日本茶インストラクター協会の京都研修に参加しました!
日本茶インストラクター協会では支部に分かれて活動があり、資格試験合格後も研修や日本茶普及活動を行っています。今回はライターでもある私、日本茶インストラクターの熊本友里奈が所属する東京都支部の研修の模様をご紹介します。
それでは、1日目から研修の模様をお伝えします!
9:45 京都駅集合
新幹線で京都へ向かいました。
いつもお世話になっている東京都支部の役員さんに「もうお茶買ってんの!笑」とツッコまれました。今回の研修は29名が参加しました。今までのイベントや研修で顔なじみの方もいらっしゃれば初対面の方もいらっしゃいました。最初は緊張しましたが、参加者は全員日本茶インストラクターまたは日本茶アドバイザーです。お茶の話題ですぐに盛り上がりました!
11:00 永谷宗円生家見学
永谷宗円は江戸時代中頃に青製煎茶製法を開発し、日本の緑茶の基礎を築いた人と言われています。生家の中には日本最古の焙炉跡や解説の映像資料を見られるモニター等があり、現地のガイドの案内のもと見学をしました。
宗円の時代は抹茶が主流で高級品でした。庶民は「黒製」と呼ばれる薄くて粗末なお茶を飲んでいました。そこで宗円は日常的に庶民が楽しめる美味しいお茶を作ろうと決意。15年かけてお茶の製法を研究し、1738年に青製煎茶製法を生み出します。各地に売り込むものの、緑色ではお茶じゃないなどと言われてなかなか受け入れてもらえません。そんな中、江戸の茶商山本嘉兵衛は宗円のお茶を絶賛。天下一と命名して販売し、大流行しました。本当に美味しいものを庶民に届けようとする永谷宗円の情熱や、それを受け入れて流行させる山本嘉兵衛のセンス、かっこいい。誰より研究を重ねながら、周りの意見に流されず自分が本当に良いと思うものを推す強さを感じました。
12:00
宗円交遊庵やんたんにて彩りの茶汁セットをいただきました。
茶汁とは茶摘みや畑仕事の昼食に食べられていたお味噌汁。食べる直前に大きなやかんから京番茶をかけていただきました。初めての京番茶のスモーキーな香りに驚きました。京番茶はお土産に購入して1899の茶バリエたちに共有して楽しんでいます。茶汁セットには他にも茶葉の天ぷらなどお茶を使った料理が並び、お茶づくしの昼食でした。
13:30 抹茶工場、精選工場見学
工場は撮影NGのため写真はありませんが、抹茶工場で何十台もの石臼が自動で回る様子は圧巻でした。また、日本茶インストラクター試験のテキストで見たときは風で茶葉の選別がうまくできるのか半信半疑だった風力選別機も、本当に茶葉が飛んで分かれて落ちてくる様子を見て初めて納得できました。てん茶や抹茶の覆い香と少し香ばしさがあるような香りや厳重な衛生管理など、教科書では学べない体験ができました。丁寧に解説もしていただき、石臼で挽く際の熱で少し火入れの状態になることや最近はうまみ重視という品種についてのトレンドなど細かな部分も知ることができました。
2日目!
