ひよこ日記 朝、テレビの星占いで最下位だった。
某月某日、朝のテレビ番組の星占いで、トラブルに気をつけましょうって言ってた。
わたしはんなわけあるか。とタルティーヌを食べながら一人でツッコミをいれていた。
昼の15時。必要なくなった資料や書類を仕分けして年度別保存してそれをダンボール5箱を積み上げ、カートでガラガラ押しながら倉庫に向かっていた。みんな忙しく手が空かないのでもろもろの業務がちょっぴり一段落したわたしが名乗りをあげた。使わない資料は部署の一角に山積みとなっていて、わたしからしてみると邪魔でしょうがない。
ミラ部長から一人でしなくていい、だれか補助をつけなさいと言われたのだがヘルプをお願いできるような雰囲気ではなく、別にこのくらいなら一人でもできるし。とタカをくくっていたのであった。後輩のアンナちゃんやベン君が自分も手伝います。後からすぐ行きます!と言ってくれたけど、ふたりともこれから研修が入っているため
いーよいーよ大丈夫!と先輩風を吹かせ
カートを押しながら倉庫に向かった。
ひろーい倉庫で片付けしているときに一つのダンボール箱が重みでバラけて破損してしまい、あああーと思ってあっちこっちに散らばってしまった資料を拾いあげようとかかんだら、他のダンボールが雪崩を起こして私の方に向かって落ちてきた。
咄嗟に避けようとして無理な体勢になったのか足首を捻ったぽい
そんでさらに顔面に資料の角っこがあたった。かなり痛い。
ダサいダサすぎる…
倉庫には他に誰もいない。
どーすんだこの散らかり
どーすんだ収集つかねーぞ
果てしなくダサい。さっきええカッコシイして先輩風吹かせたのが水の泡。
しかし足を捻ったのか立ち上がれない。
ヤバい。誰もいない倉庫にひとりきり。
スマホも持ち歩きしてない。よって助けを呼べない。
…もしものときの緊急ブザー押すしかない感じ?
でも今動けない。足がじんじんして立てないし歩けない。
這いつくばってずりずり移動する。
着ていた服がみるみる汚れ、擦れるからボタンは千切れとなんだかひどい有り様になってきた
この洋服クリーニングして汚れ落ちるかな?
はああ、とんだ厄日だ。あの星占いナメてた!
ブザーをおすとすごい大音量で館内全体に鳴り出した
…また絶好のネタを提供してしまったじゃないか。しばらくイジられるの確定だわ。
倉庫の床に疲れ果てて大の字で転がっていると警ら隊員の人が倉庫になだれこんできた
大丈夫ですかっ!!
あー詰んだ。警ら隊の中に友達のアレックスがいた。
恥ずかしい。マジ恥ずかしい。
しょうもない理由でブザー鳴らしてはいけないやつだったのかもしれない。
気を失ったフリをしたい。。いやむしろ気を失いたい
四方八方ににバラけた資料、ダンボール箱が横倒れになっている。床に転がったままのわたし
大丈夫です…か?
警ら隊の人たちがわたしを見るなり目を見開いている
!は?!ひよっっっ!?
あ、アレックス。はろー
はろーって…おま
大丈夫大丈夫。大丈夫だから。
大丈夫じゃねーから!
動くな!いいな!!といいながら隊員さんたちはどこかに電話している
…はい
とか言ってるうちにミラ部長と会議中に緊急で呼び出されたフレッドが駆けつけてきた。
すみません、すみません、すみません。ご迷惑おかけしました
フレッドとミラ部長はわたしの様子を見てものすごい顔が引き攣っている。怒ってんのかな?忙しい時にわけわかんない緊急呼び出しで。
フレッドなんて無言すぎてみるみる表情が無になっている。黙りこくってヤバみが増々なフレッド
急ぎますので!と警備隊員から言われて
いや大丈夫だからといっているのに半ば強制で担架に乗せられフレッドとミラ部長は一緒についてきた。
温かい何かが顔を伝ってツーポタポタと落ちてくる。ツーの何かはなんだろうか
この期に及んでまさか鼻水垂らしてる?とか思いそっと手で拭うと鼻血だった。
えええええ!!だっさ!!
あの…何か拭くものくれませんか?
すぐに誰かがハンカチを差し出してくれた。そして何かかけてくれたのか冷たい床にへばりついて冷えたからだが温められてる。どうも上着っぽい。
すいませんすいません、誰のかわからないけどお借りします。新しいもの買ってお返ししますので
わたしは軽く意識が飛んだ。
次に気がついたら医療室のベッドに寝ていた。
フレッドがベッド脇の椅子に座って心配そうにわたしを見ている
お、おはようございます?みたいな?
しかし無言。
フレッドは何かを言おうとして言えなくて
額に手を当て何かをボソボソと言っている
え。なに?
なにがあった?いいたくないなら言わなくていい。いや、それは終わってる。捻挫だそうだ。
いやいや大したことないから
大したことないわけないだろ?服が…
ああ、これは。ちょっとあの匍匐前進を。
は?
なんかされたり…そ、、破かれたとかじゃないんだな?
いやいやいやいやほんとないから。これはちがうから!落ち着いて。
そうか…
ちょっとしたまた沈黙。多分きっと昔の事があったから余計許せないんだろう。
様子がおかしい彼に大変申し訳ない気分でいっぱいになった。
ほんとうに誰にも何にもなんにもされてないから!ちょっとしたアクシデントなの!信じて!!
フレデリック大先生はだんだん調子を取り戻してきた。
どれだけ心配したとおもってるんだ
顔に血がついてるわ服はあちこち破けて床に転がってるわ、足は捻挫してるし、意識なくして担架に乗せられているのをみたオレの気持ちも考えてみてくれ
ですよね。ごめんなさい
ミラ部長も顔面蒼白だったぞ。
だよね。謝らなきゃ。
かっこつけて仕事引き受けた罰でしょうか
知らん
怒った?
いいや。
お前…なにしたら服ああなるんだ?
あ、えっと。
ああ。
足くじいて立てなかったから。
うん。
匍匐前進してブザー鳴らした
匍匐前進?
匍匐前進。まちがいない。わたしがずるずる這っていったから服がめちゃめちゃ汚れたの。
はは、そうか…
フレッドは笑いながら心から安堵したのか少し涙目だった
アルベルトには内緒にしてね?
無理だな。連絡がいってる。
ええええ。
無事だから笑えるがそうじゃなかったら笑えない。アルベルトが黙って見過ごすわけないだろう?
前もはんごろ…いやなんでもない。
捻挫におかんむりだった?
いや。大丈夫だ。
うん?
アンジェリーナのモンブランで許してやる。
あ、そうだ。わたし誰かのハンカチと上着かけてもらったみたいで…汚したから…名前聞きそびれた。見てない?誰かわかる?
ああ、それはオレのだ。
フレッドのだったんだ。
そのまま連れて帰りたかったくらいだ。
さーせんさーせんさーせん。
ま、バツとしてジャケット一着買ってもらうのもアリだな。
ひ…ジャケット…。うん、そうだね
冗談だよ。
ですよね。
いや、マジだけど。
ですよねー
はあ、良かった。ほんとうに良かった。