方面でもっと改善の余地のあるんじゃないかという気にさせられました。不思議な作品でしたね…。

劇場版ラブライブ!サンシャイン!! Over the Rainbow

統廃合が決まったあとで統廃合先の学校にふわっとした理由で拒否られるの意味わからなさすぎるな…と思いつつも、そんなことを言い始めたら鞠莉が理事長をやってるのも意味わからなさすぎるし、そこはまあいいかと受け容れることにして見ました。
楽曲がどれも僕好みで、話も劇場版っぽくまとまっていたと思うのですが、すごく良かったかと聞かれるとうーん…という感じ。劇場で見たらまた違うんだと思うんですが、TVアニメと同様、もう少し脚本に説得力が欲しかったなぁと思いました。個人的にはSaint Snowの話が面白かったし、理亞のその後が気になるので、スピンオフ展開があるなら追ってみたいです。

犬王

客観的にはとてもいい作品だなとは思いつつ、個人的にはそこまで乗れなかった作品。もともとダンスパフォーマンスにあまり感動しない人間なのに加えて、ライブシーンは音楽がいまいち合わない、映像にワンパターンな箇所がある(これは意図的な気がしますが)、そしてなによりとにかく長いという理由で退屈してしまい、何度か没入感がリセットされてしまいました。
物語は『どろろ』というか貴種流離譚によくある父のせいで呪われた子の話と、時の権力者に翻弄される芸術家の話を組み合わせたという感じ。そういう物語構造を踏襲していること自体はいいのですが、ただそういうタイプのストーリーで描かれるようなことをしっかり掘り下げている感じはしないし、その型から逸脱するような描写もあまりなかった気がします。映像と演出がいいので雰囲気でなんとなくよかった気にはさせられるのですが、冷静に見るとドラマ面は若干薄味なのではないかと。友有の名前が彼の心理と作品のテーマを同時に表現するモチーフになっているのはうまいと思うし実際感動するのですが。
映像は面白くて、友有から見た世界の描き方もいいし、犬王が跳ねるように踊る動きにすごい躍動感がある。終盤の演目は幻想的で、犬王の身体が綺麗だなぁと思いました。犬王はアヴちゃんの声と演技がばっちりハマっていることもあってマジでいいキャラですね。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

初代ガンダムを見たのが昔すぎて何も覚えてなかったんですが、復習はせず見に行きました。モビルスーツ戦はすごく見応えがあったのですが、ツッコミどころが多かったのと、なんとなくアニメーションの動きやテンポが肌に合わなかったのと、あとこれは作品とは関係ないですがほかの観客のマナーが悪かったせいでいまいち没入しきれなかった。
見ていて思ったのは、ククルス・ドアンがすごく古典的な父像を体現しているなということ。そしてカーラは彼に好ましい父性を見ているのか、それとも単に男として好きなのか、いずれにせよ何かしら好意を寄せていそうだし、マルコスはそれに対して何か思うところがありそうだし、どことなくエディプス・コンプレックスを軸にした人間関係ができているのでは…と思わせるところがあって興味深かったです(はっきり描かれてないので実際これは僕の妄想でしかないのですが)。こういう生っぽい(擬似)家族関係を描く話ってもっとTVアニメでもあっていいと思うんですが、なかなかないですね。これが今時のリアルかというと全然そんなことはない気はしますが。

漫画

さよなら絵梨

藤本タツキの作品はだいたい読んでいますが、その中でもトップクラスに好きな作品でした。ただなんというか、これ紋切型辞典みたいな作品なので、感想を言うのがすごく難しいですね。作品の中に読者が言いそうな感想をあらかじめ盛り込んでおくというのは、まあ結果的にそうなっただけで他意はないのかもしれないけど正直どうなのかなと感じます。それでも感想を綴ると、とにかく心に残るセリフが多くて、あと「みんなをブチ泣かして」のところでは正直ブチ泣かされました。普通に泣いておいてなんですが情緒が宙づりにされる感じも好きです。

