記憶の欠片の物語3
彼を小馬鹿にした奴らをさらに上回って思い切りコケにして殴りあいの喧嘩となり他の客まで乱闘騒ぎに参加
当然のことながら店はめちゃくちゃになった
店主は怒り、怒鳴られて「ハッ」と我に返った。
先に乱闘を繰り広げたあいつの友人たちは消えていた。
店を見渡し、店の惨状を見てまだほとぼりが覚めない頭の中で店の損害額やらなんやらをざっと計算する
やっちまった…
「申し訳ない。わたしが弁償するので、この件は穏便に」
怒り狂う店主に弁償すると申し出た。
そして店に残っている客全員にビールを振る舞った。
「派手にやったなあ!」と他の客がバシバシと背中を叩く。
こっちはそれどころじゃない
あいつは胸のつかえがとれたのかやけっぱちになったのか、ビールを飲んでる。「おい。もう飲むな!」と同時に酔いつぶれて動かなくなった
目の前にいるやつがどこにすんでいるかがわからない
このままおいてかえるわけにもいかず、どうするか考えるのも面倒くさくなり自宅に連れて帰った。
酔いつぶれた男を半ば引きずるようにして
連れて帰るなんて人生ではじめての経験だった
自宅に着いてドアベルをガンガン叩くと執事のトマスがドアを開けてくれた
「おかえりなさいませ、フレデリックさま。どうなされたのですか!!その姿は!!今すぐ手当てと医者を呼ばなければ!…あの、こちらのかたは?…」
「…知り合い。…医者はいい。
それよりこいつゲストルームに運ぶから手伝ってくれ。それからでいいんで紅茶を一杯くれないか。濃いめで」
何か言いたげなトマスは酔いつぶれたやつと俺をじっと見てる
あきれかえっている
しかし何も余計な事を言わずフットマン達を呼びゲストルームに運びやっとこさベッドに寝かせた。
リビングのソファーに突っ伏してるとトマスが濡れたタオルと紅茶を運んできた。
「紅茶をおもちしました」
「ありがとう」
さらにトマスの血圧が上がりそうな店の請求書を渡す
「なんですか?この紙は?」
「請求書」
見て絶句している。
「何をなされたのですか?このような場所にいかれて…」
「見たらわかるだろ…」
脱いで放り投げて床に落ちてるジャケットは服がめちゃくちゃになっている。あちこち破れ、ボタンは全部なく、袖もちぎれてぶらさがっている。
「今一度ご自分のお立場を振り返りよくお考えなさった上で紳士的な振る舞いを!どうか自覚を持つように。このような騒ぎを起こされてお父上様になんともうしあげれば…」
「そんなこといわれなくてもわかってる。それより請求書。明日にでも払ってきてもらえるか?」
「ええ。ええ。それはもちろんです。口止めもしないといけませんしね」
くどくどくどくど言われた。
この歳になってまで叱られるなんて。
なんでこんな事になったんだろう
翌日昼間近くに彼が目を覚ましたようだった。
「ここは?」
「俺の家」
「こんな家に住んでるのか?見たことないぞこんなデカイ家。君何者なの?」目をキョロキョロして落ち着きがない
「いったい何者なんだ?」
それには答えず
「それより顔を洗ってお茶でも飲め」
「あいつらは?」
「気づいたらいなかった」
「ああ……ああ!なんてことだ!!」
「考えてもしかたない」
考えたくもない。