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美術館訪問記①

 今回は、晩秋から冬にかけて訪問した美術館について書きます。

 まずは、長野県の小布施にある北斎館。葛飾北斎は、晩年に何度も小布施を訪ねています。お祭りの屋台の天井絵を描いたり、小布施の郊外にある岩松院というお寺の天井絵を描いたり。岩松院は、今回は行けなかったのですが、「八方睨み鳳凰図」という天井絵を直に見ることができます。小布施の中心部からは少し離れているので、観光シーズンに行ってもわりとすいています。北斎の下絵をもとに娘(葛飾応為)や弟子が描いたという説もありますが、何度見ても圧倒される絵です。

 北斎館は、いつ訪ねても違う絵を見ることができる、所蔵品の数が多い美術館です。去年の11月に訪ねた時には、「怪力の魅力」というテーマで、主に北斎の読本挿絵が展示されていました。
 北斎の絵といえば、もちろん、浮世絵が最も有名ですが、肉筆画や本の挿絵も抜群の迫力だと思います。

北斎漫画 より
絵本和漢誉 より

 ところで、北斎が晩年に小布施を何度も訪ねたのは、豪商の高井鴻山に招かれたためです。鴻山は、パトロンとして北斎を支えただけでなく、自分でも絵、漢詩、和歌などを創作したのですが、特に妖怪絵で有名です。
 北斎館のすぐ近くにある鴻山の旧邸が高井鴻山記念館として公開されています。今回は、鴻山が所有していた絵画も展示してあったのですが、その中になんと、伊藤若冲の屏風絵がありました。よく見る若冲の絵とは違い、鶏を水墨画風に描いたものでしたが、白黒なのにとても若冲らしい…。高井鴻山の交友範囲の広さと眼力、財力に感じ入りました。

小布施で食べたモンブラン

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 次に、年末に訪問した国立近代美術館。この時は、noteで近美の常設展の記事を読んで、展示替え直前に滑り込みました。常設展のみの鑑賞です。

 見たかったのは、オスカー・ココシュカの『アルマ・マーラーの肖像』です。
 最も偉大な芸術家は?と訊かれたら、迷わず、グスタフ・マーラーの名前を挙げるぐらいに、作曲家のマーラーが好きなのですが、アルマはマーラーの妻であり、ミューズでもあり。マーラーの死後に、ココシュカと恋愛関係になりました。

 これが、見たかった絵…ココシュカの絵は、暗く、激しい印象のものが多いと思っていたのですが、これはずいぶん違いますね。写真で見ると、アルマはもっと可愛い方です…。

ジョルジュ・ブラック『女のトルソー』
パウル・クレー『山への衝動』
草間彌生『集積の大地』

 草間彌生の近作はどうも苦手なのですが(何と畏れ多いことを💦)いくつか見た初期作はどれも、とても心惹かれました。

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 次は、軽井沢旅行で行った安東美術館。3年前にオープンした美術館です。駅から徒歩数分。大賀ホールのすぐそばにあります。

寒い日なので、矢ヶ崎公園の池も半分凍っていました
浅間山が綺麗

 安東美術館には、安東夫妻が収集した藤田嗣治(レオナール・藤田)の絵が展示してあります。
 私にとって、藤田の絵で一番印象的なのは、国立近代美術館にある戦争画です。藤田が戦争中に描いた絵…国威発揚のために描いたプロパガンダ作品なのですが、そんな言葉で片付けられないほどに強い印象を残す絵ばかりです。極限状態における人間の佇まいが伝わってきます(解説文を読むと、タイトルがプロパガンダ的なので、一応認められたけれど、絵自体が本当に自分たちの意図に添うものなのか、軍側も納得していなかったのがわかります)。これらの絵のせいで、藤田は戦争責任を追求されることになるので、本人にとっては忘れたい絵だったかもしれませんが…。
 それ以外では、アーティゾン美術館や近美にある絵も、素晴らしい。
 安東美術館には、そういう傑作とはまた違い、画家が楽しんで描いたんだろうなということが伝わってくる絵が多かったです。コピーでもいいから、自分の部屋に飾りたくなるような(この美術館では、3枚以上を入れる形なら、写真撮影ができます)。
 

パリの風景を描いた絵
初期作品
藤田らしい絵ですね
4番目の妻、マドレーヌを描いた絵。レア・セドゥ似の方でした
子どもの絵
猫の教室
猫の絵がいっぱい

 極寒の軽井沢ですが、行って良かったです。

万平ホテルのアップルパイ

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 最後に宣伝を。吉穂みらいさんのスタンドFMにお邪魔して、色々喋ってきました。ぬいぐるみ、新選組、画家の中村彝などについて語っています。話すのが苦手で、すぐに早口になってしまうのですが…いっそ、大阪弁で話そうか?と検討中です。家事や散歩のお供に聴いてみて下さい。


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海人
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