やがて君になる

もともとすごく好きな作品なのですが、ふと読み直したくなり手に取りました。だいたい作品で一番感動するのって最初に読んだり見たりしたときなんですけど、驚くべきことにこの作品は初読時より今回の方が心が強く揺さぶられた気がします。『やが君』の魅力の1つは心理描写の論理的な説得力と、感情に訴えかけるドラマ的な説得力の両輪がうまく機能してシナジーを生み出しているところだと思うんですが、それを昔よりも強く感じたというか。再読でキャラの心情理解を深めることが、より大きな感動へダイレクトにつながりやすい作品なのかもしれません。ブームが再燃したので遅ればせながら手をつけていなかった入間人間のスピンオフ小説も読みまして、これまた素晴らしい作品だったのですが、その感想は後述。ブーム再燃の勢いに任せて友人と長時間トークした内容を文字にしているので、もしよければ「友人と語ってみた 第1回:『やがて君になる』——コミュニケーションの中で変わっていくこと」という記事にお立ち寄りください。

デビィ・ザ・コルシファは負けず嫌い

コトヤマ先生とちょっと絵柄が似ていて気になったので読んでみました。タイトルにもなっているデビィは表情豊か・ポンコツかわいい・「〜じゃのう」口調と三拍子揃った魅力的なキャラクター。六郎に恋愛感情を抱いているというほどではないけど、なんとも言えないほのかな好意を持っている塩梅もたまんないです。ほかに毎話登場を楽しみにしているのはエルちゃん。六郎を落とそうとして逆に天然タラシされた後からが特にいいですね。100パーセント美少女萌えで読んでます。

ゴールデンライラック

後述の『嵐が丘』を読んで、途中まで似た物語だなと思ったので再読。『ポーの一族』『A-A'』『アメリカン・パイ』『訪問者』と並んでこの『ゴールデンライラック』は何度読み返したかわからない萩尾望都作品の1つですが、本当にどれだけ読んでも感動が薄れないですね…。萩尾望都は物語全体のメタファーになるような小さいエピソードやフレーズを序盤に挟んでおき、それを終盤に反復するという技法をよく使いますが、この『ゴールデンライラック』もまた「恋人ならいいわ」とかラクダのコブのエピソードなどが最後に活きてくるのがニクい。個人的にはビリーの凶報に取り乱していたヴィーをハーバートが慰める場面が本当に好きで…。ここでハーバートが語る言葉は作品全体を象徴していますよね。

はねバド!

この作品と『ヒカルの碁』はアホほど読み返しているので去年や一昨年のオタ活まとめにもいちいち書いていなかったのですが、今回は益子泪に関する解釈が進んだので記録に残しておきます。詳細は「『はねバド!』益子泪の「俺」は誰なのか? ──天才が演じた人格のアマルガム」という記事に書いたので割愛。

マリッジ・トキシン

個人的な男の娘ブームが来ていたときに読んでやられてしまった作品ですが色々ネタバレになるので割愛します。男の娘好きは読め。

あやかしトライアングル

矢吹健太朗の新作。ジャンプから追放されたタイミングでささっと最新話まで追いつきましたが、意外とストーリーをちゃんと展開していた。読んでいてめちゃくちゃ久しぶりに『BLCK CAT』のことを思い出しました。

ウィッチウォッチ

お前ジャンプ漫画しか読んでねーじゃねえか!って言われるかもしれないけどジャンプ漫画が面白いんだから仕方ないよなあ!? 実は『SKET DANCE』通ってない勢なのですが、篠原先生の描く女の子ってめっちゃかわいいですね。というか絵がうますぎる。

ゲーム

Fate/Grand Order 第2部 第6.5章 死想顕現界域 トラオム

流石にアヴァロン・ル・フェほどではないのですが面白かったです。個人的にはサロメとクリームヒルトが好きかな…。

小説

BEATLESS

アニメがよかったんでまぁ当然読むよね。長谷敏司の作品はこれが初めてだったのですが、文章が独特でわかりづらいところがありました。そもそも難解な内容てんこ盛りなので僕がついていけてないだけ説はあるのですが、妹たちの集会のくだりがわかりにくかったのはなんだったのか…。色々知らなかった設定や腑に落ちていなかった設定について詳しく書いてあったのと、アラトくんがアニメ版よりも色々考えていたのが個人的にはとてもうれしかったです。アニメでもアストライアとレイシアの会話が難しかったのですが、ここが文字でじっくり読めたのもよかった。いろんなテーマが読み取れる作品になっていると思うのですが、僕がこの作品を読んでいて考えさせられたことは2つ。1つは「hIEに意識はあるのか、そもそも人間の意識はどういうふうに発生しているのか」ということで、もう1つは「信じるという判断は一体なんなのか」ということ。もともと神林SFや伊藤計劃が大好きな人間で、哲学の研究もしていた人間なので久しぶりにそこらへんを考えて楽しくなってしまいました。

