見出し画像

裏裏ひよこ日記。(特別付録版)もう一人のオレに召喚される。

消えないだろうって話を聞いて安堵していた。この何日かやたら忙しくて情報量が多くて
結構頭はいっぱいいっぱいだった。

とにかく今ある幸せを死守したくてどうやったらうまく事が運ぶのかそればっかり考えていた。えらく遠回りした目の前の女の子を放したくなくてそういう気持ちはかつて抱いたことがなくて自分が自分に戸惑っていた。腹は決めたがだがその時を迎えない事には何もわからない。そんな状況。
疲れすぎて夕飯を食べた後に猛烈に眠気に襲われた。シャワーもあびずに横になる。日頃の疲れも重なったのかすぐに眠りに落ちた。

おい。起きろ。と、聞いたことがある声がする。何だよ寝入りばなに…と目を開けるとまだ夢を見てるらしく視界は暗いし、風景がはっきりしない。声は少し遠くから聞こえる。

…??

いいご身分だな全くよ。

この物言いなんか聞いたことがある。

なん…

さっさと起きろ時間がねえんだよ。

は?

覚めない頭のまま辺りを見回すと不意に暗闇からそいつが現れた。

ああ、こいつ知ってる。ていうかオレだわ。

手がかかるやつだな。あいつが言うから黙ってたがこっちはそうはいかねえんだよ。

何なんだ?いったい。

要件いうぞ。
もう一人のオレは淡々としてる。

お前こっちに呼ぶから

…消えないんじゃなかったのか

それはあいつがそういったがオレは違うからな。とにかく一回来い。

あー、かつてのオレこんなだった…

聞いてんのかよ。

聞いてる。

なら行くぞ


ひよこどうすんだよ。

少し話す時間くらい残せよ。わかるだろそんくらい。

10分だけ待ってやる。それ以上は待たない。

わかったよ。

オレは完全に目を覚ましひよこの部屋を訪れた。

ひよこは机に向かって熱中して書き物をしていたようだった。風呂上がりなのか部屋は温かくて仄かに柔らかくいい香りが漂っている。

やっぱりこいつと離れたくない。がこみ上げてくるが今そんな事言っていられない。

どしたの?

変なんだ。空気が揺らぐ

まさかもう一人のオレが召喚しにきたなんぞ言えるわけがない。

ひよこはそれだけでハッとした顔になり
机にあった封筒をバッと取ってオレに押し付けてきた。

今すぐ読んで!!今すぐに!

今?

今すぐ!

わたしのところに帰ってきたくなるように今すぐお手紙読んで!!

わたしのところに帰ってきたくなるように。って可愛すぎないか?等を思ったがそれを言い出したらきりがないのですぐ手紙を開封して2通目のひよこの手紙を読んだ。

まさしくそれは何か起きたときに今すぐひよこのところに帰ってきたくなるようなそんな手紙だった。胸が温かくなるそんな手紙。
後生大事に持ち歩きたくなるようなそんな言葉がたくさん散りばめられていた。
こういうとこ外さないんだよなあ。と感心する

時間だ。不意に頭の中から声が聞こえる。

もう少し。

だめだ。

そんなやり取りを脳内で繰り広げているうちにひよこの目が嘘でしょ?とまんまるになっていった。


フレッド
わかってる
帰ってきて
わかってる。


…必ず帰る
確証がないのにそんな約束をした。

ごめん

みるみる自分の意識が途切れがちになり
消えるのが自分でわかった。

次に気がつくとあいつがスタスタ歩いて先導していた。

話が違うじゃねえかよ。
そんなの知るか。

もう一人のオレは容赦がない。
そんな時代もあったな…とぼんやり回想をめぐらす。

たどり着いた先はやっぱり思った通りにもう一人のひよこがいる場所だった。

は?なんで?
もう一人のひよこが驚いている

オレが召喚した。

ちょっとちょっと。何してくれてんのよ

何いってんだ?全部お前のためだ。

こっちのオレもこっちのひよこをめちゃくちゃ大切にしてるようだった。それはそういったところは変わらないらしい

聞いてないんですけど?
言ってないから聞いてないだろうよ

何開き直ってんのよ。あんたバカなの?