10:00 和束町に到着
茶摘み後、枝を整えた後とみられ、茶色っぽく見えますね。束ねてある黒い覆い(寒冷紗)を被せることで日光を遮りうまみが多い抹茶などに適した茶を作ることができます。茶畑の中に立っている背の高い扇風機のようなものは防霜ファンです。高いところの温かい空気を吹き下ろして茶葉に霜がつくのを防ぎます。覆いも霜を防ぐ効果がありますが、この茶畑は覆いと防霜ファンの両方があるスタイルなのですね。この急斜面で覆いをかけたり外したり摘採をすると考えるとかなりの労力だろうと思います。
高さ5~6メートルの散茶機(てん茶を高く拭き上げて蒸した時の水分を乾かして茶葉をバラけさせる機械)は大迫力でした。教科書で見て知ってはいたものの、実際に見るのは初めてで、てん茶を作るのにこんなに大きな機械を使うのだと改めて実感できました。グリーンハザマ製茶工場では自動選別やPC制御ができる最新の機械を導入しています。通常は2~4名必要な規模の工場ですが、システムのお陰で1~2名で稼働しているとのこと。操作は楽だとおっしゃっていましたが、農産物である茶葉を見極めて機械を設定するのも技術が必要で、職人技なのだと感じました。
工場を見学した後は和束茶カフェにて日本茶インストラクター京都府支部の皆様とお会いすることができました。宇治茶の生産、流通に関わる方々で、この研修のためにお力添えいただきました。ただ喉を潤すだけでなく、癒やし、ほっとする、「与生」を豊かにするのがお茶だという言葉に感銘を受けました。
13:00 黄檗山萬福寺に到着
萬福寺は中国福建省から渡来した隠元隆琦禅師が1661年に開創した黄檗宗の大本山です。隠元禅師がもたらしたものの一つがお茶やダイニングテーブルを使った食事形態と言われています。
千利休が侘び茶の祖・茶聖と称されるのに対し、煎茶の祖・茶神と呼ばれる高遊外売茶翁は萬福寺にて修行をしています。「代金はくれ次第、ただでも結構」といって庶民にお茶を振る舞い、上流階級の文化だった喫茶の風習を庶民にまで広めた人です。隠元や売茶翁が飲んでいたお茶は中国唐の釜炒り茶であったといわれています。抹茶が濁っているのに対して淹れた時に澄んでいるのが特徴で、これが文人に愛好される大きな理由となっていました。その後永谷宗円の蒸し製煎茶が誕生するなど、日本のお茶の変化の時代の舞台のひとつが萬福寺なのですね。
15:00 平等院見学
10円玉でおなじみの平等院の一角に、専属の日本茶インストラクターがいる茶房藤花があります。氷を入れてじっくり浸出させる贅沢な時間。苦みや渋みは少なく、蒸し暑い日に体にじんわりしみる美味しさでした。
16:30 京都駅で解散
1泊2日の研修はここで解散。個人ではなかなか入ることのできない工場の見学や、知識豊富な日本茶インストラクターの先輩方のお話もたくさん聞くことができとても充実した研修でした。
3日目!
せっかく京都まで行くならもっとみたいところがある!と個人でもう1泊して来ました。
12:00 ゆっくり出発して再び宇治へ
お茶壺道中のお茶壺や昔の抹茶の製造の道具、書物や茶器等を自分のペースでじっくり見ることができました。昨日、一昨日見学した工場の原型がこれなのだなと感慨深い気持ちになりました。
14:30 お茶と宇治のまち歴史公園交流館「茶づな」
「聞き茶体験」に参加して、てん茶、煎茶、玉露の飲み比べに挑戦。1回目はてん茶と玉露を反対に回答してしまいました。解説を聞いて2回目は無事に満点を取ることができました。こちらの体験での解説と昨日一昨日見た製造工程等が結びついて、こう作るとこういう味わいになるという部分の理解が深まりました。「茶づな」にはお茶のミュージアムがあり、映像や仕掛けを通して体を動かしながらお茶について学ぶことができます。
19:00 新幹線で東京に出発
大充実の京都での3日間もこれで終わり。お茶が私たちの手元に届くまでに様々な技術と労力が必要だと分かりました。まだまだ見足りないところもあるのでまた京都に足を運びたいと思います!
日本茶インストラクター協会とは?
NPO法人日本茶インストラクター協会は、日本茶の更なる普及活動の推進を行うことにより、歴史ある日本茶文化の継承と、新たなる茶文化を創造し、より広く社会の健康と文化及び教育の向上に寄与することを目的に、2002年2月に設立された特定非営利活動法人(NPO)です。(公式HPより)
日本茶インストラクターは日本茶に対する興味・関心が高く、日本茶全般について中級レベルの知識及び技能を有する者です。
日本茶の資格の種類について詳しくはこちら。
茶産地では生産者の会員も多いのですが、東京都支部は消費者の会員が多いのが特徴です。皆さんお茶に詳しくてそれぞれお茶に関する活動に参加されているなど、お茶が大好きな方が集まっています。
ホテル1899東京には宿泊者限定のティーカウンターがあります。今回資料館を見学した上林家の上林春松本店の抹茶も提供しておりますのでぜひお立ち寄りください。
本記事のライター:熊本友里奈
※7月23日時点の情報です。最新の情報は各公式サイトをご覧ください。