生産性を4つの視点で考える
こんにちは、
東京コンサルティングファームの大橋 聖也です。
2016年よりフィリピンに赴任し、ASEAN拠点を中心に日系企業の海外ビジネスの支援をさせて頂いてます。
今後の海外子会社は、量的拡大から質的向上へと転換していきます。
特に人件費メリットは年々薄れていく中で、1人当たり生産性こそが重要なテーマになります。
シンプルに100人で10億の売上を稼ぐ組織と50人で10億の売上を稼ぐ組織では、生産性は2倍近く違いがあり、これが組織力の差になります。
少ない人数で大きな成果を上げられる組織は、圧倒的に1人当たり付加価値が高く、かつ不要な管理コストが発生しない為、高収益体質の組織となります。
生産性は、少ないインプット(人や時間)で多くのアウトプット(成果)を出すことであり、
マネジメントは常に、「現状の成果をより少ない時間で出すこと、そして現状の時間でより多くの成果を出すこと」を問いかけし、組織の成長を促していかなければなりません。
つまり、現地を任される拠点長・海外駐在員は、この生産性という観点で海外子会社マネジメントを常に4つの視点で捉えていくことが求められます。
4つの視点のベースは、バランススコアカードを使っていきます。
<財務の視点>
社員の生産性を測る指標に、労働分配率(粗利益額÷人件費)があります。
労働分配率が高くなると、人件費に対する粗利益額が減少し、
労働分配率が低くなると、人件費に対する粗利益額が増加していること意味します。
つまり、労働分配率が下がるほど、1人当たりの粗利益額が増え、組織の生産性が高くなっていると言えます。
しかし、人件費は、単なるコストと捉えるだけでなく、未来への投資と考えることも出来るため、一概に、労働分配率を下げることが良いという意味ではないため留意して下さい。
重要なことは、利益額が最大化する適正な労働分配率を設定し、それを基準値とした人件費コントロールをし、組織の生産性を維持向上していくことです。
<顧客の視点>
売上は、数量×単価で決まります。
営業部隊が自部門のノルマ達成に注力し量だけを追求すると、どれだけ販売数・顧客数を増えても、販売価格が低ければ、忙しい割に会社の儲けは増えないということが起こります。
そして、次第にクオリティー問題を起こし、結果として顧客も離れていってしまいます。
京セラの創業者である稲盛氏の言葉に、「値付けは経営なり」とあるように、価格/単価は商品・サービスの量や利益幅を決めてしまうほど、重要な仕事であると意味します。
そして、理想の値付けとは、「お客様が喜んで払ってくれる最高の価格」と定義しています。
これは価格勝負ではなく、いかに商品・サービス・人材の付加価値を高めて、お客様が納得して払える最高の価格設定をしていくかが重要ということです。
安さを追求したコストリーダーシップ戦略を取れる企業は、極めて一部の企業のみなので、価格で勝負するのではく、価値で勝負することを考えていかなければなりません。
<プロセスの視点>
最も大切な経営資源は時間であり、マネジメントで最も重要なことは、スピードです。
1つ目が、会議です。
どんな組織でも様々な会議が行われていますが、会議時間の8割近くはムダな時間になっていることが多いと言われています。
つまり、会議の場が単なる定例の報告会や情報共有止まりなっており、意思決定や問題解決の時間といった成果に繋がるディスカッションが出来ていないのが実態です。
*会議の生産性については、別途お話します。
2つ目が、間接部門の縮小化です。
日本電産の永守氏は、「本社の一等地の場所を、付加価値を生まないスタッフが占める会社は、早晩ダメになる」というのが口癖だそうです。
また、生産性を上げるために、徹底して本社や間接部門を減らし、同時に1人2役・3役を担うといった多能工化することを進めていきます。
私自身も、フィリピン拠点の現地マネジメントした際には、フィリピンスタッフを多能工型人材に育てることで、飛躍的に生産性を上げることが出来ました。
3つ目が、原価計算です。
ABC(活動基準原価計算)を考え方で、社員一人ひとりのタイムシート作成し、直接的に付加価値を生まない間接時間を集計・分析することで、各工程でのボトルネックを特定していきます。
そして、毎四半期ごとにボトルネックを解決に向けて、生産性を高める要素となる価値ドライバーに対するプロセスリエンジニアリングを進め、時間の効率性・有効性を徹底していきます。
<組織の視点>
より付加価値の高い商品・サービスを提供し、そのためのプロセス改善を推進していくには、社員一人ひとりの意識改革、そして組織の文化形成が重要になっていきます。
トヨタでは、「仕事=作業+改善」と定義しています。
つまり、毎日のルーティン業務を作業としてするだけでは、仕事をしたことにならず、
社員一人ひとりが問題意識を持って、日々改善を行うことが徹底されており、これが組織の企業文化として根付いています。
社員の意識改革を図るには、一人ひとりの責任範囲をいかに拡げることができるかが、ポイントになります。
以上、海外子会社マネジメントの生産性を考える上で見るべく4つの視点をご紹介しました。
次回は、生産性を向上する際のボトルネックと社員の意識改革についてお伝えします。
海外子会社マネジメントにお困りの方は、お気軽にご相談・ご連絡お待ちしております。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm
ASEAN Regional Manager
大橋 聖也 (Seiya Ohashi)
~プロフィール~
2012年東京コンサルティンググループ入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングの立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事を解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。
2016年よりフィリピンに赴任し、日系企業のフィリピン法人設立、会計税務、人事労務などのワンストップサービスに従事。現在、マニラ・セブにて顧客数100社超、日本人4名・フィリピン会計士25名・フィリピン弁護士2名合わせてローカルスタッフ50名超まで事業を拡大中。
2018年よりフィリピン・ベトナムを中心としたASEAN拠点統括を兼務。