こっちのひよこはあっちのひよこより物言いがはっきりしている。

早く帰してあげなさいよ

お前のためにならないことはいっさいするつもりはない。

あーあーあー、わかる。それすげーわかる。やることにいちいち説明つけないこととかそういった類をまるっきりシカトするとこも。

わたしのためにならないことは?そんなの頼んでないんだけど?

こっちのひよこはなんていうか中にライオン飼ってるんじゃね?てくらい言うときはいう。
見た目はあっちのひよこに似ているが中身がちがう。オトナバージョンのひよこだ。

うるせえな。融合に必要なんだよ。

話し合ったよね。話し聞いてる?

なんだか一触即発の雰囲気だ。

オレはある程度覚悟していた。不完全な統合になりはしないだろうか?そうだったらオレはオレを融合しないといけない。と

何よりお前を優先する。他の事など些末な事

はあ?ふざけんじゃないわよ。わたしがこれでいいって言ったんだからあんたも一回それで納得したでしょ?

お前な。わかってる?

わかってるわよ。

いいやわかってないね。

あの…

何だ?

オレの推測とだいぶずれてるんだが。

当たり前よ!こっちのフレッドがやらかしたからね!

やらかした?ふざけたこと言ってんじゃねえぞ。オレはお前を最優先するといったはずだ。

あー、どうすっかなこれ。目の前でもう一人のオレともう一人のひよこが揉めている。オレが仲裁に入るべき…なんだよな。


フレッド。聞いて。

なに

わたしの幸せ奪わないで。あっちの世界を壊しちゃダメ。ひよこちゃんを送り出したとき決めたでしょ?わたしの幸せなの?わかる?



自分もそうやって送り出したでしょ?

…確かに

…もう。おバカなんだから。

もう一人のオレがもう一人のひよこに
オレはお前を幸せにしたいんだよ!
なんでわからないんだ?と詰めよった。
融合にやっとイエスて言ったんだ。あらゆる可能性を無視したくないんだ。わかれよ!!

…はいはい。うん。わかったから。
でもこれさあっちのわたしがかわいそうよ?あんた自分の目の前で大好きな人が消えたら気が狂いそうにならない?私だったら耐えられないわよ?その心情は無視するの?こっちもあっちもわたしなのよ?

…それは

わたしの世界の幸せはみんなと一緒じゃないの。わたしの幸せはわたしが作るの。
意味わかるよね?

こっちの世界のひよこはすごくはっきりして温かい。だからもう一人の冷淡で冷めたオレが変われたんだと改めて感心した。

そんなあっちのオレは必死であっちの世界のひよこを幸せにしたいとで真剣なのだった。やり方はアレだけど。

と、いうことで。

あれ?ふふ。なに。可愛すぎ

迎えにきたよ。

ぎょっとして振り返るといるはずのないオレの世界のひよこがいた。

どうやって来たんだよ!?

ひよこが指差す向こうにうちのボスがいた。

でた!みーちゃんじゃん。
あっちのひよこが笑ってる。

息を大きく吸い込んだこっちのひよこが…あっちのひよこに向かって言った。

直談判しにきました。


ヤヴァい可愛すぎ。待てなくて迎えきたのね。てあっちのひよこが一人で感激してる。

ヤヴァい可愛すぎないか?ちょー愛くるしくない?やーガチでかわいいわ。そらガチ惚れするよねっ!!


まるで他人事のように言っている。

顔同じじゃねーか。雰囲気は違うけど。
しかも本人に向かって言っている。ネジが飛んでいる。

いや…お前同じだろ

えーあんなふうに可愛くはないわよ?

あっちの世界のオレは驚いている

やべー…オレひよこの事見くびってた的な顔した。

あんたあれもわたしなんだからそりゃ当然迎えにくるでしょ。

…だな。お前はそういうヤツだったな。

わたし、あんたの事昔迎えにいったよね?

…そういう事もあったな。


フレッド帰ろう?