Hollow Vision

長谷敏司のSF短編集である『My Humanity』に収録されている作品。『BEATLESS』の世界観で書かれていますが、液体コンピュータがどうとか、宇宙エレベーターがどうみたいな設定が出てきてびっくりしました。『BEATLESS』はラノベ的な側面もあったのですが、こっちはハヤカワ文庫っぽいというか…SF…でしたね…(浅い感想)

1カップの世界

『BEATLESS』のエリカ・バロウズがコールドスリープから目覚めた直後を描いて、いかにして22世紀の世界を憎むようになったのかを語った掌編です。アラトくんとか海内遼とかに比べてエリカはよくわからないキャラだったのですが、この『1カップの世界』を読んでなんとなく腑に落ちたし、世界に対するエリカの憎しみや怒りや悪意に共感できるようになりました。あと結構トンチキなエピソードもあって、こんな短い話の中でようこんな色々面白いことやっとるなという感じの楽しい作品です。長谷敏司の作品集に収められている小説というわけではないし書店でも手に入りづらいと思いますが、『BEATLESS』好きは読んで損なしと思うので未読の方は是非。『BEATLESS』とはなんの関係もないなんかのアンソロに収録されているらしいですが、初出は2018年に出たSFマガジンの『BEATLESS』特集号でして、僕はこっちを買って読みました。ちなみにこの特集号には長谷さんや水島精二のインタビューはもちろん、シリーズ構成の雑破業と髙橋龍也へのインタビューという座組的に地味に貴重な気がする記事も入っているのでおすすめ。

やがて君になる 佐伯沙弥香について

『やがて君になる』再ブームに伴い全3巻を読破。全体的な感想としてはとにかく最高の一言に尽きます。原作では恋に破れた沙弥香が幸せを掴むまでの話ということもあり、ファンなら9割が満足する内容なんじゃないでしょうか。
特に1巻のクオリティは脱帽の一言。佐伯沙弥香の小学生時代から中学生時代までが描かれているのですが、1話目の小学生時代の話からしてすごい。水泳教室で出会った女の子と色々あって悲しい別れ方をしてしまうという話で、胸を鋭い氷で貫かれたような感覚になるエピソードです。そのあとは原作でもちょっぴり出てきたあの先輩との恋模様が綴られますが、これまた原作再現度が高い。原作3巻に出てきた回想シーンとまったく同じ場面がこちらでも出てくるのですが、前後の文脈が違和感なくつなぎ合わされ補強されているせいで叫びたくなるようなつらい話になっています。そして小説3巻の終盤では1巻1話のモチーフを反復するような展開が…。
このスピンオフ小説の全体的な魅力は、とにかく佐伯沙弥香の愛おしい愚かさとでもいうべきものが描かれているところじゃないかなと思います。原作でも沙弥香の心の揺れ動きはもちろん描かれるのですが、それでもやはりクールな印象がある。けれども小説版で描かれる沙弥香の心は、その印象からするとびっくりするぐらい恋に浮かされ翻弄されて、不安定に揺れています。まぁ原作の沙弥香とはちょっとニュアンスが違うなぁというところはあるのですが、そこを差し引いても素晴らしい作品。仲谷先生はもちろん、このスピンオフ企画を考えた方と入間人間にはありがとうございますという気持ちしかない。

Last Encore Your Score

小説というよりは奈須きのこによるラスアンの原案シナリオ集。いわゆる脚本ともゲームシナリオとも違う独特のテキストだったので、純粋に物語として楽しむというよりは「奈須きのこがセルフ解説やツッコミを入れながら頭の中にある物語をラフスケッチしていくとこうなるのかー」という感じで興味深く読みました。でもやっぱり奈須きのこのテキストには独特のエモさがあるというか、正直終盤のトワイスと戦うくだりなんかは読んでいてアニメよりも感動してしました。

