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ホテルデザインの小話|ホテル1899東京

ホテルのデザインとは、そのホテルの個性を表す重要なもので、訪れる人には楽しみのひとつでもあります。CHACHACHAブログでは、これまでホテル1899東京に関する様々な記事を紹介してきましたが、今回は、ホテル1899東京のデザインのアイコニックな部分に焦点を当てていきます。ホテル1899東京独自の美学とそのデザインストーリーを知っていただければ、ホテルに来るのがますます楽しみになるはずです。


ホテルデザインの方向性が決まったのは、2017年の春でした。ホテルのオープンが2018年12月なので、1年半以上前になります。当時1899ブランドは、飲食店である「レストラン1899お茶の水」だけであり、どのようなホテルにするべきか検討していく中で、都会の中心で流れるゆるやかな時間、お茶を通して人々の心を満たす場所を目指すべく、「現代的に解釈された茶屋体験」をコンセプトにしたデザインが進められていきました。

その中で、表現しなくてはならないものは多くありますが、印象的なデザインとして皆さんの目に留まりやすいのは「常にお茶を感じる」という要素だと思います。ホテルは個々が落ち着いて寛げる居場所であるべきですが、その中でデザインとしてどのようにお茶を表現していくのか。巨大な急須のオブジェを置けばわかりやすいかもしれませんが、それよりも1899としては、さり気なくお茶文化に触れることができる、記憶に残る飽きのこない設えを目指しました。

壁タイル(1階チャヤ)

ご覧いただいた方はご存知だと思いますが、1階チャヤの壁タイルには、ある模様がデザインされています。これは「お茶と過ごすゆるやかな時間」を表現し、茶室の畳の組み合わせからインスピレーションを受けている1899のモチーフパターンです。実はパンフレットやホテルカードにも主張しすぎない程度で入っています。お手元にある方は是非ご覧ください。

床タイル(1階チャヤ)

こちらはパッと見はなかなか気づけないかもしれませんが、床タイルも茶室からインスピレーションを受けているもので、畳の四畳半の組み合わせを表現しています。細かいですが、エレベーターの中まで続いているので、是非ご覧ください。

ペンダントライト(1階チャヤ)

店内で大きな存在感を占めているペンダントライト。なかなか珍しい形ですが、これは茶屋の和傘をモチーフにしているものです。レストラン1899お茶の水にも展開しています。

エンガワベンチ(1階チャヤ)

チャヤでは、「それぞれの居場所がある」をテーマに様々な席をご用意しています。その中でも「ゆったり寛ぐ縁側」をイメージした席が窓側のエンガワベンチです。ふかふかのソファも落ち着きますが、フラットな造りの席で飲むお茶も良いものです。縁側でお茶を飲むように外をご覧いただきながらゆっくり過ごしてください。

ガラスの衝突防止シール(1階チャヤ)


透明なガラスには、衝突防止のためにシールやサインが付いていますが、ホテル1899東京のガラスには、1899モチーフパターンが使われています。小さな部分なので、気づく人は少ないかもしれません。

ティーカウンター&レセプションカウンター

2階に上がっていただくと、ホテルを象徴するインテリアになっており、「庵」から発想を得たフレーミングになっています。右側がレセプションカウンター、左側が茶バリエが淹れたお茶をお楽しみいただけるカウンターになっています。

茶筒を模したテーブル(1階・2階)

1階、そして2階のショップコーナーには、実際に商品を手に取って、よく見ていただくために、テーブルをご用意しています。銅の茶筒をイメージしたデザインにしており、館内の雰囲気作りに役立ってくれています。

丸窓(2階・客室)

和室の丸窓を模したインテリアで、丸窓を通して、外の景色を覗くことができます。丸窓は、客室内にも採用。どの部屋タイプにあるか見つけてくださいね

客室階の廊下カーペット(客室階)

1階の壁タイルと同様、1899のモチーフパターンを元にしたデザイン。廊下の照明が、カーペットデザインを浮かび上がらせます。

フロアサイン(各階)

客室の階数を示すフロアサインは、お茶の道具である茶さじからインスピレーションを得たデザイン。

エレベーターサイン・トイレのサイン(各階)

これらのサインもお茶道具をモチーフにデザインしています。茶釜からお湯をくむための柄杓を上から見た形にしており、トイレの男性・女性を表す部分は、茶杓の形をイメージしています。

客室番号のサイン(客室階)

各客室の横に設置している客室番号を表すサインは、襖の引手をモチーフにしています。客室ドアを通って、別の空間に入るにあたり、襖とドアを重ね合わせた表現になっています。

茶筅ランタン(客室)

ご宿泊いただいたお客様がSNS等で多くご紹介いただけるのが、客室内のライト。抹茶を点てる時に使用する茶筅をモチーフにした照明で、ホテルスタッフは「茶筅ランタン」と呼んでいます。


いかがでしたか。
宿泊施設としてお茶を表現するにあたり、どこにいてもお茶を感じられるような、そんなコンセプトを体現するために、館内のデザイン各所にお茶の要素を散りばめています。普段、お茶の道具に馴染みのない方は気づかない部分もあるかもしれませんが、次回ホテルにお越しの際は、是非、一つひとつのデザインに注目いただければと思います。


本記事のライター:濱田裕章