『エクアドール』自作解説①概要

拙著『エクアドール』(双葉社)の発売にあたりTwitterに投稿した内容を以下に再掲します。
【元ツイート】
https://twitter.com/Tacky_Shiro/status/151843871324769075


昨年「小説推理」に連載した『エクアドール』の単行本が5月19日(木)、双葉社から刊行されます。大航海時代の琉球~東南アジアを舞台とする冒険小説。勢力を増す倭寇に対抗できる新兵器「フランキ砲」を手に入れるため、琉球人たちがポルトガル領マラッカを目指す物語です。

中世の那覇港には実際に倭寇対策の砲台(屋良座森城と三重城)が築かれていましたが、そこに設置されていた大砲をどうやって入手したかはよくわかっていません。そこから想像を膨らませていき、琉球王国の南蛮貿易、後期倭寇、西洋のアジア進出を絡めた大冒険を描きました。

時代は1540年代初頭、種子島への鉄砲伝来前夜です。このころ東南アジアの国々は競ってポルトガルの新型火器を手に入れようとし、日本より一足早く火器による戦争の時代を迎えつつありました。ポルトガル人が日本に伝えた鉄砲はマラッカ式火縄銃といい、マラッカで改良されたものと考えられています。

特にマラッカ海峡では、ポルトガル領マラッカ、マラッカ王国の亡命政権、オスマン帝国に支援された新興国の三者が、長きに渡る三つ巴の戦(三角戦争)を繰り広げていました。主人公たちはその危険な海域に踏み込み、彼らの常識を超えた火器による戦争に巻き込まれていくことになります。

とはいえ、日本刀を主力武器とする倭寇が東シナ海を制したように、刀が強力な武器であることには変わりありません(ハイメガ粒子砲の時代でもビームサーベルは強いのです)。この物語ではチャンバラ・銃撃・砲撃・つかみ合いによる戦闘が入り乱れることになります。

出発時の「旅の仲間」は、元・倭寇の主人公、現役の倭寇、名門の御曹司、那覇の豪商、航海を指揮する中国系帰化人などです。わざとらしいほど多種多様ですが、琉球使節がこういうメンバー構成になるのは、史実でも特にめずらしいことではなかったと思います。

さまざまな国・民族・言語・宗教・価値観が入り交じる「文明の十字路」東南アジアで、主人公たちはホラ吹きのポルトガル人、生真面目なムラユ(マレー)人少年、悪そうな倭寇、優しそうな倭寇、歴戦の老提督など、さまざまな人々と出会い、あるいは敵対し、あるいは友情を結びます。

主な舞台になるのは、那覇、アユタヤ、ジョホール、そしてポルトガル領マラッカです。全十章のうち前半の五章はマラッカまでの旅路編、後半の五章はマラッカ編という美しい構成です(自画自賛)

単行本化にあたり、「小説推理」の連載から大筋のストーリーは変えていませんが、登場人物をさらに掘り下げ、さらにカッコよく彼らの活躍を描きました。連載を読んでくださった方にも、ひとまわり以上面白くなった作品を楽しんでいただけると思います。

ということで、5月19日(木)発売の長編『エクアドール』(双葉社刊)をよろしくお願いします!


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