嵐が丘

『1カップの世界』を読んだことをきっかけに手に取った一冊。「なんの関係が…?」と思われるかもしれないですが、エリカ・バロウズの悪意に魅せられたことを踏まえて、悪意を描いた小説を読んでみようかと思ったのがきっかけ。じゃあその中でもなぜ『嵐が丘』なのかというと、以前読んだ、ジョルジュ・バタイユという思想家の『文学と悪』という本にエミリ・ブロンテ論が載っていて(念のため言っておくとそのときは『嵐が丘』は未読でした)、印象に残っていたからです。
実際に読み始めてみると凄まじい面白さで、「そこまで言う⁉︎」と思わされる激しい罵倒や皮肉の応酬に笑わされたり、情のもろさにつけ込まれてどんどんまずい方へ向かっていくキャサリン2世にハラハラしたりなど、いろんな楽しみ方ができる小説でした。ちょっとホラーぽいところも個人的には刺さったし、ネリーがいわゆる信用できない語り手なので深読みして遊べそうです。
またこの小説の中でも最重要人物と言えるヒースクリフは中々複雑な気持ちにさせられる男でした。後半はイザベラやキャサリン2世にヒースクリフの悪意が伝染していくのを読みながら「こいつが死ねば全部丸く収まるんだけどなぁ」とずっとイライラしてたんですが、前半と終盤には胸にくる描写があって、どうしても憎みきれないところがある。本当に最低の悪党なんだけど、キャサリンと互いを激しく求め合う姿には芯からの切実さがあって…。実際、好きな登場人物は誰だった? と聞かれたら、遺憾ながらヒースクリフとキャサリンと答えざるをえない(あとキャサリン2世)。現実にこんなやつが身近にいたら同情の余地がないどころか心底軽蔑して距離を置くし、普通にエドガーやイザベラに同情して味方すると思いますが…。
あと余談で、この作品は物語の構造がちょっと萩尾望都の『ゴールデンライラック』と似ているなと思いました。もしヒースクリフが善人だったら『嵐が丘』もああいう話になったかもしれない。ありえないことですが。

なめらかな世界と、その敵

前々から評判がいいのは知っていたし、気にもなっていたものの読めておらず、文庫化を機にようやく手に取りました。でも読んでみたら期待以上に傑作揃いの短編集で、なんで上製本が出たときに読まなかったんだと反省。やっぱり気になっていて世間でも評判になっているものはそのときに読まなきゃですね。どれも凄まじくエモい作品ばかりなのですが、わけても『美亜羽へ贈る拳銃』『ひかりより速く、ゆるやかに』が個人的なお気に入りです。謎を秘めた構成、未来やSF的な現象が起こった社会の描写のディテール、キャラクター同士の関係性の切なさが巧みに組み合わされており、どちらも抜群に面白く、奥深く、心が揺さぶられる骨太な作品でした。伴名練が編んだSFアンソロもちょっと気になっていたので、いくつか手に取ってみようと思います。

虚構推理

『絶園のテンペスト』があまりに面白いのでほかの城平京成分も摂取したくて読んだ1冊。前半はフーンという感じで読んでいたのですが、後半から終盤にかけての展開が凄まじい。推理小説で探偵の謎解きに使うものを別の目的に使うことでこんなに別種の面白いフィクションになるのかと興奮しました。

探偵AIのリアル・ディープラーニング

VOFANが描いたカバーイラストの美少女AIが可愛いくて前から気にはなっていたのですが、なかなか手を出す機会がなかったところを、『虚構推理』を買うタイミングで一緒に購入して読みました。文体は独特で作風はライト、しかし起こっていることはかなりエゲツないという不思議なキャラクター小説。探偵AIの相以と犯人AIの以相の対立構図が純粋にワクワクします。以相の言葉遊び設定が好き。

小説 はねバド!

『はねバド!』をオススメする記事を書いておきながら実は読めていなかったこのスピンオフ小説。読んでみたら思っていた10倍はいい作品でした。フレゼリシア女子の前日譚で、小町というオリジナルキャラクターが出てくるのですが、この子と唯華の関係がまあよくて…これ以上はネタバレを避けておきます。数年間積ん読していた僕が言えた義理じゃないですが『はねバド!』ファンならこれは必読。とくに唯華が好きな方は何をおいても真っ先に読んでほしい。ところで著者の望月唯一さんという方は寡聞にして存じ上げなかったのですが、この2〜3年くらい新作を出していない? 筆を折ったのか次回作の準備中なのかはわからないのですが、とりあえず過去作を読んでみようかなと思いました。

犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー―探偵AI 2―

探偵AIシリーズ2作目。個人的には短編連作形式がよかったり、相以のセリフ量や輔との掛け合いが多かったりした1作目の方が好きだったかも。とくに序盤のフレーム問題でポンを発揮していたところなんか相以が可愛くてよかったんですよね。そういう意味で2作目は以相の方がイルカのAIに当たり散らしているところなどキャラ萌え的な見せ場が多かったのですが、それはある意味タイトル通りか。相変わらずすごい勢いで前作で登場したキャラやその周辺人物を含め人が死にまくるのですが、ライトな作風なのに血も涙もない感じが逆にいいですね。

四元館の殺人 ―探偵AIのリアル・ディープラーニング

探偵AIシリーズ3作目。ネタバレは避けますが最後の解決編のオチがぶっ飛び過ぎててびっくりしました。ちゃんと伏線は張られていて、途中までは推理もできたんだけど、犯人当ては結構難しい。ミステリファンはこれ受け入れられるのかな。僕はその後の脱出編とでもいうべき展開が面白かったので全然よかったのですが、無茶するなぁと思いました。

ほねがらみ

ホラー小説のいろんな技術が織り込まれた作品。僕は『異端の祝祭』が初の芦花公園作品だったので、結構作風が違って驚きました。三津田信三の作品を読んでいても思いますが、こういう複数の資料をまとめた体のホラーは読者側が筋道を自分の中で組み立てたり、余白部分を妄想したりできるのがいいですね。

恋する寄生虫

初の三秋縋作品。とはいえ三秋さんという作家の存在自体はTwitterのおかげで昔から知っていて、彼の作品が好きな人たちの感性や、そういう人たちと僕の違いについての予想もぼんやりと抱いていたのですが、少なくともこの作品はその予想を裏付けるものでした。具体的に言えばひじりの最後の決断が僕自身の価値観と相容れなかったとか…でもストーリーテリングは巧みだったし、寄生虫や孤独など扱われているモチーフも好きでした。ほかの三秋作品もちょこちょこ読んでみたい。

シャインポスト ねえ知ってた? 私を絶対アイドルにするための、ごく普通で当たり前な、とびっきりの魔法

非常にキャラのクセが強いため、嫌いな人はとことん嫌いだろうなという作品。でもそのクセさえ受け入れられれば胸にくる展開が多くて面白い作品です。駱駝さん、キャラを魅力的に描くのが上手い方ですね…『俺好き』はキャラ愛を抱けるかという観点で言えばそこまでではなかった気がするのですが…ほぼ一気読みしました。

シャインポスト2 ねえ知ってた? 私を絶対アイドルにするための、ごく普通で当たり前な、とびっきりの魔法

1巻からさすがに失速するかなと思ったら変わらぬ面白さ。ラストの引きもアツい展開を予感させるものでした。多分並大抵のアイドルものでは太刀打ちできない程度には面白い作品なんじゃないかと思います。

体育館の殺人

初の青崎有吾作品。推理小説の状況を掴むのが苦手なので()読むのに時間がかかりましたが、面白かったです。よく傘一本からここまで話を広げられるなと感動しました。

ついてくるもの

いつでも読めるように書棚に積んである大量のホラー小説のうちの一冊でした。しばらく読むつもりはなかったのですがやっぱり三津田信三作品は面白くて抜群に怖い。『八幡藪知らず』をはじめ傑作揃いなのでホラー小説初心者に勧めるのにいいかもと思いました。僕も初心者ですが。

レーン最後の事件

『Zの悲劇』までは読んでいたのですが、これだけ手をつけておらず、改めて読んだら衝撃を受けたというか、正直打ちのめされました。これを読むのと読まないのとでは全然レーン四部作の印象が変わる。もしかして『Yの悲劇』のあれもそういうことだったのだろうか。

あれは閃光、ぼくらの心中

竹宮ゆゆこ大好きオタクなので新刊が出て速攻読みました。今まで男女の恋愛ものが多かった(例外もいくつかありますが)ゆゆこ作品の中でも、かなり珍しくBL色が強い気がする作品。勢いのある文章にぐいぐい牽引されながら「これだこれ」と久しぶりにゆゆこ節を堪能しました。