ひよこがオレの目まっすぐみて言った。
きっぱり決然と。絶対連れて帰るみたいなそんな感じで。

ああ、やっぱりオレ帰りたい。このひととずっと一緒にいたい。

あっちの世界のひよこと目があった。

わたしに任せなさーいみたいな目をした。

フレッド諦めな。

…だな。

オレお前を幸せにしたかっただけだ。苦虫を噛み潰したような表情のあっちのオレ

今もう幸せよ?既に。
あっちの世界のひよこはあっちの世界のオレに柔らかく微笑んだ。

もっとだよ!もっと。

わたしたち融合するんだからどうやったって幸せにしかならないわよ?

もっとだよ。できることは手を尽くしたい。

だからって2人の幸せ邪魔したらダメでしょ。
私のこと思ってくれるの嬉しいけどさ。ありがとう。

こっちのひよこはオトナだ。こっちのひよこが進化したら多分あんな感じになるんだろう。もっとずっと前のあっちのひよこもこっちのひよこみたいに自分のことずいぶん過小評価してたしな。

今あっちのひよこはすっかりオトナだ。なんとなし俺等のメチエのセレナに近づいている。
最終的にはセレナと統合するんだろう。そしたら女神性が顕現するってことなんだろう。

その道のりをあっちのひよこともう一人のオレが二人三脚で乗り越えてきたのか。いやまじで感慨深い。やっぱりどの世界線のオレも目の前の大切な人を幸せにしたいんだろう。

迎えに来たからもう帰んなさい?
オトナのひよこはニッコリ笑った。

いやー、わたしもあんなふうになりたかったわー。もうひたすら可愛すぎないかしかないんだけど?!あーいいなあ羨ましいわ。


…ばかいえ。お前もそうなんだよ。

ボソッとあっちのオレが呟いた

まさか口説いてる?
あー、ハイハイ口説いてます。ぶっきらぼうに答えてるあっちのオレ。

えーどうしようっかなー。

今更しないなんて言わせないからな。
どれだけ待ったどれだけ待ったと思ってるんだ。

やだ。やーらし。今更しないなんて言わせないからな。なんてさ。とケラケラと笑うオトナのひよこ。

お前バカだろ?

と突っこみかえすあっちのオレ。でもなんだろうそんなやり取りが楽しくてたまらないんだろうな。
そんで同じオレだからわかる。
あれはそういう意味だ。
紳士で真摯なことよ。ほんとうに大切なんだろうな。


そんな2人をなんでかキラキラしい目でみてるこっちのひよこ。意味がわかったのかひゃー。きゃーとかなってんだろう。


どの世界線のオレも絶対後悔させないからを体現させるべく奔走してるらしい。

またな。と、ミカエルが羽をバサっと振るとオレはパリの家にいた。

??

そして次にひよこが空中からいきなり現れた。

え?は?

開口一番ひよこはバカーっ!!心配したんだからとわんわん泣き出した。
あんなふうに毅然と迎えにきて今ごろ泣くんだ。

オレどれだけ大切にされてんだろ。どの世界線のひよこからも。

ごめん。
まじでごめん。

ゔえええって顔がグシャグシャで泣いてるひよこがひたすら可愛かった。

鼻を噛んでも可愛かった。だからついポロっと口をついてでた。

奥さんになってくれない?

かえってきた言葉は
わかるけどやり直しして。

…だよな。

かおを洗ってくる。とひよこは洗面所に行った

オレは急におかしくなって腹が捩れるほど笑った。

ああ、幸せだ。絶対離すもんかって。

雪にちなんで雪で纏めてやろう。

改めてやり直しした場所はイギリスのいつも散歩に出掛けていったヒースの丘。
雪景色。夕焼け。雪がひらひら。

ひよこは目がまんまるになってた。

やるじゃん!

オレにしちゃ上出来だな。

ホント。いいなあ。羨ましいわ。
わたしもあんなのがいいなー。来世に期待するしかないわね。

…お前なあ。

なにー?

そういうの嬉しいもんなのか?

あたりまえじゃない。全ワタシが泣いて喜ぶやつよ。

…ふうん、へえ。


あっちのひよこたちから祝福の声が聞こえてきた。

そっか。あっちのひよことオレは晴れて一緒になったんだ。あいつも今ごろめちゃくちゃ幸福なんだろう。だって一番幸せにしたいやつと一緒になれたんだから。

…ふうんて言ったあっちのオレ。多分あの感じだと言うなきっと。しれーと叶えてやってんだろな。









いいなと思ったら応援しよう!