携帯がいない
忘れ物が異常に激しい。
わたしは今まで生きてきて、数えきれないほど忘れ物や紛失をしてきた。特に携帯電話。これをよく失くすのだ。もちろん、モノが勝手に動くわけではないので置き忘れなどの注意不足が原因なのは明らかだ。がしかしである。
感覚としては「紛失」というよりはモノが勝手にいなくなるようなイメージでなのだ。足でも生えているんじゃないかと思うくらい、いつもそこにいない。そして何度も失くす度、大きなショックと自分に対する絶望感、不信感を抱かずにはいられずそれはそれは激しく落ち込む。
そのことでよそ様にご迷惑をかけたのも、一度や二度ではない。その度に周りを巻き込むことに大変な罪悪感を感じる。だからこっそりと悟られないように探すようになった。
ある時、ふとなぜ自分がモノを失くすのか真剣に考えた。よくよく当時のことを振り返ると、モノの置き場所が決まっていないことがそのほとんどの原因だ。常にその辺に置く癖があり、さらにその前後の記憶が全くないのである。この気づきは大変な衝撃で、愕然とした。
これ以上実損は出したくない。
いつだったかまた失くした時にそう強く思った。その思いで、ずっと渋っていた首からかけるストラップに手を出す。何となく恥ずかしさがあり避けていたのだが、もう背に腹は変えられない。潔く黒のストラップを購入し、ぶら下げることにした。
そこからはもう、快適ライフのはじまりである。携帯電話を失くすことがなくなった。さらに、電子マネーやポイントカードを出す時いちいちポケットから出す手間も省け、着信があったら素早くでることもできる。最高のパフォーマンスだ。変な見栄を張らずに、早くやっておけばよかったのだ。
モノを失くしたことに気づいた時の衝撃たるやトラウマ級なので、心の傷を深くしないためにも変なプライドは捨て去り、早めに対策することが重要であるとつくづく思った。