災厄の町

『レーン最後の事件』を読んで衝撃を受けたこともあり、ほかのクイーン作品も読みたいなと思って手に取りました。新訳版を買ったのですが、めちゃくちゃ読みやすくて素晴らしい訳業だなと感動。人間ドラマが濃厚、リーガルサスペンスっぽいくだりもあって、圧倒的な読み応えがありました。登場人物の中で一番好きだったのはパット。女性からどう見えるのかはわかんないですが(ちょっとずるい女だなという感じはするので)、愛情深くて人間味があって、個人的にはとてもチャーミングだと思う。クイーンが惚れるのもわかる。
この作品を読んで改めて思ったのは、自分は純粋な謎解きパズル的な推理小説より人間ドラマを掘り下げてくれる推理小説の方が好きだということ。あと内容とは関係ないのですが、カバーデザインがめちゃくちゃオシャレでかっちょいい。読むときはブックカバーかけてたんですが、読了してからはカバーを外して書棚にしまっており、時折引き出しては眺めてうっとりしてます。

フォックス家の殺人

『災厄の町』が最高だったのでライツヴィルシリーズをふたたび。読んでいて『ディア・ハンター』を思い出しました。
こっちは前作に比べてもう少し純粋な推理もの寄りな印象。『災厄の町』は色々と悲しすぎる結末でしたが、こちらは最後には事件に携わったほとんどの人が救われる展開でちょっとほっとしました。さすがにつらい展開続きだと、それはそれでいいのですが気が滅入っちゃうのも事実なので。本筋と関係ないところで言えばカーター夫妻やジョン・F・ライト夫妻にちょこっと言及があったりしてうれしかったです。

十日間の不思議

犯人の動機がよくわかんなかったとはいえ、クイーンの挫折が描かれていたのはよかったです。このあたりから精神分析の影響が露骨に出ていて興味深く読みましたが、探偵ものとして考えると、こういう心理学的な推理より、単純に物理的な推理の方が僕は好きですね…。

九尾の猫

舞台はライツヴィルではないし人間ドラマの要素も相対的に薄く、本当にミステリって感じの物語でした。逮捕劇もスリリングでよかったのですが、個人的には終盤、精神分析医にクイーンが慰められているシーンが印象的ですね。ちょうどセルフ・コンパッションと精神分析のことを考えていたので、その点でもいろいろと思うところがありました。

屍介護

介護を題材にしたユニークなホラー小説。前半は淡々としているのですが、後半の畳み掛けで一気に読まされる。タイトルがタイトルなので、被介護者が死体なのかどうかということをまず考えながら読むわけですが、たぶんズバリ正体を言い当てるのは無理。ただ伏線は割と張られているので少し考えれば真相の3割くらいは当てられるかと思います。
それにしてもホラー小説は子捨てとか流産とか、嬰児に関する題材を扱うことが多いですよね。とくに出産周りの話なんてかなりセンシティブなのでエンタメで楽しんじゃっていいんだろうかという気持ちはあるんですが、そんなこと言ってたらホラーなんて大概のものは楽しめなくなっちゃうので難しい。この作品にそういう倫理的な瑕疵があるという話ではないのですが、読みながらふと考えてしまいました。

かがみの弧城

はじめての辻村深月作品。ミステリー的な仕掛けの面白さと心理描写の細かさに圧倒されて一気に読んでしまいました。大変な傑作だと思いますが、辻村作品だとこれくらいのクオリティは普通なんですかね…?
こころちゃんの描写で素晴らしいなと思ったのは、単なる無垢で内気な被害者として描かずに、真田さんへの強い敵意や、弧城のメンバーへのモヤモヤした気持ちなど、ネガティブな感情もしっかり正確なニュアンスで描いているところ。他人の好意を悪く解釈していたのが、心を開いていくにつれてそれを素直に受け取れるようになるところなんかもリアリティがあったし、母親も子供の力になりたいという気持ちも思いやりもあるけど限界もある、人間味のある造形で…。こういう描写を明快な文体でここまでぼかさず細かく書ける技量には脱帽するしかない。こういう作品こそ子供に勧めたいなと思いました。

秋の花

物語はいい気がするのですが、やたらとペダンチックなくだりや肩肘張った変な文章が多くて気を散らされてしまい、うまく作品世界に入っていけませんでした。このシリーズに影響を受けたという米澤穂信の古典部シリーズにも、こういう感じは確かにありますね。あそこまでいくとラノベっぽいので逆にそんなに気にならないんですが…『かがみの弧城』の率直な文章を読んだ後なので余計に引っかかってしまったのかもしれない。まあそもそも『空飛ぶ馬』から読めよという話なのかもしれないですね。

ローマ帽子の秘密

レーン四部作と『災厄の町』から始まる四冊を予想より早く読んでしまったので、『ダブル・ダブル』の新訳が出るまでに国名シリーズでモチベーションを保とうかなと手に取った一冊。あまりに純粋な推理小説過ぎて個人的にはやはりライツヴィルシリーズの方が好きでした。巻末解説を読んで推理可能だったか考えてみたんですが、まあ普通に考えてヒントとなる推理をエラリイが披露しているので、そのときにちゃんと読み返して検証すれば絞り込めなくはなかったんだろうな。やってみればよかった…。

負けヒロインが多すぎる!

「負けヒロイン」というワードといみぎむる先生の絵に惹かれ購入。制服のリボン多すぎだろ!(かわいいデザインではあるのですがそれはそれとしてツッコまずにはいられない)
面白かったか?と言われるとよくわかんないというか、ラノベらしい中盤以降にめちゃくちゃカタルシスがあるタイプの話でもないのですが、主人公の微温的な一人称語りが割と好きで、クスリと笑える感じが良かったです。ちょこっとだけはやみねかおるを彷彿とさせるテイスト。
根本の設定について言えば、そもそも負けヒロインってふつうの恋愛ものの物語の中で負けるからエモいのであって、はなから負けヒロインを主軸にしていっぱい登場させたところで、オタクが普通の負けヒロインに求めている成分は得られないのでは?という疑問があり、それは実際読んでいてやはりそうだったなという気がするのですが…なんかそういう楽しみ方をする作品でもないっぽいので、じっくり関係性の変化を見守っていきたい。個人的には八奈見ちゃんが一番可愛い。

フランス白粉の秘密

『ローマ帽子の秘密』より圧倒的に面白かった気がしました。推理できる要素も豊富にあるし、何がどういうふうに起こったのかの想像の余地も色々あるし、解決編のエラリーもかっちょいい。僕は推理小説の犯人当てってあまり得意ではないのですが、これは運良く当てることができてよかったです。

負けヒロインが多すぎる!2

続巻を読んで良かったなぁと思わされた一冊。檸檬や温水くんの心理描写が丹念に重ねられていて、ドラマチックな起伏はないけどそのぶん生っぽいというか。もちろんちゃんとラノベではあるのですが、いい意味でラノベっぽくない感じもあっていいですね。
2巻まで読んで改めて思ったこととして、負けヒロインのよさっていうのは負ける瞬間のよさで、オタクが負けヒロインを称賛するときはだいたいそういうカタルシスのあるシーンを念頭にそうするわけなんだけど、ヒロイン本人からしたら負けた後にも当然人生は続いていくわけで、この作品は設定上そういう負けた後どうするかということに焦点が当たりやすい物語なんだなということ。ケアとか心の整理の話なんですよね。この作品で檸檬をはじめとしたヒロインが抱えるモヤモヤってたぶん劇的に解決するものではないし、誰かの一言でただちに癒されるものでもなくて。だからこそ温水くんみたいな、役にはほとんど立たないんだけどなんとなく気にかけてくれて、隣にいてほしいときにいてほしい人物としてベストではないけどベターではあるような奴が主人公をやっている意味は大きいのかもしれない。
あと話の筋とは関係ないんですが、八奈見が朝雲さんについて色々言いかけて、それを温水くんがなんか遮っちゃって、それを「あ、俺こいつに悪口言ってほしくないんだ」って後から気づくところが好きです。

オランダ靴の秘密

一つ目の事件と二つ目の事件でしっかり犯人が絞られていくように作られていて謎解き編でエラリーの推理読みながらめちゃくちゃ感動していました。背格好だけでもかなり犯人像は絞れるはずなのに、そこからちゃんと考えないとわからないようになっていて悔しかったですね…。でもなんとなく国名シリーズの犯人当てのコツがわかってきた気がする(ほんとか?)。

負けヒロインが多すぎる!3

淡々と物語が進むシリーズではあるのですが、今回は特にスーっと進行したという印象。すでにはっきりと敗北しているヒロインの話なので動かすのが難しかったのかなと思いました。最終的に温水くんが部長になるのは筋道としては理解できるんですが、それでいいのか…?と若干疑問が残る結末。うーんなんでだろう。しかしなんとなくいろんなキャラが増えてきて、ストーリーが多角的になってきたのはいいですね。かぐや様3期の最終話とか、クドリャフカの順番もそうですが、文化祭の話は群像劇っぽくなりやすいのがいい。

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